ナースでも意外と知らない!? 妊娠と出産についてのソボクな疑問に、専門医に答えてもらいます。
A 実際には、35歳で突然変わるわけではありません。
下のグラフからも分かるように、女性の場合、30歳を過ぎたあたりから妊娠率が少しずつ下降し37~38歳で大幅に下がります。35歳を境界に何かが変わるわけではなく、この年齢前後で徐々に妊娠しにくい体になるということです。なおグラフの下の線(緑のライン)は性行為感染症や子宮内膜症を患っている場合。通常時よりさらに妊娠力が低下します。(小杉医師)
A 年齢以上に、母体の栄養管理が重要!
母体の年齢が上がると卵子の染色体異常率が高まり、妊娠しにくくなったり流産しやすくなったりするのは事実。しかしそれ以上に、母体の栄養不良が原因と考えられる障害(神経管閉鎖障害など)や、出生体重が2,500gに満たない赤ちゃんが増えているという事実も重大です。先進国の間では日本でだけ起きている問題で、日本の女性の過度な痩せ願望と、“妊娠中に体重を増やしてはいけない”という偏った考え方が関係しているのではないかといわれています。(小杉医師)
A 女性の年齢が上がることやセックスレスが主な原因です!
二人目以降の子どもに恵まれない不妊の状態を二人目不妊などと呼ぶことがあります。残念ながら女性は年齢を重ねるごとに妊娠しにくくなります。子宮や卵巣が老いると、排卵障害や受精卵がうまく子宮に着床できない子宮着床障害が起こりやすくなるのです。また一人目の妊娠以降、セックスレスになるカップルも多いようです。「できにくいな」と感じ、特に女性が30歳を超えているような場合は、早めに医師に相談することをお勧めします。(原医師)
A 出産そのものにかかる費用は30~100万円以上にも!!
妊娠・出産は病気ではないので、基本的には健康保険が適用されません(治療が必要なケースには健康保険が適用されることもあります)。出産時も帝王切開などの医療行為を伴う場合は健康保険の範囲になりますが、自然分娩は全額が自己負担となります。出産にかかる費用は、選ぶ医療機関や出産方法により30~100万円以上と幅があります。また、妊娠中の妊婦健診も健康保険が適用されません。
とはいえ、妊婦健診は自治体が平均して14回程度までの基本的な検診と必要な検査(血液検査や尿検査)の費用を一定金額まで負担してくれるケースがほとんどです。また、出産時には加入している健康保険から「出産育児一時金」が受け取れます。基本額は42万円。出産した医療機関に直接振り込んでもらい(直接支払制度)、差額を窓口で支払うケースが増えています。
COLUMN
風邪の症状と似ていることも! 妊娠初期症状ガイド
産科・婦人科ナースや妊娠経験者でないと、意外に気が付かないのが妊娠初期の症状。妊娠が成立後に女性の体にはさまざまな変化が現れます。が、全員にすべての症状があてはまるわけではなく、種類も強度も現れるタイミングも千差万別。「もしかして…」と思ったら自己判断は避けて受診するのがよいでしょう。
代表的な初期症状
つわり
生理の遅れ
微熱
胸の張り
頭痛
不眠
流涎やげっぷ
イライラ
頻尿 など
※これらは代表例です。これらの症状がなくてもおかしいと感じたら受診するようにしましょう。また、最近の市販の妊娠判定薬も非常に精度が高く、生理が遅れてから1~2週間後には陽性反応が出ます。この時期はまだ超音波で胎嚢(たいのう)が子宮内で確認しにくいため、出血や痛みなどの異常がなければ受診はそこから1週間後でもよいでしょう。
つわりはテレビドラマなどでは、突如トイレに駆け込むシーンなどを目にしますが、パターンは人それぞれ。1日中二日酔いのような悪心に悩まされる人もいれば、ひたすら眠くなる人もいます。中には風邪や胃腸の不調のような症状もありますが、避妊なしのセックスに身に覚えがあれば、次の生理が来るまで妊娠の可能性は否定できません。安易に薬を服用することは避けましょう。(「ナース専科マガジン」2010年12月号より転載)
※「ナースの妊娠」は今回で連載終了です。