• 公開日: 2014/1/7
  • 更新日: 2020/4/1

【連載】宇田川 廣美の「ちょっと社会を見渡してみました」

【エボラ出血熱】医療者の過重労働で流行に拍車

深刻なエボラ出血熱の状況

西アフリカで猛威を振るっているエボラ出血熱。8月11日までの患者数は1975人、死亡者は1069人となりました(表1)。現地では、感染を恐れて、軽く肘と肘を合わせるという挨拶を握手に代えているそうです。

エボラ出血熱による患者数および死亡者数

表1 エボラ出血熱による患者数および死亡者数(2014年8月11日時点のWHO発表データ)

患者数減少の兆しは見えず、世界保健機関(WHO)は8月14日に「感染規模は正確に把握しきれてなく、実際はより深刻な恐れがある」との見解を示し、世界に対して「一層の支援強化」を促す声明を発表しました。

また、現地で医療支援を行っている国境なき医師団(MSF)のジョアン・リュー会長は、「対処する以上の早さで感染拡大が進んでいる」と懸念を示し、封じ込めるまでには約6カ月はかかると発表しました。

医療者の過重労働が流行にさらに拍車を!!

こうした流行をくい止めようと医療者たちも必死に頑張っていますが、医療者自身もエボラ出血熱の犠牲になってしまっています。

ナイジェリアでは看護師が1人死亡し、5人の病院職員に感染が確認されています。リベリアでは、エボラ出血熱による死亡者の15%は職場で感染した医師や看護師で、シエラレオネでも死亡者の10%近くが病院職員でした。これによって、治療現場では長時間労働が常態化し、そのことが流行に拍車をかけています。

「カトリック救援事業会」広報担当者であるマイケル・スタルマン氏は、「医療関係者は長時間労働を迫られ、残業手当も危険手当もつかない劣悪な状況で働いている。そして、多数の重篤なエボラ出血熱患者に対応するストレスがミスの余地を生み、ウイルス拡大を許している」と指摘。この構図は日本でも医療過誤やインシデント発生の重大な背景となっていますが、西アフリカの事態はより深刻です。

日本政府は150万ドル(約1億5400万円)の緊急無償資金協力を行い、WHOと国連児童基金(ユニセフ)、国際赤十字赤新月社連盟を通じて、検査や感染予防、医薬品の調達に役立てられるそうです。

また、日本赤十字社や日本ユニセフ協会などの団体では募金活動を行っています。私たちも、それぞれの立場でできることを探し、同じ医療・看護の現場で活動する仲間の安全と終息に向けた取り組みを応援していきたいと感じています。

『西アフリカにおけるエボラ出血熱の発生状況について』厚生労働省検疫所 FORTH 海外で健康に過ごすために
http://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/2014/08141019.html
『エボラ熱に倒れる医師・看護師―リベリアでは死者の15%』THE WALL STREET JOURNAL
http://jp.wsj.com/news/articles/SB10001424052702303570604580076533228614458

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