福利厚生は職場選びにおける重要な判断材料の一つです。福利厚生についてしっかりと理解することができれば、額面給与だけではわからなかった職場の良し悪しが見えてきますよ。また、医療機関ならではの福利厚生が準備されている場合もあります。今回は福利厚生について説明しますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
そもそも福利厚生ってなに?
福利厚生とは、企業が従業員に対してお給料やボーナスとは別にさまざまなサービスを提供する制度です。従業員の健康や生産性を支えることで、従業員の定着や採用強化を目的にしています。
福利厚生には「法定福利厚生」と「法定外福利厚生」の2種類があります。 「法定福利厚生」は法律で義務付けられている福利厚生です。雇用保険や健康保険などがあります。「法定外福利厚生」は企業が任意で提供する福利厚生です。提供されるサービスはお金だけでなく衣・食・住のさまざまなものがあります。
厚生労働省の調査によると、労働費用に占める「現金給与」の割合が80.9%、「現金給与以外の労働費用」の割合が19.1%だと明らかにされました。*1 福利厚生は「現金給与以外の労働費用」の一部になります。大切な労働費用の一部なので意識しないと損をしてしまいます。
「額面給与」以外の福利厚生が重要な理由
給与は高くなるほど課税所得が増えて税金も多く払わなければなりません。しかし、例えば「通勤手当」のように非課税の福利厚生を活用すると、毎月の手取りの給料を増やすことができます。ですので、額面給与だけでなく福利厚生も合わせてチェックし、「本当の手取り」を考えていきましょう。
また、福利厚生の中には人間ドックやフィットネスクラブなど健康に関するサービスもあります。こうした健康に関する出費を抑えることもできるかもしれません。
主な福利厚生
主な法定福利厚生と法定外福利厚生を紹介していきます。
法定福利厚生
■雇用保険*2
従業員の生活や雇用を安定させるための福利厚生です。
失業給付金、育児休業給付金、教育訓練給付金、傷病手当金などがあります。
■健康保険*3
病気やケガ、出産や死亡といった健康リスクに備えるための福利厚生です。
医療費の自己負担分が減ったり出産一時金がもらえたりします。保険料の半分は企業が負担します。
■介護保険*4
介護を要し介護認定を受けた方が介護サービスを利用できる福利厚生です。
40歳以上の方は加入の義務があります。保険料は企業と従業員で半分ずつ負担します。
■労災保険*5
業務や通勤により発生したケガ・病気・障害に対する給付が受けられる福利厚生です。
健康保険の傷病手当金よりも手厚くなっています。保険料は企業と従業員で半分ずつ負担します。
■厚生年金保険*6
国民年金に上乗せする形で厚生年金が受給できる福利厚生です。
給与やボーナスに保険料率を掛けて算出された保険料を、企業と従業員で半分ずつ負担します。
法定外福利厚生
■住宅手当
従業員の賃貸物件や住宅ローンによる負担を軽減するための福利厚生です。
家賃や住宅ローンの支払いの金額に応じて支給されます。
住宅手当は課税対象*7です。
■通勤手当
従業員の通勤にかかる費用負担を軽減するための福利厚生です。
一定金額までは非課税扱いとなります。6)
■家族手当
従業員の扶養家族の人数に応じて手当が支給される福利厚生です。
企業の規則により扶養の範囲が異なり、配偶者のみの場合や子どもを含める場合もあります。
■財形貯蓄
給与から一定金額を貯蓄し従業員の財産形成を促すための福利厚生です。
貯蓄の目的により税制優遇や住宅ローンを組めるといったメリットがあります。
■職員寮
従業員に居住施設を提供する福利厚生です。
独身寮や家族寮など様々な形態の職員寮があります。
重視すべき福利厚生は「住宅」関連!
様々な福利厚生がありますが、特に重視すべきは住宅に関係するものです。 なぜなら、住宅は誰にとっても関係がある上、毎月の固定費の中でも特に大きな割合を占めるからです。住宅手当があれば、家賃や住宅ローンの支払いの負担が軽減されます。また、職員寮がある場合、家賃が格安なので大きな節約になります。
特に「借り上げ社宅制度」のある職場は、かなり福利厚生に力を入れていると言えます。 借り上げ社宅制度は、一般賃貸住宅を企業が借り上げて従業員に貸し出す福利厚生です。 従業員は家賃の一部のみ負担し残りは企業が支払います。 借り上げ社宅制度と住宅手当の違いは節税メリットです。住宅手当は課税対象ですが、借り上げ社宅制度は非課税になります。家賃補助もらいながら節・税もできるとてもおトクな福利厚生なので見逃さないようにしましょう。
医療機関ならではのこんな福利厚生も!
医療機関に勤める看護師は少し珍しい福利厚生を利用できることも。 健康や美容、生活やキャリアに関わる医療機関ならではの福利厚生をご紹介します。
■臨床心理士によるメンタルサポート
仕事や人間関係で消耗したメンタルのサポートをする福利厚生です。
個人情報が保護されているので職場の人に相談しにくい内容であっても安心して専門家に相談できます。
特に職場に馴染むのが苦手な新人看護師にとって心強い支えとなるかもしれません。
■割引価格で人間ドッグが受けられる
勤め先の医療機関の人間ドックを割引価格で受けられる福利厚生です。
健康増進はもちろん、勤め先の医療機関が提供するサービスを体験することで業務にも活かすことができますよ。
■コスメ用品、美容施術に社員割引が適用される
美容クリニックなどに勤務する場合、コスメ用品や美容施術が社員割引の価格で利用できるかもしれません。
特に女性は美容にかかる費用が節約できるのは大きいですよね。
■保育士常在の「24時間院内保育園」
不規則なシフト勤務になりがちな看護師にとって24時間体制で子どもを預かってくれる院内保育園はとても心強い存在です。
体調に変動があった際も院内なのですぐに子どものところに駆けつけることができます。
■資格取得支援制度
看護職としての専門性を高め、能力を向上させるために資格取得を支援する福利厚生です。
認定看護師や専門看護師といった資格を取得するための休暇や費用を負担してくれます。
非常勤でも福利厚生は利用できるの?
近年は働き方が多様化しており非常勤で勤務する看護師が増えました。 総務省統計局の労働力調査でも非常勤・アルバイトで働く人が右肩上がりに増加していることが明らかにされています。*8 実は非常勤だからといって福利厚生が利用できないわけではありません。 法定福利厚生は条件を満たすことで利用可能であり、法定外福利厚生は企業の規定に従う形で利用可能です。
例えば、雇用保険は「31日以上引き続き雇用が見込まれる者」「一週間の所定労働時間が20時間以上であること」などを条件に非常勤でも加入できます。*9 法定外福利厚生は企業の規定によって利用できるかもしれません。 就業規定をよく読み、利用可能な福利厚生がないか確認してみましょう。
参考文献
*1 厚生労働省.”平成28年就労条件総合調査”(参照 2020-3-20)
*2 厚生労働省.”雇用保険制度”(参照 2020-3-20)
*3 全国健康保険協会.”健康保険制度の概要”(参照 2020-3-20)
*4 厚生労働省.”介護保険制度について”(参照 2020-3-20)
*5 厚生労働省.”労災保険に関するQ&A”(参照 2020-3-20)
*6 日本年金機構.”厚生年金保険”(参照 2020-3-20)
*7 国税庁.”給与所得となるもの”(参照 2020-3-20)
*8 総務省統計局.”労働力調査(詳細集計)”(参照 2020-3-20)
*9 厚生労働省.”雇用保険の加入手続はきちんとなされていますか!”(参照 2020-3-20)
この記事を書いたのは
看護師FP:しまづ 看護師として働く中で、お金の知識がないと時に自分や大切な家族の生活を脅かすことを実感し、ファイナンシャルプランナーの資格も取得。みなさんのお財布の健康を守るお手伝いをさせていただきます!
イラスト・まえかわしお