先輩や師長・主任から「これってパワハラでは?」と感じてしまうような指導や教育を受けたことはありませんか?パワハラとは職場での上下関係や知識、経験などで優位な立場を利用して精神的または身体的な苦痛を与えることです。今回は、看護師のパワハラ事情とその対処方法について、考えていきます。
実際にあるパワハラ事例
そもそも、看護師はパワハラが多い職場なのでしょうか?まずは実際にあるパワハラ事例について、ご紹介しましょう。
「なぜあなたみたいな人が看護師になったの?」
新人時代や経験が浅い看護師の場合、日々頑張っていても先輩看護師に比べるとまだまだ未熟な部分があるのは仕方が無いことです。
そういった部分に対し、それぞれ足りない部分を指導することは当然ですが、それに加えて「なぜあなたみたいな人が看護師になったの?」という、人格否定やその人が看護師としてふさわしくない、というような言い方をしている場合、それは「先輩看護師」という立場からの精神的な攻撃となり、パワハラといえます。
挨拶をしても無視、一人だけ会話に入れない雰囲気をつくる
挨拶は人として基本的なことです。挨拶をして返答がなく、「あれ?聞こえなかったのかな?」と思おうとしても、他の人が挨拶すると笑顔で返答しているのを見てしまい、「あぁ、やっぱり私にだけ挨拶しなかったんだ」と思うのは、精神的なダメージはとても大きくなります。
出勤して先輩へ「おはようございます」と挨拶しても、特定の人物のみ無視をする。特定の人だけ会話に入れない雰囲気をつくり、会話に入れさせない。こういったことも、職場の人間関係から特定の人を切り離しているため、パワハラのひとつといえます。
「こんなことまで先輩にやらせる気?」
筆者が新人だった10年以上前は、「掃除やゴミ捨ては新人の役目」というように、新人が美化を「自発的に」行うことが良い、としている職場が多くありました。
その感覚を今でも引きずってしまい、病棟で美化担当の係になっているにもかかわらず、「こんなことまで先輩にやらせるなんて」「後輩なのに、こんなことも気がつかないの?」などの発言、「後輩は先輩に気を遣って当然」というような言い方も、チームの一員というよりも、勝手に立場の上下をつけてしまっており、パワハラといえるでしょう。
パワハラをなくすために必要なこと
パワハラを受けている後輩はもちろんのこと、先輩として働く方の中には、「意識していなくても、パワハラしていると言われてしまう」と悩んでいる方がいるかと思います。そこで、パワハラを無くすために病棟全体でどう取り組んでいけば良いか、考えてみます。
何がパワハラにあたるのか、定期的に研修会を開く
パワハラの問題点として、「何がパワハラにあたるのか、パワハラをしている側が気づいていないことがある」という点があげられます。
「自分も新人時代こういった指導を受けていたから」「新人のためを思い、厳しく指導することが良いと思うから」など、あくまで本人は「指導」しているにも関わらず、結果としてパワハラになってしまっているケースもあります。そこで、何がパワハラにあたるのか、定期的に研修会を開くことで、「これもパワハラにあたるのか」と本人に気づいてもらうことが大切です。
解決方法は、一人ではなく集団で模索する
パワハラは、受けた側が「これってパワハラでは?」と感じることから始まります。そのため、パワハラが起ってしまった場合はまず一人ではなく、集団で解決方法を模索することが大切です。
一人だけで解決しようとすると、自分の主観でしか動けないため、必ず第三者の客観的な目線でみてもそれはパワハラなのかを確認すること、それがパワハラを受ける側はもちろんのこと、パワハラをしてしまうかもしれないと不安なベテラン看護師さんを守ることにもつながります。
後輩からもどんどん先輩へ積極的にコミュニケーションをとっていく
先輩が後輩へ積極的にコミュニケーションをとることはもちろんのこと、後輩もまた先輩たちへ積極的にコミュニケーションをとることが大切です。挨拶や情報共有はもちろんのこと、仕事中でも同期同士など話しかけやすい方だけに集中せず、あえて先輩へ後輩側から話しかけると、先輩もより話しかけやすくなり、お互いのコミュニケーションがとりやすくなります。
先輩からは「パワハラになっちゃうかも」「私から声をかけると緊張しちゃうかもしれない」と、声をかけにくいケースがあります。だからこそ、ぜひ後輩側からも積極的にコミュニケーションをとることを心がけていただけたらと思います。
様々な世代・タイプがいる看護師の職場だからこそ
看護師は幅広い世代や様々なタイプの方がいるため、先輩は全くその意識がなくても、後輩がパワハラだと感じてしまう可能性は否定できません。パワハラを受けていると感じたら、まずは周囲へ勇気を出して相談してみてください。それが結果として、職場からパワハラをなくし、職場を改善する行動につながるはずです。
この記事を書いたのは
山村 真子 看護師として働きながら、ライターの仕事もしている、アラフォーママナース。看護系以外にも、育児や病気、介護など幅広い分野の執筆を行っています。時短勤務中だが、毎日定時に帰れるはずもなく、保育園の送迎はいつもギリギリなのが最近の悩み。
イラスト・BUFFALO-PEKO