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  • 公開日: 2022/3/2

看護師と労働基準法(労基)。残業・夜勤・連勤続きの改善に必要なこと

当直や夜勤など、さまざまな働き方がある看護師。残業が多い、有給休暇がとれない、連勤続きなどの現場の問題がまかり通っていることはないでしょうか? 「もしかしたら自分が働いている病院はブラックなのだろうか…」と悩むかもしれません。そこで今回は看護師の労働環境の改善のために、最低限知っておきたい労働基準法(労基)について解説します。

看護師が働くうえで理解すべき「労働基準法(労基)」

労働基準法(労基)は、賃金や労働時間、休暇などについて最低限のルールを国が法律として定めたもので、働くスタッフの権利を保護しているものです。知らないもしくは理解できていないと、不利な労働条件で働かされていても気づかない、何も言えない状態となってしまいます。労働基準法を理解しておくことで自身が感じる「仕事がつらい」「辞めたい」という感情が、職場環境の労働基準法違反からの不条理からなのか、「ブラック」な職場環境の体質的からなのかを判断できるようになります。

労働基準法違反?看護師の労働環境の課題

看護師を取り巻く労働環境の実態について、ナース専科で行った「就労環境に関するアンケート」では、どちらかといえば不満があると答えた人は50.45%、すごく不満があると答えた人が20.03%と、何かしら不満がある人が70%を超えていることがわかりました。

※ナース専科調べ(2021年9月29日/有効回答数:674)

読者に聞いた労働環境で不満なことは?

労働環境に関する読者の具体的な不満として、以下のようなコメントが寄せられました。
  • 夜勤手当や管理職手当はもちろん、基本給が低いという給与への不満
  • 残業代が出ない、前残業後残業が多い
  • 有給休暇がとれない、勝手につけられている
  • 休み希望が出しにくい、休みが少ない
  • 夜勤が多い、連続勤務がつらい
  • 委員会や看護研究、教育担当など業務以外の仕事が多い
  • ボーナスカット、あるいはボーナスなし
  • 準備のために前残業をする必要があり、その時間は勤務時間に見なされない
特に、シフト勤務ならではの問題や、看護師ならではの人材不足のしわ寄せから起こる問題への不満が散見されました。また、ボーナスに関する不満からは、コロナ禍で外来患者や救急受け入れが減ったことなどにより、病院経営が厳しい状況におかれていることがうかがえます。

看護師の労働環境における具体的な課題

また日本看護協会でも労働時間管理適正化に関する調査を行ったところ、次のような問題があげられています。

長時間労働

シフト勤務で考えると、二交代の夜勤では16~18時間以上の拘束となり、長日勤でも12時間以上の拘束となります。これらのシフトは三交代では次の勤務までのインターバルが短く休みがとりにくいこと、人員不足などの問題を解消するために導入されました。しかし、休憩が取れないうえに残業があれば長時間労働としての疲労やストレスは増え、医療事故のリスクなどは高くなります。

残業代の未払い

サービス残業が当たり前、分単位で時間外が取れない、先にタイムカードのみ押すように指示される、勝手に残業数を修正されるなど、残業代が適切に支払われていない、もしくは制限されている現状もあるようです。1年目は残業代の申請はできない、残業は1時間以上したら申請など、「昔からこうやってきた」というローカルルールの問題は根深くあります。

休憩がとれない

日勤だけでなく、特に夜間は長時間拘束となりますが、ときに夕食や仮眠の時間がとれなかったり、休憩返上で業務をしたりすることもあります。緊急入院や急変対応などのイレギュラーなことが起こる可能性が高いため、その日の管理者やリーダーの采配、メンバーの知識やスキルなどにも左右されます。

勤務間のインターバルが少ない、連続勤務

特に三交代勤務では日勤深夜、準夜勤明けの休み、休みからの深夜などの勤務は休んだ気がしない、夜勤の回数が多い、家でゆっくり休むことができないストレスがあります。日勤深夜でも、日勤で残業をしてしまうと家に帰る時間がなくなり、結局病院の仮眠室で休んでいくという人もいるでしょう。勤務間のインターバルが少ないことは、特に三交代勤務で大きな問題となっています。

働き方改革実現に向けた労働基準法

2018年に成立された働き方改革関連法によって、時間外労働の上限規制やフレックス制の導入など労働基準法も改正が進められています。そのなかでも、看護師が働く職場では「変形労働時間制」が主に採用されています。

看護師の労働環境で導入される「変形労働時間制」

変形労働時間制とは、一か月など一定期間内の労働時間のなかで勤務時間を確定する制度です(労働基準法第32条の2)。出勤・退社時間が変動できるためフレックス制度と似ていますが、変形労働時間制の場合は1日の勤務時間が決められています。看護師のような24時間365日体制でシフト勤務の仕事は、この変形労働時間制が就業規則として取り入れられていることをまず知っておきましょう。

変形労働時間制のデメリット

三繁忙期は長時間労働や連勤になりやすい

変形労働時間制は年単位、月単位で労働時間が管理されるため、忙しい時期は1日の労働時間が増えたり出勤日が続いたりする可能性があります。長時間労働が増えると、身体への負担も大きくなるので注意が必要です。

残業時間の管理が難しい

変形労働時間制は設定期間によって残業代が発生する条件が異なります。そのため、残業時間の管理が複雑になりやすく、正規の残業代が支払われていない場合も考えられます。自分の勤務形態がどの条件に当てはまるのか正しく理解しておきましょう。

看護師が知っておきたい労働基準法の内容

ここでは変形労働時間制のほかに、看護師が働くなかで直接かかわる労働時間の決まりや有給取得に関する労働基準法の内容を解説します。1日の労働時間や休憩可能な時間にも明確な基準があるので、自分の働き方が労働基準法にのっとっているかしっかり確認しましょう。

労働基準法 36条(36協定) 残業時間について

法定労働時間を超えて時間外労働をさせる場合には、労働基準法第36条に基づき、労使協定(36協定)の締結、届け出が必要となります。36協定では、時間外労働に行う業務の種類や1日または1か月、1年あたりの時間外労働の上限を定めなければなりません。また、2019年4月からは36協定で定める時間外労働時間に、罰則付きの上限が設けられることとなりました(中小企業への適応は2020年4月)。 臨時的な特別の事情があり、労使間で合意をした場合でも以下の時間を超えて残業を命じることができない決まりとなりました。これには法的な拘束力があり、違反すると6カ月以下の懲役、または30万円以下の罰金が科される可能性があります。

残業時間の上限

  • 年720時間以内
  • 月100時間未満(休日労働を含む)
  • 複数月(2カ月から6カ月)の平均残業時間が月80時間以内(休日労働を含む)
  • 月45時間を超えることができるのは年間6カ月まで

労働時間と残業時間の違い

勤務時間の中で「労働時間」と「残業時間」の違いを理解する必要があります。労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間です。使用者の明示または黙示の指示により、労働者が業務に従事する時間はすべて「労働時間」に該当します。 事例として看護師の業務にあてはめた場合、次のような時間は「労働時間に含まれる」と考えてよいでしょう。前残業と呼ばれる準備時間も「労働時間」に含まれる場合があるので、下記を参考に自身の業務を考えてみましょう。
        
  • 勤務前の衣服を着替える時間
  • 患者対応に必要な準備や用意をする時間
  • 業務の振り返りから発生するタスク
  • 掃除など、就業後の片付けの時間
  • 参加すべき研修や勉強会の時間
  • 勤務先の指示によって必要な学習などをする時間

残業には「所定時間外労働」と「法定時間外労働」がある

所定労働時間とは?
所定労働時間とは、労使間の契約で定められた労働時間のことです。就業規則や雇用契約書などで定められており、法定労働時間(1日8時間・週40時間)の範囲内で決めることができます。 仮に所定労働時間を超えて働いた場合は、超過部分は「所定時間外労働」となり、残業手当が支払われますが、法定労働時間を超えるまでは賃金の割増はありません。
法定労働時間とは?
法定労働時間とは、労働基準法に規定されている労働時間の限度のことです。法律では休憩時間を除く「1日に8時間」「1週間に40時間」を超えた労働は原則認められていません。仮に法定労働時間を超えて働いた場合は、超過部分は「法定時間外労働」となり、割増賃金(※1)が支払われます。 ただし、勤務時間が不規則になりやすい看護師は、1週間の法定労働時間について「44時間(※2)」が適用されるケースや、「変形労働時間制(※3)」による例外が当てはまる場合があります。あらかじめ勤務先がどのケースに該当するのか、就業規則などで確認しておきましょう。
※1 割増賃金…通常の賃金の25%で1カ月の残業が60時間を超えた場合には、超えた分について50%が割り増し ※2 44時間が適用されるケース…保健衛生業に含まれる看護師は、職場の規模が従業員10人未満の場合に該当します ※3 変形労働時間制…1週間当たりの労働時間が法定労働時間を超えない範囲で特定の日や週に法定労働時間を超えて労働させることができる制度

労働基準法 32条 休憩時間について

法定労働時間では、1日あたりの労働時間が6時間を超える場合には45分~、8時間を超える場合60分~休憩が必要であると定められています。これは最低基準であり、これより長い休憩時間を与えることは特に制限はありません。休憩時間とは、「労働者が権利として労働から離れること」です。そのため、休憩中の電話番やナースコールの対応、掃除などは本来の休憩時間とはいえません。また、休憩は分割することについては禁止されていないため、まとめて1時間の休憩がとれない場合には30分ごとにわけて調整するということも可能です。病院のように緊急対応などの可能性があるときには、こうした調整が必要となる場面もあるでしょう。

労働基準法 39条 年次有給休暇について

年次有給休暇の日数は法律で決められています。また、業種や業態にかかわらず、正社員、パートタイム労働者など関係なく、一定の要件を満たした全ての労働者に対して、年次有給休暇を与えられるものです(労働基準法第39条)。

年次有給休暇がもらえる要件

  • 半年間継続して雇われている人
  • 全労働日の8割以上を出勤している人

一定の要件というのは、雇入れの日から6か月継続勤務をして全労働日の8割以上出勤していることです。業務上の怪我や病気、育児休業などで休んでいる期間も出勤したものとみなして取り扱う必要があります。原則として、年次有給休暇は労働者が「○月○日に休みます」と使用者に申し出をすることとされていますが、年10日以上の年次有給休暇が与えられている労働者に対しては、そのうち5日を使用者が労働者の意見を尊重し取得時季を指定して取得させることが必要です。また、年次有給休暇は1日単位で与えることが原則ですが、労使協定を結べば、1時間単位で与えることも可能です。年次有給休暇の時効は発生の日から2年間です。 労働基準法が改正された2019年4月からは「法定の年次有給休暇が10日以上のすべての社員に対し、毎年最低5日間の有休休暇を取得させること」。が企業に義務付けられるようになりました。これによって、看護師が有給休暇を取得しづらいという課題も解消されつつあります。 また、有給休暇の取得は原則1日単位が基本ですが、労使間で協定を結べば年5日の範囲内で時間単位の取得ができるようになっています。

有給休暇は何日もらえる?

年次有給休暇の付与日数は、勤務年数や所定の労働日数に応じて決まります。
有給付与日数
所定労働日数/週 所定労働日数/年 勤続勤務年数
0.5年 1.5年 2.5年 3.5年 4.5年 5.5年 6.5年以上
5日以上 217日以上 11 12 12 14 16 18 20
4日 169~216日 7 8 9 10 12 13 15
3日 121~168日 5 6 6 8 9 10 11
2日 73~120日 3 4 4 5 6 6 7
1日 48~72日 1 2 2 2 3 3 3

残業・夜勤など看護師の労働環境改善に必要なこと

ナース専科で行った就労環境に関するアンケート「看護師の働き方や労働環境の改善が実現するにはどのようなことが必要だと思いますか?」という質問に対して、以下のようなコメントが寄せられました。
  • スタッフのサービス残業に頼るような病棟運営や、委員会活動など直接ケアに関係しない業務の見直し
  • 常態化した前残業などのサービス残業の実態把握とそれに対する改善策
  • 現場における本当の意味での看護師の地位改善。フレキシブルな働き方ができる勤務体系
  • 患者数に対しての看護者数だけでなく、業務内容での看護者数を想定した人員配置
  • 短時間労働の採用など多様な働き方の選択肢
  • 研修への参加強制、就業前残業・サービス残業当たり前といった慣習の根本的な改善

職場で行われている労働実態改善のための取り組み

労働実態における様々な問題が浮き彫りとなったなか、改善のための取り組みも様々あります。例えば、手動で印字、手書きで記入するタイムカードでは、実際の労働時間より短く申請することもできましたが、電子カルテの導入により、端末にログインした時間をタイムカードとして集計するものもあるようです。

ライフスタイルに合わせやすいフレックス制度の活用も

様々な雇用形態、勤務形態に対応できるような工夫も長時間労働や残業、休憩時間の確保などの改善に役立っています。例えば、短時間制社員制度として週4常勤とする、フレックスタイムの導入で日勤帯でも忙しい時間帯には必ず勤務する時間帯(コアタイム)がある、始業・終業時間は選択できるなどです。 そして、夜勤も二交代と三交代、日勤と長日勤で選択できるところもあります。昔から慣れた三交代がいい、子どもが小さいので長時間家を空けるのは厳しいという人もいるでしょうし、一度に夜勤をやりたいという人もいるでしょう。こうした様々な勤務形態の例は病院だけではなく、施設や訪問看護などの病院外での働き方でも多く適用されてきています。

労働基準法を理解して看護師の労働環境改善を目指す

今回は看護師にまつわる労働実態と労働基準法の基本的な内容を紹介しました。実際の仕事では、「つらい」と感じても周囲の環境に合わせて「そういうもんだ」と思い込んでしまいがちです。しかし、看護師の労働環境改善のために、今自分たちがやっていることが法律に触れていないのか、正しいことなのかをまず理解することが大事です。そして、ワークライフバランスを推進するために様々な働き方があることも知ることで、自らもその変革を担う一員だということを自覚して働き方の改善に取り組みましょう。

参考

1)佐々木ふみ・他:二交替制勤務看護師の疲労度,満足度に関する文献検討 -三交替制勤務との比較-,J Nurs Studies NCNJ,Vol.10(1):49-56 ,2011 https://www.ncn.ac.jp/academic/020/2011/2011jns-ncnj09.pdf 2)労働に関するよくあるご質問(日本看護協会) https://www.nurse.or.jp/nursing/shuroanzen/faq/index.html 3)1か月単位の変形労働時間制(厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督) https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/dl/140811-2.pdf 4)36協定で定める時間外労働及び休日労働 について留意すべき事項に関する指針(厚生労働省) https://www.mhlw.go.jp/content/000350731.pdf 5)労働時間・休憩・休日関係(厚生労働省) https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudoujouken02/jikan.html 6)年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています(厚生労働省・都道府県労働局 ・労働基準監督署) https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/dl/140811-3.pdf

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