• 公開日: 2020/5/13
  • 更新日: 2020/6/11

終活?人生会議?どのように人生の最期の準備をすべきか解説

より良い人生の最期を迎えるためには事前の準備が欠かせません。命の危機が迫った状態になると約7割の方が、これからの医療や介護の方針について意志表示できなくなるといわれています。また、死を迎えるまでの生活を考える上でお金は切っても切り離せない存在です。

超高齢化社会に突入した日本では「終活」や「人生会議」の重要性が注目されています。多くの方の人生の最期に関わる看護師は、これまで以上に幅広い知識や経験が求められるようになるでしょう。今回は終活や人生会議とは何か、どのように進めていくのかを説明しますので、ぜひ参考にしてみて下さいね。

 

人生会議とは?

11月30日(いい看取り)は「人生会議の日」とされています。人生会議とは、終末期においてどのような医療や介護を望むかを前もって話し合い、家族や医療者と共有する取り組みです。

厚生労働省の調査によると、人生の最終段階における医療・療養について考えたことがある人は59.3%であることが明らかにされました。*1しかし、実際に人生の最終段階における医療・療養について家族や医療介護者と詳しく話し合った人はわずか2.7%のみです。人生の最終段階についての話し合いをしていない理由は「話し合うきっかけがなかったから」が最も多い回答でした。人生の最終段階について考える人は多いものの、きっかけが無く話し合いができていないことがわかります。

人生会議における看護師の役割は、情報提供や安楽な状態での意思決定支援です。*2 対象者の価値観や状況の理解度をアセスメントし多職種で共有していきます。そのため、日頃のケアの場面から十分なコミュニュケーションを取る必要があります。

 

人生会議の進め方

人生会議の進め方を見ていきましょう。*3

①大切にしたいことを考える

自分の経験や知識から分かる範囲で「受けたい医療や介護」あるいは「受けたくない医療や介護」について考えます。 「なぜそのように考えた?」という理由も合わせて考えましょう。

②大切にしたいことを伝える相手を選ぶ

自分のことをよく理解してくれており信頼できる相手を選びます。 一般的には家族ですが友人などの場合もあります。

③主治医の意見を聞く

これからの医療や介護を考える上で、予想される病状や症状について主治医の意見を聞く必要があります。 医療や介護のメリット・デメリットについて理解を深めていきましょう。

④希望する医療や介護を話し合う

信頼できる相手や医療者と希望する医療や介護について話し合います。 治癒が不可能な病状になった際にどのような選択肢を選びたいか、あるいは選びたくないかを考えていきましょう。

⑤話し合った内容を記録する

話し合った内容を記録として書き留めて周囲と共有しておきます。

⑥定期的に話し合いの機会を設けて更新する

人の気持ちは時間経過とともに揺らぐものなので、定期的に人生会議を行う必要があります。 方針に変更があった際は記録も更新しましょう

 

人生会議におけるお金の重要性

人生会議において、お金は選択肢の幅を決定する意味で重要です。 終末期を過ごす場所は医療機関、介護施設、自宅などの選択肢があり、それぞれかかる費用が違ってきます。お金は有限なので、人生会議の際に優先順位をつけて使い道を考えていきましょう。

 

終活とは?

終活は「人生の終わりのための活動」の略称で、人生の最期を迎えるための様々な準備をする活動です。 日本人の平均寿命は「男性:81.09歳」「女性:87.26歳」と世界的に見ても高水準*4です。 高齢化社会の進行により、単身高齢者の孤独死、認知症患者の増加、空き家問題、相続トラブルなどの社会問題が注目され始め、伴い自分の死後に親族に迷惑がかからないように事前に準備をする風潮が広がっています。「終活」という言葉の認知度は90%を超えていますが、実際に実施している人は5.4%*5だそうです。

終活の目的は人生の最期を意識しながら、これからの時間を自分らしく生きるための準備をすることです。終活では、遺産相続や葬儀などについても検討します。将来に不安を感じることは「医療」「介護」の次に「葬儀」「財産管理」「相続」が続いており、健康面だけでなく金銭面の不安もうかがえます。人生会議と合わせて終活も行い、金銭面での不安を解消しておくと良いでしょう。お金まわりの整理をすることで、どれくらい使えるお金があるのか知り充実した計画を立てるきっかけとなります。

 

お金の終活の進め方

お金に注目した終活の進め方を見ていきましょう。

①自分の資産を把握する

まずは自分の資産の種類や金額を把握していきます。 把握しておきたい資産は「不動産」「預貯金」「金融資産」「生命保険」「個人年金」「損害保険」「貴金属・美術品」「ゴルフ会員権」「クレジットカード」「公的年金」などです。

プラスの資産だけでなくマイナスの資産もきっちり把握しておきましょう。 死後に借金やローンなどのマイナスの資産の存在が明らかになるとトラブルの原因となります。マイナスの資産の相続は放棄する選択肢もありますが、死後3ヶ月までに決定しなければなりません。*6そのため、死後に親族がどのような資産を持っているのか把握しやすいように配慮する必要があります。

②必要なモノ・不要なモノに分けて整理する

把握した資産を必要なモノと不要なモノに分けていきます。 10年以上使っていない銀行口座は「休眠預金等活用法」によって、民間公益活動にあてられる可能性がありますので必ず解約しておきましょう。*7長期間見直しをしていない保険なども、再度必要性を検討してみるのがおすすめです。

③重要書類や通帳・印鑑などの保管場所を決める

資産に関わる重要書類や通帳・印鑑などを安全な場所に保管します。金庫で保管する場合は解錠方法の管理もしていく必要があります。

④エンディングノートや遺言書に記載して家族などに伝える

資産に関する情報や死後の取り扱いをエンディングノートあるいは遺言書に記載し、家族などの信頼できる人に伝えます。ただし、エンディングノートには法的効力がありません。*8財産配分について法的効力をもたせたい場合は遺言書を使用しましょう。

⑤資産リストは定期的に更新する

資産の状況は年々変化するものです。 そのため、定期的に資産リストを見直して変化した部分を更新していきます。

 

参考文献

*1 厚生労働省.”平成29年度 人生の最終段階における医療に関する意識調査 結果”(参照 2020-3-20)
*2 日本看護協会.”人生の最終段階における医療”(参照 2020-3-20)
*3 大阪府.”アドバンス・ケア・プランニング(ACP、愛称『人生会議』)をご存じですか?”(参照 2020-3-20)
*4 生命保険文化センター.”日本人の平均寿命はどれくらい?”(参照 2020-3-20)
*5 地方経済総合研究所.”「終活」に関する意識調査”(参照 2020-3-20)
*6 裁判所.”相続の承認又は放棄の期間の伸長”(参照 2020-3-20)
*7 金融庁.”休眠預金等活用法”(参照 2020-3-20)
*8 相続弁護士ナビ.”エンディングノートと遺言書の違い5つ”(参照 2020-3-20)

この記事を書いたのは

看護師FP:しまづ 看護師として働く中で、お金の知識がないと時に自分や大切な家族の生活を脅かすことを実感し、ファイナンシャルプランナーの資格も取得。みなさんのお財布の健康を守るお手伝いをさせていただきます!

イラスト・まえかわしお

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