• 公開日: 2020/2/12
  • 更新日: 2020/3/25

患者さんに聞かれたら答えられる?消費税増税と医療の関係

「消費税増税で医療費も値上がりしましたか?」
「入院治療に必要な生活必需品は軽減税率の対象ですか?」

このように患者さんにお金のことを聞かれた経験はありませんか?

患者さんの関心事は健康面だけでなく経済面にもあります。 経済的な不安を抱えたままでは治療に専念することができません。

今回は消費税増税と医療の関係について説明していきます。 患者さんの不安に寄り添い、解消することは医療者の役割の一つ… 患者さんに消費税増税に関することを聞かれた際に、しっかりと答えられるように参考にしていただけると幸いです。

 

医療費は非課税

原則として、全てのサービスの販売や提供が課税対象です。

しかし、サービスの販売や提供であっても「社会政策的配慮」や「消費の概念にそぐわない性格のもの」は非課税とされます。 例えば医療は、社会保障であり可能な限り国民の負担を抑えるべきという観点から、医療費に課税はされていません*1。

患者さんが病院やクリニックで治療を受けたり、医薬品を処方してもらったりした場合、健康保険制度により1~3割を自己負担*2しますが、その費用には税金は課かっていません。

しかし、消費税増税に伴い、診療報酬が改定され、医療費自体の価格が少し引き上げになりました。また、患者さんが払う「医療に関連する費用」は非課税の医療費だけではありません。課税対象の費用も存在します。

 

消費税増税に伴って医療費は値上げされている

まずは、どれくらい診療報酬が引き上げられたのか見てみましょう。

消費税増税に伴う診療報酬引き上げの例*3
期間 2019年9/30まで 2019年10/1から
初診料 ¥2,820 ¥2,880
歯科初診料 ¥2,370 ¥2,510
再診料 ¥720 ¥730
急性期一般入院料1
(救急・在宅初期加算、14日以内)
¥20,410 ¥21,000
調剤基本料1 ¥410 ¥420

自己負担は、このうちの1~3割ですが、それでも価格自体が少しづつ引き上げられています。ちなみに医療費全体の改定率は0.41%です。(医科0.48%、歯科0.57%、調剤0.12%)

 

差額ベッド代や自由診療など課税対象の費用もある

次は、「非課税の医療費」以外の課税対象の費用についてです。

入院治療となった場合、患者さんが負担する費用は医療費だけではありません。 例えば、差額ベッド代、診断書などの文書料金、おむつ代、テレビカード代、病衣代などは課税対象*4であり、増税分の値上げの可能性があります。施設ごとに価格の対応が異なりますので、患者さんに聞かれた際に答えられるように把握しておきましょう。

また、健康保険の対象外である自由診療も課税対象です。 自由診療とは、公的医療保険が適応されない診療のことであり、美容整形、厚生労働省が承認していない薬剤による治療、インプラント治療などが自由診療に該当します。

意外に思われるかもしれませんが、実はセカンドオピニオン外来も基本的に自由診療であり消費税の課税対象です。セカンドオピニオンは、患者さんが納得し安心して医療を受けるために重要ですが、一方で不要なセカンドオピニオンによる費用負担は避けなければなりません。

 

医療者はより高いコスト意識を持つ必要がある

消費税増税により、患者さんの経済的負担が増加しています。

緩和ケア領域におけるトータルペインの概念では、経済的不安は社会的苦痛であり患者さんが体験する苦痛の要素の一つです。患者さんの経済的不安を和らげることは、より満足度の高い医療の提供につながるのではないでしょうか。医療者には、患者さんが治療や病状に関して適切に理解できるような説明をすることが求められていると思います。

今回の消費税増税をきっかけに、コスト意識を高く持ち、患者さんの疑問や不安を解消できるよう努めてみませんか。

 

参考文献

*1 消費税と診療報酬について|厚生労働省(2019年12月24日閲覧)
*2 医療費の一部負担(自己負担)割合について|厚生労働省(2019年12月24日閲覧)
*3 消費税10%で医療費も値上げ なぜ?|yomiDr.(2019年12月24日閲覧)
*4 院長先生の税務相談(13)「消費税の基礎知識」|TKC全国会 医業・会計システム研究会(2019年12月24日閲覧)
*4 病院の医療費や健康診断には消費税がかかる?軽減税率は?|消費税・軽減税率情報Cafe(2019年12月24日閲覧)
・セカンドオピニオン|国立がん研究センターがん情報サービス(2019年12月24日閲覧)

この記事を書いたのは

看護師FP:しまづ 看護師として働く中で、お金の知識がないと時に自分や大切な家族の生活を脅かすことを実感し、ファイナンシャルプランナーの資格も取得。みなさんのお財布の健康を守るお手伝いをさせていただきます!

イラスト・まえかわしお

関連記事