看護や臨床の世界で関心度が高まるメディカルハーブとアロマセラピー。医薬品には、古来より植物療法として用いられてきた成分を単離・合成したものが多くあります。現代においても自然に近い形で植物を取り入れていくことで、身体への負担の少ない緩やかな働きかけが期待されています。
医療の現場では、補完・代替療法として在宅医療、介護に。また病棟でも緩和ケアの場面などで活用されてきています。
本連載では、メンタル面も肉体的にもハードな仕事をもつナースのみなさんの体調管理に、また心身の不調に合ったハーブ・アロマのセルフケアの活用法についてご紹介します。
夏の気配が感じられる季節になりました。春の気持ちよい暖かさから気温が上昇していくなかで「やる気が起こらない」「最近眠れない」「なんだかイライラする」など、季節の変化とともに体調の変化が起きていませんか。
5月〜6月に起こりやすい体調の変化
・やる気が出ない
・イライラする
・憂鬱になる
・焦りや不安を感じる
・眠ることが難しい など
5月から6月にかけては身体の力が抜けやすく、いわゆる「五月病」になりやすい時期。これらの心身の不調は、仕事をこなすうえで悩ましいことかもしれません。今回は、そんなときに気分を上げてくれるおすすめのハーブとアロマをご紹介します。
気分をアップしたいときにおすすめのハーブ
ローズ(Rosa gallica)
“花の女王”や“女性のためのハーブ”といわれるローズ。古代エジプトの女王クレオパトラや英国ダイアナ元妃も愛用していた歴史があります。女性の不安や悲嘆などを和らげて気分を高めてくれるような優雅な香りです。
ジャスミン(Jasminum officinale)
ジャスミンの花が夜に香りを放つ特徴があることから、“香りの王”や“夜の女王”といわれます。夜の気分低下にハーブティーを飲んでリラックスしましょう。エキゾチックで濃厚な甘い香りは、アロママッサージ・芳香浴などにも適しています。
バジル(Ocimum basilicum)
インドでは神にささげる神聖な植物として崇められてきたバジル。消化促進の働きからピザ、パスタ、ドレッシングなど、古来さまざまな料理に用いられています。気分転換をしたいときに、スパイシーなバジルの香りでリフレッシュしましょう。
レモングラス(Cymbopogon citratus)
歴史はかなり古く、インドでは数千年前から人々が好んで使い栽培してきたといわれるポピュラーなハーブ。ハーブティーは甘味があって飲みやすく、レモンのような爽やかな香りが愉しめます。脳の疲れをリフレッシュしたいときにおすすめです。
【欧米の精神科などで処方されているハーブ】
欧米では、気分アップに関する医薬品として処方されているものにセントジョーンズワート(欧米では「サンシャイン・サプリメント」とも呼ばれる)や、パッションフラワー(米国の先住民族が「自然の精神安定剤」として使用していた歴史がある)などがあります。とくにセントジョーンズワートを含有する製品については、摂取することにより薬物代謝酵素が誘導され、インジナビル(抗HIV薬)、ジゴキシン(強心薬)、シクロスポリン(免疫抑制薬)、テオフィリン(気管支拡張薬)、ワルファリン(血液凝固防止薬)、経口避妊薬の効果が減少することが報告されています※1。日本では医薬品として扱われていませんが、なんらかの薬剤を服薬中にこれらのハーブを使用する場合は、医師の指示を仰いでください(第6回「ストレスの緩和に働くハーブ&アロマ」)。