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【連載】キャリアアップStory 私の「転職」と「いま」

【看護師の転職story】第1回 「食べる喜び」は、「生きる喜び」です。~NST専門療法士~

  • 公開日: 2011/7/19
  • 更新日: 2020/3/26

 

日々の看護のふとした瞬間に、それまで気に留めなかったことに新たな興味が生まれたり、現状を変えたいという思いが芽生えることがあります。それは、一通りの看護ケアに自信をつけた経験3~5年目の看護師が出合う、「転機」のきっかけかもしれません。この連載では、模索を経て大きく成長した看護師に、「転機のとき」と「いま」について聞いていきます。第1回は、患者さんに食べる喜びを与えたいと、NST活動に邁進している二児のママナースです。


経管栄養で患者さんがやせていく

診療報酬の加算が認められ、全国的に関心が高まっているのが、栄養サポートチーム(Nutrition Support Team:NST)の活動です。茨城県の牛尾病院に勤務する松田直美さんは、「NSTの活動を通して、療養患者さんが食べる喜びを取り戻し、生きる喜びを感じてほしい」と積極的に取り組んでいます。

松田さんは、看護学校を卒業した後、多様な疾患・病態に対応できるスキルを身につけようと、大学病院に入職し、ICUで勤務します。そこで高度医療を受ける患者さんは、人工呼吸器を装着し高カロリー輸液を投与されながらも、回復が遅く筋肉も落ちていきました。

そのような状況を目の当たりにし、松田さんにある疑問が浮かびました。「ICUでは、看護師が日々、体温・皮膚状態から呼吸時の胸郭の高さまで、患者さんのあらゆるフィジカルアセスメントを行います。そのようななかで、筋肉が衰えていく患者さんの姿に、命が痩せ細っていく感じがしました。たとえ人工呼吸器を装着していても、筋肉などでエネルギーは消費されます。それならば、一人ひとりの患者さんの状態に合わせた栄養管理が必要なのではないかと思ったのです」

まだ知られていなかったNSTの道へ

情報を集めると、そのころ欧米に広まり始めていたNSTに行き着きました。松田さんは日本にも栄養指導医がいることを知ると、意欲的に研修や講習会などに参加。栄養管理と疾患のつながりなどを学び始めました。

「口腔も含めて、使える機能は使わないと低下してしまう。胃腸の機能を維持しながら、回復を早めることができる、このようなケアが治療や病態をみる上でも必要なのではないか」

松田さんは、転機へとつながる目標を見つけたのです。

次に勤務した診療所の外来では、COPDや多くの生活習慣病の患者さんの食事や生活指導を担当。ある糖尿病患者さんでは、10%以上あったHbA1cが5~6%まで低下したり、別のCOPDの患者さんでは、体重を維持したまま発熱や感冒への罹患率が下がったりといった効果が上がりました。

「栄養管理をきちんと行うことで、患者さんの状態は改善するのだということを体感しました。学びと実践を結びつけることができた有意義な経験でした」。このように松田さんは、NSTへの助走となる時期を振り返ります。

NST実現への転機が訪れる

松田さんが本格的にNSTに向けて動き始めたのは、2004年に訪問看護ステーションの立ち上げスタッフとして牛尾病院に入職してからのことです。「誤嚥性肺炎を起こす患者さんに薬は処方されるものの、口腔ケアや嚥下訓練が行われない状況に、改善が必要だと思いました」

そこで、訪問看護ステーションの立ち上げ時にかかわりのあった同院内科医と相談して、仲間づくりから始めることにしました。一緒に訪問をしているリハビリスタッフには、『これまでの栄養量でリハビリをするとどんどん痩せるよね。それは、患者さんの回復にマイナスにならないかな』と話すと、栄養という視点が必要であることを理解してくれました」と松田さん。

さらに栄養士にも、協力を依頼。「まさか看護師から提案されるとは」と驚かれながらも、「臨床を知っている人が、NSTを学んでいることは大きな強み」と、歓迎されました。

嚥下訓練を行う松田さんの写真

嚥下訓練を行う松田さん。訓練による嚥下機能の回復や、栄養状態などの条件が整うと、経口摂取へのステップアップが図られ、チームアプローチが深まっていく

嚥下訓練の手順を示すポスター

嚥下訓練の手順を示すポスター。患者さんの状態に合った訓練内容をベッドサイドに掲示し、本人、家族、病棟看護師、介護士が、統一したケアを行う

目を見張る効果がスタッフに認められて

集まった仲間と勉強を進めながら、看護部長に相談。院長の了解を得ると、院内での試行を諮る全体委員会が開催され、NST発足が決定しました。働きかけから2カ月後のことでした。

松田さんが一番苦労したのは、実践にかかわるスタッフとNSTとの距離をいかに縮めるかという点でした。栄養士には病棟に足を運ぶよう促し、患者さんを五感で捉える方法を間近で見てもらいました。一緒にベッドサイドでアセスメントをし、好きな食べ物を聞き、治療食へとつなげていきました。患者さんへの実践効果が目に見えてくると、ほかのスタッフとの距離も縮まっていきました。

「入院してきた重度の褥瘡患者さんの栄養評価をし栄養剤を変えたところ、長く治らなかった褥瘡がきれいに治癒したり、長期間経口摂取できなかった患者さんが口から食べられるようになって転院できたことなどがありました。そのような症例経過を共有できたことが、スタッフの意識を何よりも大きく変えていったように思います」と松田さん。「勉強会を開催してほしい」といった声が出るなど、次第に関心を寄せるスタッフが増えていったのです。

草木染めをあしらった和紙に書かれた直筆

草木染めをあしらった和紙に書かれた直筆は、訪問看護でかかわりの深かった認知症患者さんからいただいた。認知症をもつ患者さんが嚥下機能を回復し、口から食べる喜びを取り戻すと、それがきっかけとなって、認知症状が軽減することも多い。

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