みなさんは、海外の看護師事情を覗いてみたいと思ったことはありませんか? 日本と海外の看護の違いに興味がある、海外で活躍する看護師をめざしたいという人は少なくないようです。そこで、自身の経験と調査をもとに、アメリカの医療や看護師に関するトピックをお伝えします!
州によって異なる法律
今回は、受け持ち患者数のおはなしです。
はじめに、アメリカの法律に少し触れましょう。
アメリカは51州それぞれに州法があります。看護師免許も、日本のような国家資格ではなく、州ごとにある看護審議会から発行される州の免許です。看護師資格条件やテストの難易度も州によってバラバラです。そして、これからおはなしする「受け持ち患者数」も例外ではありません。
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“受け持ち患者は4人”が基本
2004年、カリフォルニア州は、全米に先駆け一般病棟での看護師:患者比率を1:5とする法改正が施行されました。現在では1:4の比率が基本となっています。
これは、365日昼夜問わず常にこの比率です。
例えば、24床の一般病棟フロアには、6名の看護師、2名以上の看護助手、クラーク、そしてチャージナース(病棟責任者)計10名以上が、24時間常に病棟に配置されています。
このように看護師の数を増やすことで、米国保健福祉省は、適切な看護師の仕事量を確保したことで得られたという研究結果を以下のようにまとめました。
- 入院患者の入院日数が短縮(ICU滞在が24%、手術後の入院日数が31%短縮と報告)
- 患者死亡率、合併症、医療事故が低下
- 看護師の仕事満足度が向上、バーンアウト(燃え尽き症候群)・離職率が低下(受け持ち患者がひとり増えることで、看護師のバーンアウトが23%増加、仕事への満足度が15%低下するそうです)
適切な看護師の仕事量は、患者予後の改善 ・ 看護師の満足度向上をもたらす、という結果のようです。
しかし、看護師患者比率を法律化しているのは、2014年現在、アメリカ全土51州中13州のみです。その他の州は、経営上の問題や看護師確保の問題などから、看護師患者比率の最低基準の義務化を先送りしています。
看護師患者比率は部署ごとに異なります。カリフォルニアの看護師患者比率と今後National Nurses United(米国看護組合)が、さらにめざしている比率をまとめました。
日本では、「夜勤は日勤より業務量が少ないから、受け持ち患者は多くても問題ない」という概念が定着していますよね。夜勤は、看護師の人数が極端に削減され、受け持ち患者が倍増する労働環境が常態化している日本からすると、うらやましい限りの労働環境ではないでしょうか。
次回は、「給与」のおはなしです。