残業代ゼロ? 気になるその内容
「残業手当がなくなる」と報じられている「ホワイトカラー・エグゼンプション」。ナースは、ただでさえサービス残業が多いので、動向が気になっている方も多いのではないでしょうか。
残業代については、「法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えた場合に、超過分を割増賃金で支払うこと」が、労働基準法で義務付けられています。
しかし、こうした規制を外して成果によって賃金を決める「裁量労働制」という働き方もあります。
この裁量労働制を、俗にホワイトカラーと呼ばれる事務系の人にも導入しようというのが「ホワイトカラー・エグゼンプション」です。
政府はその対象範囲を「年収1000万円以上の給与所得者」とする方向で関係閣僚と合意し、さらなる調整に入りました※1。
※1 共同通信『【残業代ゼロ制度導入】対象拡大の懸念根強く働き過ぎの歯止め見えず』
成果主義の規制緩和に危機感
「年収1000万円以上なら関係ない」なんて思わないでください。
たとえば、「労働者派遣制度」は、規制緩和を繰り返し、今国会では全業種で無期限に派遣を継続できる内容になりました。
今回の「ホワイトカラー・エグゼンプション」も、成果主義を背景に徐々に規制緩和が拡大していき、いずれは自分たちにも及ぶのではないかと巷の人たちも危機感を抱いています。
実際、政府は裁量労働制の対象職種拡大にも踏み切る予定だそうです(下図)。
図 新しい労働時間制度のイメージ
http://www.47news.jp/47topics/e/254362.phpから引用
こうした動きには、「労働時間の長短に関わらず、仕事の成果に応じて給与が支払われる仕組み」に変える狙いがある、と読む人もいます※2。
賃金だけでなく長時間労働も助長されて、過労死やうつ病、労働災害などが増加するのではないかと危惧されているのです。
※2 ナースの転職知恵袋『残業代ゼロ時代が来る!?』
http://column.nursejinzaibank.com/detail/6492
看護記録を看護成果のためのデータベースに!
成果主義社会において、ナースの成果を示すものはなんでしょう?
医療現場では、QI(Quality Indicator:医療の質指標)活動として、医療の質の「見える化」が行われています※3。
看護においても同様の取り組みを進めているところもあります※4。いずれも具体的な指標に沿って客観的なデータ(=成果)を抽出・評価し、次の医療や看護の改善を目的としています。
※3 福井次矢監修『Quality Indicator2010 聖路加国際病院の先端的試み[医療の質]を測り改善する』、2010年、インターメディカ
※4 聖隷浜松病院 看護指標 Nursing Indicator―看護の質向上を目指して―
http://www.seirei.or.jp/hamamatsu/hama/guide/nursing_indicator/Outside_hospital/2012/default.html
同時に医療者自身の働きやすい環境を守るため、独自の指標を立ててその成果を示してアピールしていくことが、これからの社会に向けて重要と思われます。
例えば、「コントロールナース介入後の外来待ち時間の変化」とか、「手術ムンテラにナースのフォローを加えた場合のパス達成率」など。
こういった指標のデータは、日々の看護実践とその記録に埋蔵されています。看護記録は看護の成果を導き出す大切なデータベースなのです。
このことを念頭に置いて日々の記録を行うことは、近い将来、ナース自身の働く環境を守ることに役立つかもしれません。