世界の最先端医療機器開発のトップを走るアメリカ。その原動力は、教育機関で特に強調される3つのテーマ。日本の医療業界に足りない、その3つのテーマとは?
アメリカが医療大国と呼ばれるワケ
最終回は、「医療大国アメリカから私たちが学べること」のおはなしです。
いままでは、アメリカの医療制度のネガティブな面を紹介してきました。
しかし、やはり「医療大国」といえば、アメリカです。
厚生労働省の薬事工業生産動態統計によると、日本の医療機器市場では実に49.4%を輸入に頼っているといいます。この数字は年々増加しており、その大半がアメリカからの輸入です。
優れたものづくりの国でありながら、人工呼吸器、ペースメーカー、バイオマテリアルといわれる人工血管、人工骨などは、80~100%輸入に頼っているのが現実なのです。
日本の医療現場で、今まで以上に海外のハイテク医療機器を目にするのは、半数近くを輸入に頼る日本医療の実態があるからです。
医療機器だけではなく、日本の看護師が臨床現場で直接触れる輸入品は、ガイドラインではないでしょうか?
「看護診断NANDA」や、心肺蘇生法の基準となるアメリカ心臓協会(AHA)の「一次蘇生法(Basic Life Support)」「二次蘇生法(Advanced Cardiovascular Life Support)」など、国際基準となる常に新しいガイドラインをアメリカは発信し続けています。
アメリカがトップランナーであり続ける原動力とは
では、世界の最先端医療機器開発のトップを走るアメリカの原動力は、いったい何なのでしょうか? なぜ、アメリカは患者・医療者に安全でハイテクを駆使した医療機器を次々と開発し、世界に発信し続けることができるのでしょうか?
これらのヒントは、アメリカの教育機関で特に強調される3つのテーマにある、と私は考えています。
その3つのテーマとは、
- Innovation(革新)
- Creativity(独創力)
- Change(変化)
アメリカで成功するためには、この3つの能力が鍵となります。学校でも社会に出ても、常にこの能力は重要視され、人々はそれを高く評価します。
アメリカの進化し続けるハイテク医療は、まさにこの3つの柱によって生み出されているのです。
しかし、それよりも強く私が感じたことは、人々の柔軟性です。
常識にとらわれない新しい発想や変化が高く評価され、好まれるだけあり、それを柔軟に受け入れる傾向が日本よりも圧倒的に優れているように思うのです。
日本の医療は、急成長で海外への拡大をめざす一方で、国内の医療・看護の分野は古い体質が根強く残る閉鎖的な社会だ、と私は感じています。
なぜなら、おかしいと思っていても一度作り上げたものが壊せない、新しいものや発想になかなか敏感になれない。そういった組織や古い体質に私自身何度も直面してきたからです。
アメリカが掲げる3つのテーマは、これからの日本の医療・看護の発展のためにもちろん必要です。
しかし、その前に、日本の看護師や医療従事者がアメリカから学べるものは、日本社会特有の古い体質に問題意識を持ち、この新しい3つのテーマに対応できる「高い柔軟性」を養うことなのかもしれません。
この連載は今回で終了します。