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【連載】リサーチ・インタビュー

訪問看護師|関口優樹さん

  • 公開日: 2020/7/15
  • 更新日: 2020/7/22

 

新卒でウィル訪問看護ステーションに入職した関口優樹さん

看護師のさまざまな働き方を紹介するコーナー。第3回は、新卒で訪問看護師の道に進んだ関口優樹さん。現在で3年目の関口さんに、ここに至るまでの経験や苦労、やりがいを聞いてみます!

今回のゲスト:関口優樹さん
WyL株式会社 ウィル訪問看護ステーション江戸川 訪問看護師
看護師だった母親の影響もあり看護大学へ入学。学生生活を送るなかで、医療系サークルの活動に参加し、ダイバーシティコミュニティに関心を持つ興味を持つ。その後、訪問看護に関心をもち大学卒業後は、新卒で訪問看護師となり現在3年目。
ライフワークとして、地域の人を対象にしたイベントなども開催している。
ウィル訪問看護ステーション江戸川

聞き手:シーサー
看護師/ダンサー 精神科で10数年の臨床経験を積みつつ、プロダンサーでもあり、猟銃免許も取得する異色の看護師。普段は、教室経営・イベント業・大学非常勤講師など。多くの読者に看護師の幅広い働き方を伝えるべく、今回インタビュアーを務める。
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訪問看護師とは

名前の通り訪問する看護師のことで、利用者さんのご自宅にうかがい看護を行います。訪問看護師の多くは、訪問看護ステーションという事業所に所属しており、事業所には人員基準として2.5人以上の看護師が必要とされています。訪問看護師の平均年齢は、全国でみると約47歳ですが最近は若手の看護師も多くなってきています。

訪問看護ステーションから利用者さんの自宅に行くことは、看護師が、ナースステーションから患者さんのいる病室に行くのと同じイメージとして捉えるとわかりやすいでしょう。

訪問看護師は自宅でどんなことをしているのですか?

よく聞かれますが、できることは病院でも訪問先でも同じです。もちろん病院のように医療機器が豊富にあるわけではなく、手術をしたり頻回な検査はできませんが、利用者さんの状態を観察し、変化や徴候があればアセスメントし、必要があれば医師や他職種につなぎます。

よく行っているケアは排痰ケア、呼吸器の管理、点滴などの輸液管理、摘便などの排便コントロールです。多くはありませんが、輸血をする方もいます。障害をもったお子さんの場合は、入浴介助もよくあります。

 

どんな利用者さんが対象になるのか

生まれてすぐのお子さんから、成年、老年、看取り、精神疾患をもつ方など、すべての人を対象としています。私が勤める江戸川区のウィル訪問看護ステーションの場合は、小児や精神疾患の利用者さんが比較的多くいます。全体で小児2割、精神3割ぐらいでしょうか。これはおそらく、区内で小児や精神疾患の利用者さんを受け入れる事業所が少ないためだと思います。

精神疾患では、統合失調症、うつ、躁鬱病、発達障害などが多いです。小児では先天性の難病が多く、呼吸器を装着している割合が高いため、医療処置が多くなりまです。

小児や精神の利用者さんを受け入れる事業所が少ないのはなぜですか?

小児は成長発達に応じたケアが必要で、精神疾患にも専門的な知識やケアが必要になるからです。

受け入れ手が少ないのは困りますよね。

そうですね。最近は小児や精神に特化した訪問看護ステーションも増えてきましたが、まだまだ少ないのが現状です。

 

病院の看護と訪問看護との違い、役割や必要とされる視点とは

病院の看護と訪問看護の違いは何ですか?

病院との違いは2つあります。1つは、利用者さんからもよく聞く言葉ですが、「入院生活は自由が少ない」ことです。テレビを好きに見られない、他の患者さんに気を遣う、好きなときに好きなものを食べられないなどです。当然ですが、家の方が自由に過ごせますよね。

2つめは、病院では治療がメインの目的ですが、訪問看護では療養や生活のほうがメインになってきます。

例えば、糖尿病の場合、病院では食事制限をすることがあります。もし患者さんが好きなだけ食べていたら、看護師としては制限の必要性を説明したり、ときに注意しなければなりません。しかし在宅では、「あれもダメ、これもダメ」と制限などしきれませんし、長い目でみて制限した生活が続けられるとは思えません。他にも、転倒リスクが高くても本人の歩く意欲が高ければ、環境調整や補助具を検討しつつ、なるべく本人が自由に過ごせるように整備してきます。これが病院と在宅の違いになります。

訪問看護師の役割はどのようなものだと思いますか?

病状コントロールをしながら本人の望む生活と調整していくことです。本人の意向は大事ですが、あくまで病状コントロールが土台にあってこそ。意向を優先することが大きなリスクにつながる可能性があれば、それを説明してすり合わせます。管理するのではなく、思いを傾聴して叶えるために本人ができることを一緒に考え、病状と照らし合わせてマネジメントしていく。それが訪問看護師の役割だと思います。

他職種と連携をとることも役割の1つです。例えば、訪問看護師よりも頻回に利用者さん宅を訪れているヘルパーさんがいるなら、「熱が出たときはこれ飲ませてください」「痛みがでたときはこの湿布を貼ってあげてください」などと、対応に困りそうな場面を予測してお伝えしていきます。また、利用者さんの日々の細かい変化を教えてもらったりもします。

訪問看護師ならではの視点を教えてください

「利用者さんと家族の生活が成り立っているか」を見ていきます。例えば痛みがある場合、病院では痛みの原因や治療も考えていきますが、在宅では生活のどこにどれだけの影響があるのか、本人や家族にどんな困りごとや不安が出ているのかに焦点を当てます。

足が痛くてトイレまで歩けず、介助のために夜中に家族が起こされて困るなら、ポータブルトイレを部屋に置く提案をするなどです。家族は利用者さんと密接に関わる存在であるため、在宅では家族看護も非常に大切です。

本人や家族の思いを聞き出すために工夫していることありますか?

対話しかないですね。ひたすら「なんで?」の連続になります。

本心を引き出すために質問を重ねるんですね?

そうですね。家族への遠慮などから、本心をなかなか言い出せない方もいますから。

 

例えば、利用者さんが入院から退院するとき、施設へ帰るか家に帰るか選択することがあります。

利用者さんは家に帰りたいと言い、その理由が「家族に会えるから」だったとします。そんなとき「じゃあ家の近くの施設に入って、家族が毎日面会に来てくれたらいいかな?」と聞いてみると、「家族と今まで過ごした時間があるから、あの家がいい」など、もっと本質的な理由が出てくることがあるのです。それを聞くことで、本人がどこに重きを置いているかを知っていきます。

しかし一方で、家族が受け入れられないケースもあります。本人の希望を優先したくても看るのは家族。だから対話を何度も重ね、両者の落としどころを見極めていくのが仕事の1つでもあります。

 

ウィルの特徴を教えてください

関口さんが働くウィル株式会社の皆さん(写真提供:ウィル株式会社)

一番の特徴は24時間365日対応していることです。利用者さんからの緊急コールも受けています。24時間・365日体制の事業所は少ないため、地域のケアマネさんからは「土日にやっているステーションがあって助かる」と言ってもらえています。また、先ほどもお話ししたように、小さな子どもから大人、高齢者、精神疾患をもつ方など、幅広い対象を看ていることも特徴です。

私たちウィルの理念は「全ての人に家に帰る選択肢を」です。ここでいう「全ての人」には、病院から帰したいけど帰せない患者さんだけでなく、医師や地域のケアマネさんなども含めています。医療従事者も利用者さんも含めた「全ての人」に、家に帰る選択肢をつくっていきたいと思っています。

まだ訪問看護ステーションは少ないのが現状です。そこで、「家に帰る選択肢」という資源を社会に増やしていきたい、という意味もあります。選択肢といっても、家がすばらしい、家が一番良い、というわけではなく、なかには病院にいるほうが安心という人もいます。本人がどちらを望んでるかを大事にしています。

他にも特徴はありますか?

緩和ケア、摂食・嚥下障害看護といった認定看護師、在宅看護、家族支援、小児看護、精神看護といった専門看護師、さらにナース・プラクティショナーなど、高い専門性をもつスタッフが多いことです。このスタッフたちは全国にあるウィルグループ内で相談チームを組み、社内用SNSを通してスキルや知識の共有をはかったり、困ったケースの相談を受けたりもしています。

これらの資格は、ウィルに就職する前に取得した人もいれば、一時的に退職し取得してから戻ってきた人、働きながら取得した人もいます。こういった資格を取ることを事業所としても推奨してます。

また、スタッフの平均年齢が30代と若い、男性が多い、スタッフの人数が多いことも特徴です。

活気のあるメンバーが集まっている感じがしますね。採用担当者の腕がいいのかな?

就職希望者が見学に来たり面談することになったら、できる限り多くのスタッフで会うことにしているんです。

珍しい方針ですね。例えば何人くらいですか?

この前は見学者をスタッフ4人で囲んで、代表はオンラインで繋がった状態で面談しました。いま、うちの方針としては、採用は全員で決めることにしているんです。

 

関口さんの働き方[ある1日]

緊急コール当番の日   
08:00 起床(家から職場までは5分)
09:00 出社後、すぐに1件目の訪問先へ(30分の訪問)
10:00 2件目を訪問(60分の訪問)
11:30 3件目を訪問(40分の訪問)
12:30 休憩(ステーションや自宅へ帰って昼食。たまに外食することも)
13:30 4件目(60分の訪問)に出発
15:00 5件目(60分の訪問)
16:30 6件目(30分の訪問)
17:15 ステーションに戻る。利用者さんの状態に変化があった場合など、サービスの調整のために利用者さんに電話で連絡。スタッフ間で利用者さんについての相談を行う。週1回はミーティングもある。
18:00 帰宅
18:30 夕食
20:00 お風呂
21:30 勉強
22:00 読書や動画を見るなどして過ごす
24:00 就寝

ウィルでは、利用者さんのお宅への直行・直帰はOKです。対象エリアはかなり広く、利用者さんの家は一番遠いところでは、自転車で30分ぐらいかけて移動します。運転ができる人はバイクや車で移動することもあります。小児の利用者さんはケアが多いので、ケアに1時間以上かかることもあります。
緊急コールは当番制です。私のステーションはスタッフ数が多いので、月2回ぐらいの当番になります。他の事業所では2~3日に1回程度が多いようです。当番の日であれば、必要があれば夜間でも利用者さん宅を訪問します。実際に訪問まで行うのは、ウィルの事業所全体で月10件ぐらいです。

医療依存度が高いケースが多い小児の訪問ではケアが多くなりがち(写真提供:ウィル株式会社)

 

訪問看護師にはどんな人が向いている?

向いている・向いてないはあまりないと思っていますが、あえていうなら向いてる人は、本人や家族の立場に立ち、思いを汲み取れる人ですね。こうして信頼関係が築ける人が向いてると思います。

向いていない人は、強いていうなら管理的なタイプの人でしょうか。訪問看護師は、利用者さんの生活の場に入るので、例えば病状コントロールに目が行き過ぎて管理的になってしまうと、本人から拒否されて信頼関係が築けなくなります。特に在宅では信頼関係がないと成り立たないことが多いのです。

ただ、利用者さんとの相性もあります。もっと指導してほしい、というやる気のある利用者さんには管理的な人と相性がいいかもしれません。そう考えると、相手がどういう人かを見極めて対応できる人が向いているのかもしれません。

同僚や先輩の訪問看護師には、どんな経歴の人が多いですか?

ウィルにとっては、私が初の新卒入社だったので、同期はいないのです。先輩には、認定・専門看護師の人が多いのですが、経歴はバラバラです。消化器外科、循環器科などで働いていた人や海外で医療を学んだ人など、いろいろな職場を経験してる方が多いです。

少し珍しいタイプでは病棟やオペ室で働いたあと、ワーキングホリデーで海外に行き、ツアーナースとして働いたり、ディズニーリゾートの救護室で看護師として働いた人もいます。たくさんの経験を積んでいるので利用者さんとの会話でも話題が尽きない先輩ですね。在宅での雑談力はとても大事だと思うので、すごいなと思います。

雑談力が意外に大事なのですね

趣味でもいいので、いろいろな話題を持っている人は強いですね

強いとは?

コミュニケーションをとるのが上手で、信頼関係も築きやすいんです。

 

どんなスキルアップ・キャリアアップの道があるの?

スキルアップにはどのような道があるの?

基本的に病院勤務の看護師と変わりなく、専門や認定看護師の資格を取りにいくことも1つの道です。在宅看護の現場では、嚥下障害や皮膚ケアに関する対応が多いので、その分野を学びに行く人が多い印象です。訪問看護の経験が5年以上あればケアマネジャーの資格を取ることもできます。看護師でケアマネジャーを持ってると、利用者さんの身体のことも介護保険制度のこともわかり、強いと思います。

他には、訪問診療をしているクリニックに転職し、訪問看護のスキルを活かしてる人もいます。病院で退院支援や地域包括支援に関わることもできると思います。

キャリアアップにはどのような道があるの?

一般的には事業所の管理者になることでしょう。ただ、ウィルは全スタッフのフラットな関係を大切にしているので、社長が管理者的なことをしてはいますが、他に管理者は立てていないのです。基本的に、それぞれの個人の強みを活かしていくために、「役割はあっても役職はつけない」をスタンスにしています。そうですね。ウィルでは専門や認定看護師の資格を取って、相談支援チームに入ることがキャリアップの1つになると思います。

もう1つは訪問看護ステーションを立ち上げることですね。起業することもキャリアアップの1つになると思います。

次のページでは、関口さんの人となりに迫ります!

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