リサーチ・インタビュー
  • 公開日: 2018/5/21
  • 更新日: 2018/12/13

~NURSE FES TOKYO運営委員の落合がゆく~ 「看護師・随筆家」宮子あずささんインタビュー

看護師や随筆家など多様な働き方をしているだけでなく、「看護の臨床」と「学ぶこと」を両立し続けてきた宮子さん。彼女はどのような価値観を持ち、これまでずっと臨床に居続けたのでしょうか。NURSE FES TOKYO2018実行委員の落合が、宮子さんの「これまでの働き方」についてお話を伺ってきました。

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イキイキとされた表情が印象的な、宮子さん。

 

一生稼いで食べていく。選んだ仕事が看護師でした

「これまで『働かない人生』という選択は考えられなかった」という程、長く臨床の現場にいる宮子さん。その価値観には、母親の存在が大きく影響しています。宮子さんの母親は「女に学問はいらない」と言われた昭和初期の時代に、周囲の反対に挫けず自身の力で大学を卒業、フリーの作家や評論家として活躍しました。宮子さんもまた、母親の影響を強く受け、高校卒業後は大学に進学しました。しかし、大学に通い始めてから、大学の偏差値で人生が決まる学歴社会への疑問がふつふつと沸いてきたといいます。また、女子大生の就職難など当時の時代背景の影響もあり、結局入学した大学を1年半で退学、その後、都内の看護専門学校に入学しました。

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看護学生時代の宮子さん。バイク通学をされていたそうです。

「助産師の知人がいたため、“女性が一生食べていける仕事”として、看護師はすぐ思いつきました。看護という選択は、当時の時代背景や私自身の価値観とも合っていました。今でも、看護師か作家かを選べと言われれば、看護師を選ぶと思います。」

 

リアリティショックを受けながら、上司や同僚に支えられた新人時代

看護師になった宮子さんは、新人時代に2度のリアリティショックを経験したといいます。

一つ目は、実際の現場では、学生時代には想像ができなかったような人間の「負の面」を目の当たりにすることも多かったこと。大変な状況下にある患者さん・そのご家族は余裕がないことも多く、そんな現場で目にする場面は、新人看護師の宮子さんにとってショックなことも多かったといいます。

二つ目のリアリティショックは、看護師として成長し出来ることが増えていくほど、逆に出来ないこと/どうしようもないことも多くあることを強く感じるようになったこと。どんなに自身が看護師として成長しても、どんなに病院の環境改善が進んでも、患者さんが亡くなってしまうときは、亡くなってしまう。どうしようもなく変えることができない事がある、ということに直面するたび、とても辛かったそうです。

宮子さんは、このようなリアリティショックを乗り越えることが出来たのは、「周囲の人に恵まれていたから」と教えてくださいました。「新人看護師時代は、初めてのことにもたくさん直面し、たくさん悩みました。辛いときも、親身に相談に乗ってくれる上司や同僚が支えてくれたから、続けられた気がします。」

 

看護以外の世界から、看護を見つめることで見つけた視点

そんな新人看護師だった宮子さんにとって、一つの転換点になったのが、武蔵野美術大学短期大学部への入学だったそうです。二つ目のリアリティショックの頃、上司に看護研修学校に行ってみるのはどうか?と勧められた宮子さんは、確かに今の自分にとって“学ぶ”ということが必要かもしれない、何か見えてくるものがあるかもしれないと思ったそうです。結局、勧められた看護研修学校ではなく、武蔵野美術大学短期大学部への入学を決め、“看護以外の学び”や、多くの“学ぶ人々”に触れる経験を選びます。

看護以外の世界に触れることで、自身の引き出しが豊かになり、思考の転換があった、と宮子さんは語ります。「進学前は、看護職としてどんなに頑張っても、報われないと感じることが辛かったんです。背中を5分擦って感謝する患者さんもいるけど、30分擦っても罵倒する患者さんもいらっしゃいますよね。看護って、頑張った分だけ結果が出る世界ではないと今は思いますが、新人だった当時は、頑張れば結果が出る世界だと勘違いしていたと思います。『できる事』をずっと考えていましたが、進学をして『分かること』が大事だと実感しました。出来る・出来ないは結果、分かる・分からないは経過。進学により経過を大事にする価値観に変わりました。」

この時の経験から、宮子さんはその後も、「看護の臨床」と「学ぶこと」の両方を継続しながら、看護師キャリアを築かれてゆきます。

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博士号を取得されたときの一枚。

 

看護が、働き続けるための仕事から、面白い仕事に変わった

はじめは、生きがいや仕事のやりがいというより、働き続けるための仕事としてしか看護を考えてなかったという宮子さん。しかし、今では違うといいます。

「看護は『えー!?』とビックリするような体験が、よくあります。良い事・悪い事、どちらも色々ありますが、どれもなかなか味わえない貴重な体験です。私を必要としてくれる患者さん、私との関わりで変化していかれた患者さんもいます。そういう関りや出来事を通して、私自身も新たな気づきがあります。どれも全部、面白いですよね。」
看護は、面白い。宮子さんは、今後も長く看護を続けていこうと思っている、と教えてくださいました。

 

おわりに

インタビューの中で、宮子さんは「看護は人生観や人間観が反映されるもの。自身の生い立ちや経験があって、いろいろ考えて、そして今、看護は面白いと思えています。また、自分自身のことを誰かに話すと、そこから新たな気づきが生まれたりすることもあると思います。」と話していました。看護や働き方について悩んでいる方がいれば是非、ナースフェス東京2018にお越しください。宮子さんもご登壇される基調講演以外にも、沢山のセミナー・セッションや、職場以外の看護師とも繋がれるような企画を準備しています。ご登壇される方々始め、参加者全員で、様々な人生観や人間観、看護観に触れ合える機会にしましょう。

落合実

インタビュアー&ライティング
落合 実
NURSE FES TOKYO2018(ナースフェス東京2018)実行委員
(緩和ケア認定看護師/WyL株式会社取締役)

 

●ナースフェス東京2018●

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ナースフェス東京2018
2018.5.27 Sun~28 Mon
@ベルサール渋谷ガーデン

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