• 公開日: 2019/11/18
  • 更新日: 2020/1/15

みんなどのくらい残業してる?看護師の勤務時間の実態

看護師をしていると、残業は当たり前という感覚になってきます。看護師の仕事は24時間体制の過酷な業務です。ここに時間外労働が発生すると、その負担によって心身の健康を害する可能性があるため、改善を図ることが必要です。今回は、看護師の勤務時間の実態と時間外労働を防ぐための対策について考えます。

 

看護師のほとんどは時間外労働を経験、そこに潜むリスクとは

看護師の勤務時間に関して、厚生労働省・看護協会・日本医療労働組合連合会などの機関が実態調査を行っています。その結果をみると、過重勤務とそれによる心身の不調を抱える看護師が多く、過労死の危険ゾーンにいる看護師も多数であることがわかりました。

看護師の勤務時間の状況

労働基準法では、1週間の労働時間は40時間以内、時間外労働の上限は、原則として月に45時間と定められています。時間外労働の上限時間に「原則として」と書かれているのは、やむを得ない状況であれば臨時的に月100時間までの時間外労働を認めるためなのです。

看護師は交代勤務なので、1ヶ月の勤務時間の合計が週40時間を超えないようにシフトが組まれているはずですが、現在、看護師の約9割は時間外労働をしている*1 といわれています。1ヶ月の時間外労働の平均をみると、「10時間未満」が約35%、「10~20時間」が約15%、「20~30時間」が約9%*2 であり、後にご紹介する過労死ラインである「60時間以上」が0.8%*1 となっています。

看護師の過労死ラインは残業「60時間」

「過労死ライン」とは、労働が原因となって病気や死亡・自殺に至るリスクが高まる労働時間のことです。法律上は、時間外労働が「発症前1ヶ月に100時間」または「発症前2~6ヶ月間の平均が80時間以上」とされています。

ですが、看護師は非常に過酷な労働であるため、労働時間が過労死ラインに達していなくても、過労死のリスクが十分にあります。実際に、2008年にくも膜下出血で死亡した看護師は、1ヶ月の時間外労働は50~60時間でしたが、交代勤務の過重性が加味されて公務災害(公務員の労災)認定がされました。このことから、看護師では過労死ラインが60時間と考えられています。

そして、看護師の約7割が慢性疲労を感じており、時間外労働が多い人ほど過労死のリスクが高い*1 ことがわかっています。疲労とそれによる心身のストレスは様々な疾患の原因となるため、時間外労働が健康を損ねることにつながるのは明らかです。

サービス残業は違法!

看護師の時間外労働に関しては、サービス残業が多いことも問題視されています。看護師の約7割がサービス残業をしている*1 といわれており、筆者も説明なく師長に時間外労働の申告時間を削られたことがあります。ですが、サービス残業は違法です。その上、サービス残業をしてしまうと、労働に必要な対価を得られないというだけではなく、時間外労働が多いという実態を隠されてしまいます。労働環境を改善していくためにも、正確な時間外労働の記録を残し、手当の未払いを防ぐことが大切です。

 

健康とワークライフバランスを守るために残業を減らそう

時間外労働が減れば、心身の健康を維持しやすく、余暇や家族との時間を確保しやすくなります。また、しっかりと休息を取れれば、医療事故の予防にもつながります。ぜひ、残業をなくすための努力を諦めないでほしいと思います。

参考・引用文献

*1『医療労働 看護職員の労働実態調査「報告書」』(日本医療労働組合連合会、2017年9月)
*2『平成30年版過労死等防止対策白書 第4章 過労死等をめぐる調査・分析結果』(厚生労働省)

この記事を書いたのは

美沢 藍 総合病院看護師・大学院進学・看護大学教員を経て、現在は育児をしながらライターとして活動中です。いくつかのジョブチェンジを経験して感じているのは、看護師としての働き方には様々な選択肢があることと、自分に合った道を追求する大切さ。

イラスト・まえかわしお

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