看護や臨床の世界で関心度が高まるメディカルハーブとアロマセラピー。医薬品には、古来より植物療法として用いられてきた成分を精製したものが多くあります。現代においても自然に近い形で植物を取り入れていくことで、身体への負担の少ない緩やかな働きかけが期待されています。
医療の現場では、補完・代替療法として在宅医療、介護に。また病棟でも緩和ケアの場面などで活用されてきています。
本連載では、メンタル面も肉体的にもハードな仕事をもつナースのみなさんの体調管理に、また心身の不調に合ったハーブ・アロマのセルフケアの活用法についてご紹介します。
ハーブ・アロマと聞くと、どんなイメージを持たれますか。
おしゃれなもの?高価なもの?美容で使用されるもの?……さまざまなイメージがあると思います。それもそのはず、日本には美容(エステ)として、アロマセラピーが入ってきた大きな理由があります。
「英国からの自然派美容マッサージ」という形で、日本にアロマセラピーが輸入されたのは1980年代のこと1)。以来、リラクゼーションサロン等でアロマによる施術や施術後にハーブティーもよく出されるようになりました。またハーブ・アロマを普段の生活に取り入れている方も多いのではないでしょうか。
ここで歴史を紐解いていくと、植物は欧米または日本でも古代から医療の中で活用されてきているのです。そこで第1回目はハーブ・アロマのルーツ、植物療法が主流であった医療の歴史から解説していきましょう。
植物療法を活用してきた医療の歴史
太古の時代、人々は病気やけがなどの対処に、身近な薬草や祈りによって自らを癒していました。欧米では、紀元前2,000~1,000年頃にアーユルヴェーダ医学・中国医学・ユナニ医学が始まり、その後、紀元前460~377年に古代ギリシャの医師ヒポクラテスが治療体系を確立。267種類におよぶ薬草を使用した治療を行いました。
中世の修道院医学時代では、ドイツの女子修道院長であるヒルデガルトが、さまざまな薬草を用いて人々の病を癒しました。伝統的な植物療法による治療が、長い間医療の中心を占めていたのです。
薬草または薬用植物(medicinal plant)は、現在では香りや薬効がある有用植物全般を総称する「ハーブ(herb)」の呼び名が一般的になりました。
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