• 公開日: 2019/12/9
  • 更新日: 2020/1/15

「慢性期病院=楽」は大違い!実は誤解している慢性期の職場

皆さんは、「慢性期病院」と聞くとどういったイメージをお持ちでしょうか?少子超高齢化社会となっている今、慢性期病院はどんどん変化しています。そこで今回は、筆者の実体験を元に「慢性期病院」についてご紹介します!

 

慢性期病院ってどんなところ?

そもそも、慢性期病院とはどういったところなのでしょうか?まずはそこからご紹介します。

慢性期病院は「回復期」「慢性期」を担当する病院

団塊の世代が後期高齢者となる2025年に向けて、日本の医療は2019年現在、4つに分類されています。それが、「高度急性期」「急性期」「回復期」「慢性期」です。そして、慢性期病院では「回復期」「慢性期」の役割を担う病院である、といえます。

以前は介護保険の認定により、医療介入が必要なくても、継続的に介護を必要とする方なら慢性期病院へ入院できていましたが、現行の制度では介護保険のみでは入院できないという特徴があります。

吸引・胃瘻・レスピなど、継続した医療介入が必要な方が多い

では、慢性期病院へ入院される方は、どういった方々なのでしょうか?それは、「吸引・胃瘻・レスピなど、継続した医療介入が必要な方」です。つまり、「医療介入が多く、施設や自宅では療養生活を送ることが難しい方」が、慢性期病院へ入院されています。また、患者さんには、筋ジストロフィーなど、進行性の難病を患う方も含まれています。

看護助手・介護士が多く配置されている

慢性期病院では、継続した医療介入が必要である一方で、状態としては急性期を脱しており、比較的落ち着いている方が多いです。そのため、看護師の配置が急性期と比べて少ないのですが、看護助手さんや介護士さんの配置基準も定められている、という特徴があります。

急性期病院では、2012年3月31日までの看護師割合は6対1(看護師1人につき患者6人)の配置でも可*1とされていましたが、現在の配置標準の看護師割合は3:1(看護師1人につき患者3人)となっています。一方、慢性期病院では看護師、看護助手ともに4:1です。*2

急性期病院でも看護助手さんが働いている病院は多いかと思いますが、慢性期病院では急性期病院よりも看護助手さんが多く配置されており、看護師と同数かそれ以上多くの看護助手さんが働いている病院もあります。

 

働いて気がついた、3つのポイント

筆者は現行の制度となる以前に、慢性期病院で働いていたことがあります。慢性期病院はゆったりしたイメージがありますが、実際は「イメージと違う!」ということがありました。そこで気がついた、慢性期病院での3つの意外なポイントについて、ご紹介します。

他職種との連携がより重要

先ほどご紹介したように、慢性期病院では看護師以外に、看護助手さんも一定数在籍しており、需要な役割を担っています。そのため、日常の業務において他職種との連携、特に看護助手さんとの連携が重要になります。当時筆者が働いていた病院では、入院患者さん30名に対して夜勤は看護師が1人、助手さんが2人という体制をとっていました。

看護助手さんは医療的ケアを行うことができないため、「××さん、横になったので一度吸引をお願いします」「〇〇さんの口腔ケアが終わったので、ベッドへお連れしてください」というように、声をかけあいながら仕事を進めていきます。お互いができる仕事内容を把握した上で、それぞれができない部分を補いながら仕事を行うためにも、連携は急性期病院より重要であると感じました。

受け持ち人数が多く、記録するだけでも大変!

急性期病院に比べ、慢性期病院では看護師1人あたりの患者さん数が多くなっています。 そのため、必然的に看護師の受け持ち人数は急性期に比べ多くなります。「状態はある程度安定しているんだから、受け持ち人数が多くても問題ない」「急性期病院よりも容態の急変が少ないからそれほど大変ではないのでは?」と思われた方もいるかと思いますが、日勤中に10名以上の受け持ちの方々の状態を確認し、記録するだけでも大変です。

また、状態はある程度安定しているといっても慢性期病院に入院されている方々の多くは日常的に医療的ケアを必要としている方々なため、急変も起こりえます。多くの受け持ちの方々の状態把握および経過を長期的に見ていくということは、急性期とはまた違ったスキルを要求される場所であるといえます。

慢性期はスキルアップできない、なんてことはない!

慢性期、というと一部の方から「慢性期ではスキルアップできない」「勉強したいなら、やっぱり急性期」という意見を聞きます。しかし筆者は実際に慢性期病院で働いていたからこそ、より患者さんの流れをつかむことができたと実感しています。

例えば、急性期病院では胃瘻形成術の前後のケアは行いますが、創部がある程度落ち着き、経管栄養ができるようになれば、その方は急性期病院を退院されます。慢性期病院では、こういった「急性期病院を退院された後の生活」について、学ぶことができるのです。「患者さんの流れをつかむ」ということは、看護師としてのスキルアップの一つだったと今でも感じます。

 

変化していく「慢性期病院」

少子超高齢化の流れから、慢性期病院もその役割や受け入れる患者のタイプがどんどん変わってきています。筆者が看護学生だった頃は、介護保険で入院できるタイプの慢性期病院が複数存在していましたが、2019年現在はそういった施設はすべて老人保健施設など、介護施設へ移行しており、現在は医療的ケアを継続して受けている「医療的慢性期病院」のみとなっています。このように、時代の流れを受けて慢性期病院も変化し続けているため、ご自身の学生時代だけではなく、ぜひ現在の慢性期病院についても知っていただけたらと思います。

 

参考・引用文献

*1 「社会保障審議会医療部会(3/9)資料」(厚生労働省、第17回社会保障審議会医療部会資料、2011年3月)
*2 「平成30年度病床昨日報告の見直しに向けた議論の整理(資料編)」(厚生労働省、2018年6月)

この記事を書いたのは

山村 真子 看護師として働きながら、ライターの仕事もしている、アラフォーママナース。看護系以外にも、育児や病気、介護など幅広い分野の執筆を行っています。時短勤務中だが、毎日定時に帰れるはずもなく、保育園の送迎はいつもギリギリなのが最近の悩み。

イラスト・k.nakano

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