• 公開日: 2019/8/8
  • 更新日: 2019/9/17

検証!新卒で訪問看護は本当にムリ?/vol.3 番外編:訪看で出会った利用者さん

 特集  検証!新卒訪問看護ムリ説

さて、ついにこのシリーズも最終章に!
今回は番外編として「訪看で印象に残っているエピソード」などのこぼれ話を紹介していきます。

 

登場人物

関口・看護師2年目

訪問看護←新卒


しまっち・看護師2年目

訪問看護←2か月で退職←病院←新卒


ムメカン・看護師10年目

大学助教←精神科訪問看護←精神科


シーサー・看護師17年目

ダンサー・大学非常勤講師←精神科訪問看護←精神科

 

訪問看護で印象に残っているエピソード

死と向き合えない家族

関口:私が印象に残っているのは、余命を宣告された方です。奥さんが介護者で娘3人と5人暮らしの方でした。

奥さん処置なども頑張って覚えてくれたんです。ただ…旦那さんの最期について話し合いが、なかなかできなくて…奥さんがなかなか向き合えくて、踏み込んだ話ができない状態が続いていました。

そんな中、旦那さんが体調悪化して入院してしまったんです。その時は回復して何とか退院できたんですが、また次に同じような状態になったら危ないと言われました。しかしそれを機に、ちゃんと話し合えるようになったんです。

家族や患者さんの意思決定に関わることの難しさが身に染みました。

忘れられないのは、ご本人から「散歩に行きたい」って希望があって、みんなで散歩に行ったんです。そのときの写真を撮ったんです。その後、亡くなってしまったのですが、その時撮った写真をご家族にお見せしたら、とっても感謝してくださりました。自宅で看取れてよかったと思います。

意外と普通?薬物依存症の利用者さん

シーサー:私は精神科訪問看護にいたんですが、印象的だったのは薬物中毒の患者さん達でしたね。覚醒剤とか大麻とかやっていた利用者さん達。多分、みんな薬物中毒っていうと「快楽主義の危ない人たち」って思いますよね?薬やりすぎて錯乱状態で暴れるとか。

でも患者さん達いわく「あそこまでなるにはコストがかかる」らしいんです。あれは、長期間、たくさんの量を使い続ないと無理なんだそうです。でも違法薬物って1回数万円するものが多いから、みんな給料日にしか買えなかったと言っていました。

ムメカン:えーー!?そうなんですか?でも禁断症状とか出ないんですか?

シーサー:それも利用者さんいわく「金ないと買えないものはしょうがいないから、普通に我慢してた。テレビとかで見るような禁断症状はなかったね…警察が危険性を誇張しすぎてるんじゃないのかな…」と言ってました。

薬物経験ある方は口を揃えて同じこといいますね。だから「テレビで見るような症状は出ない→私は薬物依存ではない」って思っちゃうらしいです。それがかえって良くない、依存症って自覚をもてないとも言ってました。

ムメカン:ほー禁断症状ってあまり出ないんですね。まあ、人によるかも知れないですけど…

シーサー:確かに個体差ってものもあるしね。あとは、気遣いをしてくれる優しい人が多かった印象です。だからこそ繊細でストレスがかかりやすいのかもしれないけど。

 

訪問看護やってつらい、大変だったことってないの?

関口:うーん、やっぱり同じ職場に同期がいない寂しさはありますね。相談できないし。技術的な不安とかもあります。

しまっち:僕は利用者さんに「今日は〇〇さんじゃないんだ」と言われてるとしんどいですね…精神科の患者さんだと、拒否されることも多くて…

ムメカン:そうだよねー。精神科の患者さんはコミュニケーション苦手な方が多いからね…でも、そうやって新しい人と関わることで、利用者さんも苦手を小さくすることもできるんだけどね。

シーサー:あと訪問看護でつらい、大変、と言えば夜間の電話じゃない?オンコールって言うんだっけ?二人はもうそういうのもやってるの?

関口:私はまだですね。いつやるかも未定です。

しまっち:僕は秋ぐらいからの予定ですね。​

ムメカン:そのへん始まると、またしんどさは変わるかもしれないね。

 

ところで新卒の2人は、これからも訪問看護続けたい?

関口:少なくとも3〜5年は続けたいです。その後も、フィールドは「地域」におきたいと思っています。看護師の資格だけに捉われず、コミュニティや多様性に関心があるので、繋がりや場作りもしていきたいです。今、「定食屋きまぐれ」という活動もしてるんです。簡単にいうと「認知症の方がウェイトレスをしている食堂」です。

ムメカン:それめっちゃ素敵やん…

関口:そうなんです!注文間違えても「まあいっか」と寛容に受けとめることができる社会っていいじゃないですか?それって認知症の方に限らず、誰もが生きやすい社会だと思うんですよね。

シーサー:うわーーそういうのすごい良い…地域から健康を創ってる感じがたまらないよね。しまっちは今後どうするの?

しまっち:しばらくはこんな生活していくつもりです。将来的には大きい会社の訪看事業所の暖簾わけとかしたいですね。僕達のような新卒を育てられるぐらい大きなところにしたいなーって気持ちはあります。​

​ムメカン:同じような経験してきたからこそ、だよね。

 

最後に…皆さんにとって訪問看護師とはどんな存在ですか?

ムメカン:以前、シーサーさんが言ってたんですけど「伴走者」って言葉が素敵だなと思います。

シーサー:え?あ、確かにそんなこと言ってたかも。

ムメカン:病院だと「患者と看護師」になるじゃないですか。「上と下」みたいな関係性が嫌なんですよね。そういった意味で、一緒に伴走している感じがしっくりきます。

シーサー:そうだね。そもそも人間同士の対等な付き合いでやっていきましょうよ、って感覚がいいと思う。医療者も患者さんも。それがないから「治してくれるのがお前達の仕事だろう」とかのクレームになるし、医療者にも高圧的になっちゃう人がいると思うんだよね。

関口:私は、その人のQOLとか、何を大事にしたいか、どう生きたいか、というのはちゃんと考えていきたいです。その人の希望を一番に考えながら、本人の人生が良いものになるように、と思って看護してます。それがモットーですね。医療的な最善も頭にいれつつも、その人にとっての最善や幸せを一緒に考えていく看護が大事だと思います。

しまっち:僕は「近所の知ってる兄ちゃん」みたいな感じがいいですね。世間話もして、健康や病気についても話して、みたいな。そんな近い存在かな。

 

終わりに

看護界には「新卒で精神科に行くと使い物にならない」「最初は急性期3年」「できれば外科やICU」など、よく分からないけどみんな言ってるからそうなんだろうな、といった風説が絶えません。

しかし、これらの風説は本当にそうなのでしょうか?日々、医学が進歩するように私達が生活する社会も変わってきます。医療費による国の財源圧迫、超高齢化社会、少子化…

たった数年で移ろい変わり行くこの時代に、取り残されたかのような看護界の風説たち。今一度考え直してみませんか?

 

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