読み方:りんぱふしゅ
リンパ浮腫とは
過剰なリンパ液が、リンパ管の外で回収されずに貯留してしまい、結果として膨れた状態になること。体液がタンパク質で高濃度になり間質に貯留している状態。
例として、手術によるリンパ節の切除、放射線治療によってリンパの流れが停滞し、生涯にわたり腕や脚がむくむ症状など。
一般的な「足のむくみ」との違い
血管系・心臓の循環機能や腎臓の排尿機能が低下して、体に水分がたまり膨れた状態になること。つまり、リンパ液か水分かの違いである。
分類
原発性(一次性)原因が明らかでない特発性(35歳未満を早発性、35 歳以上を晩発性という)と、遺伝子異常等に伴う先天性に分類される。原発性リンパ浮腫は一般に小児科領域の疾病で、遺伝子スクリーニング検査や遺伝カウンセリングの適応となることが多い。
続発性(二次性)癌治療に伴うリンパ節郭清や放射線照射に起因するものをはじめ、外傷、フィラリア症(国内では1978 年以降発症者が出ていない)などに起因するものがある。世界的にはフィラリア症の占める割合が大きい。日本ではリンパ節郭清や術後照射など癌治療に伴う四肢のリンパ浮腫が多い。
病気分類(国際リンパ学会)0期 | リンパ液輸送が障害されているが、浮腫が明らかでない潜在性または無症候性の病態。 |
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Ⅰ期 | 比較的蛋白成分が多い組織間液が貯留しているが、まだ初期で、四肢を挙げることにより治まる。圧痕がみられることもある |
Ⅱ期 | 四肢の挙上だけではほとんど組織の腫脹が改善しなくなり、圧痕がはっきりする。 |
Ⅱ期後期 | 組織の線維化がみられ、圧痕がみられなくなる。 |
Ⅲ期 | 圧痕がみられないリンパ液うっ滞性象皮病のほか、アカントーシス(表皮肥厚)、脂肪沈着などの皮膚変化がみられるようになる。 |
片側性リンパ浮腫の重症度分類(国際リンパ学会)※体積の左右差の程度による分類
軽度 | 20%未満の浮腫 |
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中等度 | 20~40%の浮腫 |
重度 | 40%を超える浮腫 |
四肢における周径の計測や体積の計算には適切な計測部位や計算方法がある。
検査・診断
ほとんどの場合、病歴(手術・照射の既往や外傷歴など)が大きな手がかりとなり、それに矛盾しない理学所見が伴っているかを精査する。そのため、注意深くきめ細かい病歴の聴取が必須かつ最も重要である。
鑑別診断のために行われる検査として以下が挙げられる。
- 血液検査
- 尿検査
- 超音波検査
- 胸部X 線
- CT/MRI 検査など
リンパ浮腫以外の浮腫を惹起する疾患や癌の転移・再発を除外したのちに、リンパ浮腫の診断・精査へと進む。
リンパシンチグラフィ
浮腫がある部分のリンパ管の働きや、浮腫の度合いを知るための検査。 リンパ浮腫の確定診断を得るために最も有用。また、外科手術の際の術前後の評価に多用される。
検査方法として下肢のリンパ浮腫の場合、左右両方の下肢の指のつけ根、上肢のリンパ浮腫の場合は左右両方の手の指のつけ根に、微量の放射線を出す薬剤を注射し、ガンマーカメラにて撮影。休憩を挟みながら何度か撮影し、60~90分ほどかかる。
インドシアニングリーン色素(ICG)を用いた蛍光リンパ管造影
photodynamic eye(PDE)によって、体表から2 cm 程度の深さまでならリンパ管の走行や機能動態を観察することができ、リンパ管の弁逆流に伴う特有の所見であるdermal backflowが確認できる。
検査方法としては、造影剤をリンパ管内に注入して、リンパ系全体に行き渡らせx線画像上にリンパ管の外形が描出される。
治療
標準化された複合的治療は弾性着衣・多層包帯法による圧迫、スキンケア、運動療法、用手的リンパドレナージ(MLD) で集中治療の場合は週数回、場合によっては毎日行う。 外科的治療としては、発症した四肢リンパ浮腫に対して、近年リンパ管静脈吻合術が多くの施設で行われるようになっている。
用手的リンパドレナージ(MLD)
用手的リンパドレナージは、腕や脚にたまったリンパ液を正常に機能するリンパ節へと誘導して、むくみを改善させるための医療用のマッサージ方法。一般的に行われているマッサージや、美容目的のリンパドレナージとは異なる。専門的な医療技術であるため、専門医師への相談のもとで適切な方法で行う必要がある。
予防
リンパ浮腫は発症すれば完治が困難である一方、適切なリスク管理は有効な発症抑止となることも知られている。 リンパ浮腫発症のリスクとなる癌治療を受けた患者に対して設定されているリンパ浮腫指導管理内容(診療加算100点=1000円)
- リンパ浮腫の原因と病態
- リンパ浮腫の治療方法の概要
- セルフケアの重要性と局所へのリンパ液の停滞を予防及び改善するための具体的実施方法
- 生活上の具体的注意事項
- 感染症の発症等増悪時の対処方法