まもなく本番を迎える第114回看護師国家試験。今回は状況設定問題にフォーカスして、直前に迫ったこの時期にチェックしたいポイント、近年の傾向から出題が予想される問題の特徴を紹介します。ぜひ追い込みの勉強に活用し、国試合格を目指しましょう。
はじめに
近年の状況設定問題は、多くの情報が与えられ、長文化の傾向がみられます。長文化というと、難しくなったと考えがちですが「解答するためのヒント」が多くなり、逆に答えやすくなっているとも考えられます。
ここでは科目ごとに取り上げられやすい疾患は何か、またどんな情報が与えられ何を問われることが多いのかについて紹介します。
状況設定問題の出題傾向と予想
状況設定問題で出題される科目は下記7科目です。
- 成人看護学
- 老年看護学
- 小児看護学
- 母性看護学
- 精神看護学
- 地域・在宅看護論
- 看護の統合と実践
ここからは各科目の出題傾向や頻出問題を紹介しながら、第114回に向けて対策すべきポイントを中心にまとめています。
成人看護学
「成人看護学」で出題頻度が高いのは、消化器、循環器、呼吸器の急性・慢性疾患や腎のがんに関する問題です。そのため、これらの臓器に関する基本的な知識が重視されると考えらえます。また、近年では検査データや治療に関する情報もたくさん与えられます。
出題頻度の高い循環器に関する過去問を紹介します。
Aさん(50歳、男性、会社員)は半年ほど前から労作時に胸痛と呼吸困難感があり、狭心症と診断され内服治療を受けている。本日明け方から胸部に圧迫感があった。出勤途中に強い胸痛を自覚し、自ら救急車を要請した。救急外来到着時のバイタルサインは、体温35.8℃、呼吸数30/分、脈拍112/分、血圧96/52mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉93%(酸素2L/分)。意識は清明。12誘導心電図はV1~V4でST上昇、Ⅱ、Ⅲ、aVFでST低下がみられた。
心臓カテーテル検査の結果、Aさんは急性心筋梗塞と診断された。
心係数2.4L/分/m2、肺動脈楔入圧20mmHgでForrester〈フォレスター〉分類Ⅱ群であった。
身体所見:両側下肺野で呼吸音が減弱しており、軽度の粗い断続性副雑音が聴取される。
心エコー検査:左室駆出率〈LVEF〉58%
胸部エックス線検査:心胸郭比〈CTR〉48%
このときのAさんのアセスメントで適切なのはどれか。
1. 心拡大が認められる。
2. 肺うっ血が起きている。
3. 末梢循環不全が起きている。
4. 左心室の収縮力が低下している。
(第111回午後No.92)
解答・解説はこちら
正解は「2」です。
情報量が多く、一見難しそうにみえますが、心係数や肺動脈楔入圧、Forrester〈フォレスター〉分類など、肺うっ血を示す情報がいくつもあり、すべての情報がわからなくても「2」しかないと判断できそうです。しかし、たとえ答えを簡単に導けたとしても、すぐ次の問題にいくのではなく、問題に用いられている言葉で他者に説明できないものは理解できていないものとしてしっかり調べましょう。このひと手間が、必修問題や一般問題を解く力にもなるのです。
成人の状況設定問題では、検査データの把握が難しいといわれますが、実際はパターン化しています。貧血や脱水、感染、循環機能障害、腎機能障害、肝機能障害、低栄養状態、出血傾向などをデータのパターンとして学習し、覚えておくことで対応が可能です。また周手術期の看護については、何年も出題される術式が変わっていないので、過去問を解くことで対策しやすいと考えます。
老年看護学
「老年看護学」での出題頻度の高い疾患は、認知症や脳血管障害、パーキンソン病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などです。設定として多いのは、もともとの老年症候群に疾患が影響し、入院中にせん妄や睡眠障害、転倒、尿失禁などが発生する状況です。
また「成人看護学」と同様、検査データの判断や、検査や薬物、手術に対する患者さん指導なども出題されます。そのほか患者さんの退院後の療養の場の選択や、自宅に戻る場合の環境調整や利用できる介護保険サービス、家族への指導についても頻出されているので、これらを中心に対策しましょう。
小児看護学
「小児看護学」で出題頻度の高い疾患は、先天異常、小児特有の感染症、小児慢性特定疾患(川崎病やネフローゼ症候群、糖尿病、白血病など)です。患児の年齢は乳児期から思春期まで幅広く、例年療養中の健全な発達支援についての問題が頻出しています。また、患児の理解力に応じた病気や検査、治療の説明、患児が幼い場合の保護者への療養指導についてもよく出題されるのでおさえておきましょう。
ここでは、王道問題ながら正答率が低かった過去問を紹介します。
Aちゃん(3歳、女児)は、父親(会社員)と母親(会社員)との3人暮らし。Aちゃんは、生後11か月のときに、卵による食物アレルギーと診断され、医師の指示で卵の除去食療法をしていた。保育所では卵を除去した給食が提供されている。Aちゃんは保育所の給食の時間に、隣の席の園児の卵が入ったおかずを摂取し、蕁麻疹と咳嗽が出現した。保育士に連れられて救急外来を受診した。Aちゃんは保育士に抱っこされ、「かゆい」と訴えており、咳込みがみられた。
受診時に観察する項目で優先度が高いのはどれか。
1. 体温
2. 心拍数
3. 腸蠕動音
4. 蕁麻疹の範囲
(第107回午前No.100)
解答・解説はこちら
正解は「2」です。
蕁麻疹と咳嗽が出ていることから、Aちゃんは重症のⅠ型アレルギーによって血管が拡張し、血管透過性が亢進して体表や気管内、腸管などで浮腫が生じている可能性があります。さらなる悪化でアナフィラキシーショックに陥る危険性があるため、意識レベルや血圧、脈拍数(心拍数)を確認する必要があるでしょう。ショックについての基本的な理解が問われる良問です。
母性看護学
「母性看護学」では、正常な妊娠期、分娩期、産褥期をたどる事例と正常な新生児の事例が頻出問題です。妊娠期であれば、妊婦健診における情報が提示され、正常・異常の判断や各期の生活指導について出題されます。分娩期では、分娩の進行を示す情報が提示され、何期かの判断や、必要な援助についてよく問われます。産褥期では、進行性変化と退行性変化の情報が提示され、経過が順調かどうかの判断や、必要な援助について出題される傾向です。
また近年は、働く母親の増加を背景に、連問3つ目で育児・介護休業法の利用や、育児支援(新生児訪問など)の利用についても出題されています。
精神看護学
「精神看護学」では、統合失調症、うつ病、アルコール依存症、境界性パーソナリティ障害などがよく取り上げられており、これらの疾患の、急性期、回復期、退院に向けた時期について問われる傾向にあります。
また、急性期では薬物による精神症状の安定化と安全確保や休息への援助、回復期では日常生活リズムの確立に向けた援助、退院に向けた時期ではセルフケアの確立に向けた援助と生活の場の決定、利用できる社会資源の選択や退院指導について出題されます。その判断には障害者総合支援法の知識も必要になっているので、こちらもチェックしておきたいところです。
在宅看護論/地域・在宅看護論
「在宅看護論/地域・在宅看護論」の問題は高齢者の事例が多く、脳血管障害の後遺症などでADLに障害があることや、在宅酸素療法や人工呼吸器、胃瘻や腸瘻を造設している設定が多くみられます。在宅での看取りを扱ったものもあります。
生活の場が家庭なので、検査データは少なく、フィジカルアセスメントや家族・多職種からの情報をもとに必要な看護や家族への指導を判断する問題が一般的です。また、療養を継続する上で連携が必要な職種や利用可能なサービスについても判断を求められるので、今一度確認しておきましょう。
看護の統合と実践
「看護の統合と実践」は災害看護や国際看護が頻出問題です。とくに災害看護の出題数は多く、災害各期の被災者の健康課題と看護について出題されます。しかし難問は少なく、災害各期の健康課題の特徴と、被災者の発達段階や持病について理解していれば対応できるものがほとんどです。
おわりに
状況設定問題は「成人看護学」や「小児看護学」の疾患や検査、治療について問う問題の正答率が低い傾向にあります。対策方法としては情報量の多い頻出問題(とくに循環器は外せない)を選び、疾患について解剖生理から学びなおし、検査データもしっかり理解することです。これによって確実に合格ラインに到達することができます。急がば回れであることを心に留めて、最後までねばってくださいね。