まもなく本番を迎える第114回看護師国家試験。今回は一般問題に絞り、直前に迫ったこの時期にチェックしたいポイント、出題が予想される問題の特徴をまとめました。ぜひ国試当日までの勉強に役立ててください。
はじめに
看護師国家試験の出題基準は、社会の変化や看護を取り巻く状況にあわせて定期的に改定されています。現在は2022年3月に改定が行われた令和5年版が最新の出題基準となっています。第114回は改定後3回目の試験です。ここでは、近年の出題傾向から、第114回の一般問題で出題される内容を予想します。
一般問題の出題傾向と予想
一般問題は下記11科目から出題されます。
- 人体の構造と機能
- 疾病の成り立ちと回復の促進
- 健康支援と社会保障制度
- 基礎看護学
- 成人看護学
- 老年看護学
- 小児看護学
- 母性看護学
- 精神看護学
- 地域・在宅看護論
- 看護の統合と実践
科目ごとの出題基準が設定されています。ここからは、各科目の近年の出題傾向をもとに、出題が予想される問題について過去問を交えながら紹介します。
人体の構造と機能
「人体の構造と機能」は、「解剖学」「生理学」「生化学」に該当する科目です。細かな知識を問う問題は出題されず、看護実践に必要な範囲での基礎知識に関する問題が出題されています。
「人体の構造と機能」だけ学習するのが難しい人は、領域別の看護学各論を学習しながら人体の基礎を確認する学習をしてみてください。知らず知らずのうちに力がついてくる領域でもあります。
例年頻出しており、出題が予想される問題を紹介します。こちらは第113回に出題された問題です。
交感神経の興奮によって起こる眼の反応はどれか。
1.散瞳
2.流涙
3.明反応
4.対光反射
(第113回 午後No.26)
解答・解説はこちら
正解は「1」です。
自律神経系の問題は毎年出題されています。自律神経(交感神経・副交感神経)の中枢は間脳の視床下部と脳幹です。中枢が受容器(センサー)からのさまざまなストレス情報を感知すると、ストレスに打ち勝つためのATPを量産するモードに入り、上半身の心臓・脳・肺・肝臓や腎臓などの臓器を活性化させます。このとき、下半身の主な臓器や消化液・涙液の分泌は反対に抑制されます。
自律神経の問題が頻出する理由は、自律神経を調節する薬が非常に多いからです。交感神経の働きを強める薬には、β刺激薬やカテコールアミン、抗コリン薬など、副交感神経の働きを強める薬には、コリン作動薬やβ遮断薬などがあります。自律神経について学んだら、それを調節する薬について学ぶと応用の幅が広がりますよ。
疾病の成り立ちと回復の促進
「疾病の成り立ちと回復の促進」は学生が最も苦手とする科目です。病態生理や検査・診断・治療に関する知識が問われます。頻出されているのは、体液調節にかかわる酸塩基平衡、炎症、感染症などの基本的な病因や、副腎皮質ステロイド剤、精神疾患治療薬などの薬物療法に関連する問題です。
また近年は「薬物動態」「薬物の生物学的半減期」「薬物の血中濃度モニタリング」など、薬物療法の基本についての問題も増えており出題が予想されます。
ここでは毎年のように出題される薬物の問題をみていきます。
抗コリン薬の投与が禁忌の疾患はどれか。2つ選べ。
1.疥癬
2.緑内障
3.大腿骨骨折
4.前立腺肥大症
5.前頭側頭型認知症
(第104回午後No.84)
解答・解説はこちら
正解は「2と4」です。
抗コリン薬は副交感神経を抑制するため、下半身の臓器(下部の消化器や泌尿器)の働きが弱まります。反対に交感神経を活性化させるので、上半身の臓器が活発化し、散瞳が生じます。抗コリン薬の使用例として、頻尿の症状緩和、(内視鏡検査前の)腸蠕動の抑制、気管支喘息時の気管支拡張、眼底検査前の散瞳などがあります。
前立腺肥大症で排尿困難がある人は、抗コリン薬を使用すると完全に排尿できなくなる「尿閉」へと悪化し、尿が腎臓に逆流して水腎症に陥る危険性があるため禁忌です。また、緑内障は眼圧の上昇が網膜を傷つけ、視野欠損を生じさせる疾患であり、抗コリン薬を投与すると散瞳によって眼圧をさらに上昇させてしまいます。そのため、緑内障の患者さんにとっても抗コリン薬は禁忌です。
健康支援と社会保障制度
この科目では人口減少、少子高齢化、世帯人数の減少、疾病構造の変化など日本が抱える健康課題と、それを支える社会保障制度(社会保険、公衆衛生、社会福祉、公的扶助)について出題されます。とくに、社会保険のなかの医療保険と介護保険が王道の問題です。出題が予想されるので過去問を用いて完璧に理解してきましょう。
また、社会保障費を抑制するための健康増進に関わる問題、労働者保護に関する問題もよく出題されます。そのほか、感染症対策に関わる公衆衛生の問題についてもアンテナを張っておきましょう。
基礎看護学
「基礎看護学」の問題は、基礎看護技術や、フィジカルアセスメント、看護過程、多職種間の連携に関するものが中心となります。まず過去問を見直しましょう。
とくにフィジカルアセスメントの聴診技術(心音、呼吸音)は毎年出題される王道問題でありながら、正誤がはっきり分かれる部分です。該当する第113回の問題を紹介します。
成人の心音の聴取部位を図に示す。
心音の聴診における、僧帽弁領域はどれか。ただし、聴取部位は●で示す。
1.① 2.② 3.③ 4.④
(第113回午前No.34)
解答・解説はこちら
正解は「3」です。
心臓に関しては、その構造と肺循環と体循環についてしっかり深めてください。「成人」「老年」の循環器疾患の症状、治療、看護についての応用にもつながっていきます。
成人看護学・老年看護学
「成人看護学」は、幅広い病態・疾患が出題され出題数も多いですが、その反面「人体の構造と機能」や「疾病の成り立ちや回復の促進」などの問題を攻略していれば簡単に解ける問題が多いのも特徴です。
「老年看護学」も同様であるのに加え、高齢者の生活や加齢による身体機能の変化や高齢者特有の疾患(認知症・失禁など)についておさえておけば、高得点が期待できます。
このうち出題数が多いにも関わらず苦手とする王道問題が、下記で紹介している循環器に関する問題です。今回も出題される可能性があるので、しっかり対策しておきましょう。
開心術後の心タンポナーデで正しいのはどれか。2つ選べ。
1.徐脈
2.心音減弱
3.心拍出量の増加
4.中心静脈圧の上昇
5.吸気時収縮期圧の10mm上昇
(第113回午後No.83)
解答・解説はこちら
正解は「2,4」です。
心タンポナーデの問題は1年おきに出題されています。その病態は「心臓の周りの二重の心膜の間に液体が貯留して心臓を圧迫し、心臓が拡張できなくなること」です。このことと、心臓を中心とした血液の循環が理解できれば、どこに血液が溜まり、どこへの血流が不足するのかがわかり解答にたどり着けるでしょう。
小児・母性看護学
「小児看護学」の出題の中心は、小児の発達や、小児特有の疾患や検査や処置への看護です。また、家族への援助についての問題も頻出しています。さらに小児が利用できる社会保障制度(とくに「小児慢性特定疾病医療費助成制度」「未熟児養育医療給付制度」など)もよく問われているため、これらを重点的に学習しましょう。
「母性看護学」では、女性の各ライフサイクル各期に応じた看護や、正常な妊娠、分娩、産褥経過や新生児の看護に関する出題が中心になると予想されます。そのほか「母体保護法」や「母子保健法」についても毎回問われているので確認しておきましょう。
精神看護学
「精神看護学」では、統合失調症を中心とした精神疾患や精神症状の理解と対応、薬物療法・非薬物療法の理解、患者家族への支援が出題の中心となっています。また、精神保健福祉法(精神保健及び精神障碍者福祉に関する法律)に沿った各入院形態や精神障害者保健福祉手帳についても頻出問題です。ほかには、精神障害者が社会復帰を行う上での「障害者総合支援法」の活用や、多職種連携に関わる問題も重視されてきています。
在宅看護論/地域・在宅看護論
「在宅看護論/地域・在宅看護論」は出題基準の改定によって、在宅看護の対象を在宅療養者だけでなく、家族まで含むようになりました。しかし難問化はしていません。出題の中心は、在宅での看護技術や、利用できる社会資源についてです。また「基礎看護学」や「健康支援と社会保障制度(とくに介護保険制度・医療保険制度など)」との関連も深いのが特徴です。これらと絡めて理解を深めておくとよいでしょう。
看護の統合と実践
「看護の統合と実践」では、災害時の各期の特徴と看護、国際看護(国際協力や多様な文化を考慮した看護など、医療安全、チーム医療などが頻出問題です。難問は少なく、シンプルな内容になりがちなので、過去問対策によって十分対応できるでしょう。
おわりに
一般問題についての近年の出題傾向と第114回出題予想を解説しました。ここで点数を上げるためには、暗記的要素の高い問題に取り組みながら、「人体の構造と機能」と「疾病の成り立ちと回復の促進」のなかで、とくに「循環器系」と「自律神経系」を基礎にした「成人」「老年」「小児」の疾患に関する問題を攻略することです。まだ時間はあります。がんばっていきましょう。