• 公開日: 2019/10/5
  • 更新日: 2020/1/14

看護師の離職率は本当に高いのかを解説!有効求人倍率はどれくらい?

「うちの職場はせっかく入ってもすぐに離職しちゃう・・・」「看護師って離職率が高いって言われているけど、実際はどうなの?」超高齢社会の日本において、看護師は今後、より活躍が求められる職業のひとつ。

一方でその厳しい仕事内容から、離職者も多い職業だと思います。そこで今回は、看護師の離職率について、データとともに見ていきましょう。

 

看護師の離職率はそんなに「高い」?

看護師の離職率は、他の職種に比べて本当に「高い」のでしょうか?まずはそこから検証していきたいと思います。

2018年のデータでは、看護師はむしろ離職率が「低い」

病院看護職員の離職率推移

日本看護協会が2019年5月に公表したデータによると、2017年度の看護師の離職率は正規雇用の職員で10.9%、新卒の離職率は7.5%と、ここ10年ほぼ横ばいの値で推移しています。一方、厚生労働省が提示している2017年度の全職業を対象とした離職率は14.9%となっており、離職率だけでみると、看護師は職業全体と比べ4.0%離職率が低い、ということがいえます。

また、こんなデータもあります。「宿泊業、飲食業」など、職種を14種類に分け、それぞれの入職率・離職率を比較してみると、看護師全体の離職率である10.9%は全体の5番目に低い値となるのです。このように、看護師の離職率は高いどころか、むしろ他職種に比べて「低く推移している」ということがいえるとともに、「看護師は離職率が低い職種のひとつ」であるのです。

 

看護師の離職率が「高い」と感じる4つの理由

他職種と比べると、それほど高いとはいえない看護師の離職率。ではなぜ、現場で働く看護師は、「看護師は離職率の高い職業だ」と錯覚してしまうのでしょうか?それには、以下のような理由が考えられます。

都道府県によって、離職率は大きく異なる

人口が多い都市部では規模の大きな病院が多く、そういった病院では毎年100名を超える新人が入職しています。これはつまり、「毎年多数の退職者がいるので、それだけ採用してもまだまだ看護師が足りない」ということを示しており、それが「離職率が高い」という錯覚を生んでいるように感じます。

都道府県別看護職員離職率(2017年度)

実際に規模の大きい病院が集中している東京は13.8%、神奈川は14.7%、大阪は13.4%と、いずれも全国平均より大幅に高い離職率となっています。一方、秋田は6.4%、青森は6.5%と、地方都市の中には離職率が全国平均の半分以下という地域も複数あります。

このように、全国平均で見れば確かに看護師の離職率は全職種に比べて低いといえますが、地域によって離職率には大きな差があるため、「もっと離職率は高いはず」と感じている看護師さんが多いのは、当然といえます。

病院の「設置主体」によっても、離職率は異なる

設置主体別看護職員離職率(2017年度)

また、こんなデータもあります。病院の設置主体別の離職率をみてみると、一番高い設置主体は「医療法人」13.4%、次いで「個人」、つまり個人経営しているような小規模の病院が13.1%となっています。一方、「公立」病院は7.7%と平均よりも低い値にて推移しています。

この数値を見ると、「公立」、つまり公務員の立場で働ける職場は離職率が低く、個人病院や医療法人病院は離職率が高い、ということがいえますし、より良い条件で働ける職場では、離職率も低く推移しているということがいえるでしょう。

看護師は転職しやすい環境にある

看護職有効求人倍率(2017年度)

看護師の特徴のひとつとして「転職しやすい環境である」ということがあげられます。2017年度の全職種においての有効求人倍率平均は、1.50倍。それに対し、看護職は2.36倍と大幅に上回っています。

そのため、看護師は「離職率が高い職種」というよりも、「有効求人倍率が高い職種」であるといえます。有効求人倍率とは、仕事の数と求職者のバランスを示すもので、その数値が1より大きいと、仕事の数の方が多いということです。全職種で1.50倍ということは、どの職種も人手不足ということですが、看護師の2.36倍は、全職種の1.5倍の求人数があるということ。

そのため、転職を希望しても割と転職先が決まりやすい、という状況を生み出しています。この「転職のしやすさ」「転職の決まりやすさ」が、職場によっては看護師の定着率低下につながり、現場で働く看護師としては「離職率が高い職種である」と感じてしまう要因のひとつだと思います。

60歳以上でも求人がある、看護師の特殊性

年齢を重ねれば重ねるほど、転職しにくくなるというのは、世の中の常識といえます。しかし、看護師の場合は60歳を過ぎても求人が多くあります。

実際に2017年度では、求職中の看護師のうち、約1割が60代というデータもあります。看護師という資格さえあれば、60代でも十分求人がある職業、それが看護師です。

一方で、20代は「健康上の理由」、30~40代は「子育て」を理由に離職する方が多いため、全世代では離職率は低くても、こういった体調やライフスタイルの変化を理由に辞める方を間近で見たり、転々と職場を変わる看護師を目の当たりにしたりすると、「看護師=離職率が高い職業」と認知されたのかもしれません。

 

働きやすい職場もある

看護師という職業は、生涯にわたって働き続けることのできる職業です。働く現場がたくさんあるからこそ、転職を繰り返す方が多いのも現実です。しかし、実際に調べてみると「看護師=離職率が高いとはいえない」ということに、驚きを感じました。

働く環境として、決して良いとは言えない職場が多い医療業界ですが、離職率がそれほど高くないということは、働きやすい職場もあるということです。転職の際には、職場の離職率を調べてみると、その転職先の働きやすさがわかるでしょう。

参考:
日本看護協会「2018年 病院看護実態調査」結果
厚生労働省-平成29年雇用動向調査結果の概況-
一般職業紹介状況(平成29年12月分及び平成29年分)について

この記事を書いたのは

山村 真子 看護師として働きながら、ライターの仕事もしている、アラフォーママナース。看護系以外にも、育児や病気、介護など幅広い分野の執筆を行っています。時短勤務中だが、毎日定時に帰れるはずもなく、保育園の送迎はいつもギリギリなのが最近の悩み。

イラスト・k.nakano

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