• 公開日: 2020/4/13
  • 更新日: 2020/5/18

医療費40兆円の時代に看護師に求められる役割とは?

    国全体の医療費が年々増加しており、問題視されています。 医療の問題と経済は切り離して考えることができません。なぜなら、医療を提供するためには医療資源が必要となり、医療資源は税金によって調達されるからです。

    看護師も医療費を意識し、求められる役割を把握して働き医療費問題の解決に取り組まなければなりません。今回は医療費問題に関して説明していきます。

     

    日本の医療費の推移

    日本の医療費は右肩上がりに増加しており、既に40兆円を突破*1しています。 さらに団塊世代が後期高齢者になる2025年には医療費が54兆円に達するという試算*2です。 医療費高騰の主な原因は高齢化と医療技術の進歩といわれています。*3 これに対してできることは、いかに高齢者の健康寿命を延伸し、医療への依存度を下げるか、がポイントだと言われています。

     

    日本の医療の在り方に世界が注目している

    医療費の高騰が問題視され、財政が危機的状況にある日本ですが、G7諸国間(日本、英国、米国、イタリア、カナダ、ドイツ、フランス)で比較すると、意外にも日本の医療費は低水準に抑えられています。*4 日本が最も高齢化率が高いにもかかわらず、です。またGDPに占める医療費も約8%で、これも他国と比較すると低水準と言えます。

    日本は世界で最も質の高い医療を提供している国の一つでありながら、最も高齢化が進んでいる国です。世界に例を見ない超高齢化社会に突入しようとする日本の医療の在り方に、世界が注目しています。世界に先駆けた社会保障・医療の在り方の模範となれる可能性も考えられます。

     

    医療費適正化のために看護師に求められる役割

    医療費適正化のためには看護師を始めとした医療者の地道な努力が欠かせません。

    医療費の18.1%を占める薬局調剤の分野では、多種類の薬を内服することでかえって健康障害を招いている状態である“ポリファーマシー”が問題視されています。特に高齢者は消化吸収や代謝機能が低下しているため若年者よりも副作用リスクが高まります。減薬への取り組みは医療費の適正化だけでなく、内服薬の副作用リスクを下げる効果が期待できるかもしれません。

    こうした減薬への取り組みには、患者の生活に寄り添った観察と適切なフォローが必要です。看護師は患者のADLや生活環境、症状などを医師や薬剤師へフィードバックする役割が求められます。また、ジェネリック医薬品も薬局調剤費の抑制に期待が持てそうです。看護師もしっかりと概要を理解し活用を促せるようになりましょう。

    セルフメディケーション税制も医療費の適正化に期待が持たれています。 セルフメディケーション税制は医療費控除の特例で、健康増進に努める人が医薬品代を所得控除できる制度です。

    健康寿命延伸のためにはセルフメディケーションが欠かせません。健康状態が良く、歩行時間が長い人は生涯医療費が少ないといわれています。*5 また、健康状態を維持できれば労働による経済活動も行うことができます。病気になり入院・通院する患者が、治療で終わることなく、セルフケアにも取り組めるように看護師が関わっていく必要があります。

     

    地域包括ケアシステムに寄せられる期待

    国は医療資源の適正化のために従来の「病院完結型医療モデル」から「地域包括ケアシステム」へ舵を切りました。

    地域包括ケアシステムは、高齢者の住まいを中心とし、医療・介護・生活支援・介護予防が必要時に30分以内に移動できる場所に設置され、病院で過ごすのではなく住み慣れた地域で過ごすことを目標としています。これを実現させるためには、医療と介護の連携が欠かせません。地域包括ケアシステムにおける看護師は、「医療」と「生活」を合わせた視点を持つ重要な職業です。

    病院で働く看護師は、患者を家に帰すことを前提とした関わりをより一層求められます。退院調整時における多職種への情報提供、在宅復帰に向けた患者サポートといった役割です。地域で活動する看護師に求められるのは、高齢者を地域と連携させる役割です。常に予防的な視点を持ち、高齢者ができる限り地域でその人らしく暮らすことを支援します。高齢者をさまざまな角度からアセスメントし、必要に応じて介入したり他職種への援助を求めたりすることも看護師の役割です。

    今後の動向に注目し、看護師に求められる役割を理解しておきましょう。

     

    参考文献

    *1 厚生労働省.”平成29年度 国民医療費の概況”(参照 2020-2-25)
    *2 経済産業省.”「健康経営銘柄2018」及び「健康経営優良法人(大規模法人)2018」に向けて”(参照 2020-2-25)
    *3 康永 秀生.健康の経済学.新版.中央経済社.2018年.6p
    *4 厚生労働省.”医療保障制度に関する国際関係資料について”(参照 2020-2-25)
    *5 経済産業省.”予防・健康づくりの意義と課題”(参照 2020-2-25)

    この記事を書いたのは

    看護師FP:しまづ 看護師として働く中で、お金の知識がないと時に自分や大切な家族の生活を脅かすことを実感し、ファイナンシャルプランナーの資格も取得。みなさんのお財布の健康を守るお手伝いをさせていただきます!

    イラスト・まえかわしお

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