• 公開日: 2020/3/18
  • 更新日: 2020/5/1

パートで働きたい看護師が知らないと損する「扶養内」とは?

「パートで働く時の年収は扶養内に抑えた方がおトクだよ」 このようなアドバイスを聞いたことはありますか? 常勤で働いている時はお給料から自動的に天引きされる税金や社会保険料。あまり気にしていなかった方もいるかもしれません。しかし、パートで働くのであればしっかりと計算しなければ「働き損」になってしまうことも…

今回は「扶養内」とはそもそも何か、年収によって変化する税金や社会保険料、パートの働き方のシミュレーションについて解説していきます。 パートでの勤務を検討している方はぜひ参考にしてみてくださいね。

 

よく聞く「扶養内」とは?

まずはよく聞く「扶養内」という言葉が何を指しているのかを見ていきましょう。 「扶養」とは生活を維持するのに経済的な助けを必要とする人を援助する行為のことです。 例えば、家族の内でサラリーマンの夫(世帯主)のみ収入があり、妻と子どもは収入が無い場合、妻と子どもは「扶養家族」です。

扶養家族は経済的な優遇を受けることができます。 「扶養内」とは、扶養家族が経済的な“優遇が受けられる年収の上限”を指しているのです。 扶養内の家族が受けることができる経済的な優遇には、「税金」と「社会保険」の2種類があります。

「税金」上の扶養内

税金上の扶養内とは、所得税や住民税の控除、配偶者控除・配偶者特別控除に関することです。 本来給料から引かれる所得税と住民税ですが、扶養家族の収入が一定以内であれば控除され支払わなくてよいのです。

配偶者控除・配偶者特別控除は、世帯主(先の例では夫)の給料から引かれる税金に影響する制度です。 生活費を考慮し、扶養家族の収入に応じて世帯主の税金も負担が軽減されます。

「社会保険」上の扶養内

社会保険上の扶養内とは、健康保険や年金に関することです。 扶養家族の場合、健康保険料を支払わずに健康保険を利用できます。 また、扶養家族は第3号被保険者となり、自分で国民年金の保険料を納付する必要がありません。 保険料を納付しなくても、老後には国民年金を受け取ることができるのです。

交通費は年収に含まれるのか?

交通費が年収に含むかは「税金上の扶養内」と「社会保険上の扶養内」それぞれで異なるので注意が必要です。 「税金上の扶養内」では非課税部分の交通費は年収に含まれず、「社会保険上の扶養内」では交通費は年収に含みます。 交通機関や有料道路を通勤に利用する場合は15万円/月までが非課税です。

 

「税金」上の扶養内に関する年収の壁

扶養内には、「税金上」と「社会保険上」の2種類があると説明しました。 それぞれ扶養家族の年収に応じて「壁」があり、受けられる優遇に差があります。 まずは「税金上の扶養内」に関する年収の壁を見ていきましょう。

年収100万円の壁

パート勤務者の年収が100万円を超えると住民税のみが発生します。 この時点ではまだ所得税は発生しません。 お住いの地域の自治体によっては、100万円に達していなくても住民税が発生する場合もあります。

▶ポイント
住民税が発生しますが数千円におさまる場合がほとんどですので、気にしすぎなくても良いでしょう。

年収103万円の壁

パート勤務者の年収が103万円を超えると所得税が発生します。 所得税は103万円を超えた部分にのみかかり、税率は5%です。

▶ポイント
できるだけ税金の支払いを抑えたい方は103万円の壁を超えないように調整しましょう。 もし壁を超えてしまっても負担は大きくありません。

年収150万円の壁

パート勤務者の年収が150万円を超えると、世帯主の配偶者特別控除が満額の38万円から段階的に減っていきます。 もちろん、パート勤務者の税金も103万円を超えた部分にかかりますので、税負担が大きくなります。

▶ポイント
パート勤務者だけでなく、世帯主の税負担にも影響が出てきます。 社会保険のことも考えるとパート勤務者にとって経済的に不利な年収です。

年収201万円の壁

パート勤務者の年収が201万円を超えると配偶者控除がなくなります。

▶ポイント
年収201万円を得るには月17万円弱の収入が必要です。 ここまでくると長時間働く必要があるので、パートではなく常勤になることを検討したほうが良いかもしれません。

 

「社会保険」上の扶養内に関する年収の壁

続けて「社会保険上の扶養内」に関する年収の壁も見ていきましょう。

年収106万円の壁

パート勤務者の年収が106万円を超え、かつ以下の要件を全て満たした場合、世帯主の扶養を抜けて自分で社会保険に加入しなければなりません。

  • ①週20時間以上
  • ②月額賃金8.8万円以上(年収106万円以上)
  • ③勤務期間1年以上見込み
  • ④学生は適用除外
  • ⑤従業員 501人以上の企業
  • ▶ポイント
    税金の負担に加えて、健康保険料と国民年金の社会保険料が引かれると、大きく手取りが減ってしまいます。 従業員501人以上の企業でパート勤務する場合は要注意です。

    年収130万円の壁

    パート勤務者の年収が130万円を超えると、世帯主の社会保険の扶養から外れます。 ただし、世帯主の配偶者特別控除は満額利用可能です。(この控除も、年収150万円を超えると段階的に減っていきます)

    ▶ポイント
    大幅に手取りが減ってしまいますので130万円をギリギリ超える年収は経済的に不利です。

     

    より強く意識すべきは「社会保険上の扶養の壁」!

    パート勤務をされる方は「社会保険城の扶養の壁」を強く意識しましょう。 社会保険上の壁は超えてしまうと大きく手取りが減ってしまうからです。 106万円と130万円のどちらの壁に自分が該当するのか確認し、収入を調整しましょう。 しかし一方で、社会保険上の壁を超えて厚生年金を支払った場合、将来受け取ることができる年金が増えるため、老後の資金まで含めて考えることも重要です。

     

    「働き損」にならない働き方をシミュレーションしてみよう!

    多くの人が気にする103万円の壁と130万円の壁を意識して「働き損」にならない働き方をシミュレーションしてみましょう。 今回はパート看護師の時給を1,500円として計算してみました。 参考にしてみてください。

    103万円の壁を意識した働き方シミュレーション

    Aさん:1日6時間、月に9日間勤務する看護師の場合
    1,500円(時給)×6時間×9日(一ヶ月の勤務回数)×12ヶ月=97.2万円

    この場合であれば100万円の壁を超えていないため、給料がそのまま手取りに。 103万円の壁を超えないように、もう数回勤務を増やせば少額の住民税の負担のみで手取りを増やすことができます。

    130万円の壁を意識した働き方シミュレーション

    Bさん:1日8時間、月に9日間勤務する看護師の場合(従業員501人未満の企業に勤務)
    1,500円(時給)×8時間×9日(一ヶ月の勤務回数)×12ヶ月=129.6万円

    この場合であれば130万円の壁をギリギリ超えていないため、数万円の税金の負担のみです。

     

    まとめ

    「扶養内」については、税金上と社会保険上にそれぞれの壁があり、なかなか理解が難しいですよね。 特に社会保険上の壁を知らないと手取りが大きく減り、「働き損」になってしまうかもしれません。 ぜひ本記事の解説やシミュレーションを扶養内のパート勤務の参考にしてみてくださいね。

    参考文献

    国税庁.”通勤手当の非課税限度額の引上げについて”(参照 2019-12-30)
    国税庁.”家族と税”(参照 2019-12-30)
    国税庁.”扶養控除” (参照 2019-12-30)
    国税庁.”パート収入はいくらまで所得税がかからないか” (参照 2019-12-30)
    厚生労働省.”短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大”(参照 2019-12-30)
    政府広報オンライン.”会社員などの配偶者に扶養されている方、扶養されていた方(主婦・主夫)へ知っておきたい「年金」の手続” (参照 2019-12-30)

    この記事を書いたのは

    看護師FP:しまづ 看護師として働く中で、お金の知識がないと時に自分や大切な家族の生活を脅かすことを実感し、ファイナンシャルプランナーの資格も取得。みなさんのお財布の健康を守るお手伝いをさせていただきます!

    イラスト・まえかわしお

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