特集 検証!新卒訪問看護ムリ説
看護界に流布する風説を検証すべく始まった、開催された特集「検証!新卒訪問看護ムリ説」。新卒で訪問看護に進み現在2年目の看護師を招いてお話を聞いています。
今回はたくさんの方が気になっているであろう「教育」「知識・技術のレベル」についてです!
登場人物
関口・看護師2年目
訪問看護←新卒
しまっち・看護師2年目
訪問看護←2か月で退職←病院←新卒
ムメカン・看護師10年目
大学助教←精神科訪問看護←精神科
シーサー・看護師17年目
ダンサー・大学非常勤講師←精神科訪問看護←精神科
Q3:訪看での新人の教育体制って、どんな感じ?
最初はみっちり先輩がつく
シーサー:さて、それでは事前に募った質問アンケートの続きを見ていきましょうか。
vol.2での最初の質問は、新人の教育体制。これ、みんな気になりますよね。医療機器もなければ、医師や他のスタッフもいない場所で利用者さんを看るわけですから。
ムメカン:何かあった時どうするんだろう、とは思いますよね。実際どうなの?
関口:私のところでは、最初の3ヶ月はプリセプターや他の先輩と一緒にみっちり同行訪問でした。そして同行後は毎回振り返り。そして、4ヶ月目ぐらいから少しずつ1人で訪問することが増えました。
でも、そうなってからも週1で勤務時間内で振り返りをしてもらっていたので、かなり手厚くみてもらったと思います。
しまっち:あー僕も同じような感じです。最初は週1~2回訪問している、比較的軽い患者さんのところから始めました。なので、医療処置が少ない利用者さんが多かったですね。
あと、学びたい技術があればその対象の利用者さんのところに同行訪問させてもらったりしていました。あとは僕の場合、週の半分は病院やデイサービスで仕事しているので、技術的なことは病院でも勉強させてもらってます。
シーサー:基本OJTで、現場で学んでいくんですね。
先輩は優しいが、それがつらい…
シーサー:2人ともかなり手厚く見てもらってるんですね。先輩は、厳しかったり怖かったりはしなかったんですか?
関口:みんな優しかったです。…でも優しすぎて、できない自分が申し訳なくなったこともありましたね。
ムメカン:逆にプレッシャーになったんだね。
関口:そうですね。…あと、大学病院に就職した友人の話を聞くと、技術や教育などを覚えるのは病院よりもゆっくりなんです。点滴する機会も少ないし…なので、やっぱり少し焦りもありました。
ムメカン:同期と集まると「あれやった?」「これできるようになった」なんて話になりますもんね。
関口:そうなんです…!でも、最終的には「周りと比較しても仕方ない」と前向きに考えられるようにはなりました。
シーサー:周りと比べて落ち込んでしまう、というのは病院で働く新人さんでもよくある話ですものね。
急変時は?
シーサー:ちなみに急変時にあたったことありますか?
しまっち:僕はないです。
関口:私もないです。
シーサー:やっぱり意外と少ないんですね。でも急変に当たったところで、訪問看護師ができることって…限られてますよね?最終的には救急車呼ぶことになりますよね…?
しまっち:そうなんですよね。救急処置はもちろん必要ですが…でも、救急隊の方に「いかに利用者さんの情報を伝えられるか」が大事になってくると思うんです。
経営者A:はい!
シーサー:お、経営者Aさん、vol.2でも登場ですね!どうぞ!
経営者A:ありがとうございます(笑)
この、急変時に救急車を呼ぶか問題は、非常に難しいですよね。看護師なので、できることは限られていますが、しかしだからといって救急車を呼んでしまい、そこで搬送されて入院してしまうと、「最期は家で」と考えて訪問看護を利用されていた場合、本人が望んだ形にならないことも…
関口:そう、そうなんですよね。最期をどうするかを、家族や本人と相談するってすごく大事なんです。なかなか触れたがらない方もいらっしゃるのですが、日々の訪問で信頼関係を築いて、相談できるようにしていくことが大事ですよね。
シーサー:そういえば…うちの祖父が家で亡くなった時、父が救急車呼んだんです。そしたら警察に連絡も必要だと言われて呼んだんです。ただ、幸い警察と同時に往診医も来てくれたので、事なきを得たのですが…
そうでなければ、現場検証中、ずっと祖父の遺体をそのままにしておかないといけなかったので、家族が辛い思いすることころでした。
Q4:訪問看護は医師レベルの知識・判断力を要求されるため「臨床経験5年目以上でないと厳しい」と書いてあるサイトを目にしたことがあります
しまっち:あー!僕は学生の頃、先生に「呼吸器とか循環器の経験、10年以上の経験が必要」って言われましたね。
ムメカン:僕も学生の頃、同じようなこと言われたなあ。とはいえお2人は、新卒で訪問看護に行ったわけだけど…実際どう?
関口:うーん、確かに、技術は回数を重ねないと身につかないですね。病院の研修のように、集中的に練習できるシステムがあってもいいかなと思います。
しまっち:とにかく「やって覚える」スタイルで来てますね…でも、病院と訪看では、必要なスキルがまた違う感じもします。例えば先ほどの急変時の対応では、訪看の場合「急変に至る前の、最期の過ごし方をご利用者さんと相談できること」や「救急車を呼んだ場合は救急隊にO情報を適切に提供すること」が大事なわけですし…
ムメカン:治療とケアは違うんですよね。
新卒で訪問看護は、あり?
ムメカン:…僕、思うんですよ。新卒で就職した所って、その後の看護観をすごく左右すると思うんですね。新卒で入ったところがブラック病院なら、その暗黒面を受け継いでしまう可能性があるし、逆にすごく良い職場なら良い看護観を育てられると思うんです。
シーサー:なるほど、それも確かにありそうですね。
経営者A:確かに、訪問看護に中途で入ってくる方の中には、病院での経験や価値観を捨てきれない人もいて、それで訪看が合わずに辞めてしまうこともあるんですよね。その点、新卒で訪問看護に入れば、訪問看護に必要な価値観や視点を育てられると思います。…そういった意味で、経営的な面から見ても、新卒で訪問看護に入るというのはポジティブな話だと思いますね。
関口:新卒で訪問看護は無理ではないと思います。ただ事業所とのマッチングはすごく重要だと感じてます。 自分の目で実際に現場を見たり、そこで働く人たちに話しを聞いて、自分の大切にしたいものや価値観との相違がないか確かめる事が大切だと思います。もし検討している方は、新卒で雇ってる場所をいくつか知ってるので、ぜひご相談ください!
ムメカン:しまっちも事業所はたくさん周ったもんね。
しまっち:そうですね。僕も事業所選びは大事だと思います。新卒育てる環境が整ってないと、新人も先輩も互いに苦しくなるだけだと思うので…
シーサー:ふむ…「新卒で訪問看護」ありですね。ムリじゃなさそうですね。必要なスキルはちゃんと身につけられるし、むしろ新卒で行くからこそ身につけられることがある!ってことなんですね。では最後は、みんなで…
シ・ム・関・し:新卒で訪問看護はできる!!!ただし、事業所選びは大事!!!
いかがだったでしょうか?特集「検証!新卒訪問看護ムリ説」、一同の結論は「新卒で訪問看護はできる!」に着地しました。さて次回は、番外編として4人が体験した「印象的な訪看エピソード」を紹介していきます!