リサーチ・インタビュー
  • 公開日: 2021/6/16

【連載】特集!産業看護職の仕事

【インタビュー】ライフスタイルに合わせ“遠隔”を生かして働く

「ナース専科」を運営するエス・エム・エスでも、たくさんの産業看護職が多くの企業のために働いています。そこで今回は、エス・エム・エスの産業看護職の方に、実際にはどんな様子で働いているのかインタビューを行いました!

 

お話

眞坂好美さん
株式会社エス・エム・エス ヘルスケア事業部・健康推進室


 

これまでの経歴を教えてください


 秋田県出身です。岩手県立大学の看護学部を卒業後に上京し、東京都内の大学病院に6年間勤務しました。その間に結婚し、夫の海外勤務が決まったのを機に退職。2019年10月からベトナムのホーチミン市に住むことになりました。

 

どうして産業看護職になったのですか?

 退職したことで、このまま自分のなかでキャリアが止まってしまうのは嫌でした。ナースとしての自分が薄れてしまうという気持ちもありました。ですから、ベトナムでも何か看護に役立つ勉強をしようと考えていたとき、かつて勤務していた大学病院の先輩から株式会社エス・エム・エス(以下、SMS)の『リモート産業保健』に携わる産業看護職を募集していることを聞いたのです。

 それが産業看護職との出合いでした。そして、大学病院を退職してから半年後、産業看護職としての仕事を始めました。


ホーチミンでのお気に入り、よく訪れるというカフェや雑貨店


 

産業看護職に関心はあったのですか?

 もちろん産業看護職の存在は知っていましたが、普段から求人募集は少なく、自分がその職に就くとは思っていませんでした。でも先輩の話を聞いて、新しいかたちによる産業看護職の働き方があることに驚き、さらに、日本にいなくてもリモートで看護の仕事ができるということにとても魅力を感じました。

 

現在はどのように仕事をしているのですか?

 今は4つの企業様を担当しています。衛生委員会への参加と衛生講話の実施が中心で、まだ件数は少ないのですが面談も行っています。

 各企業様には、定期的にリモートによるサポートを実施しています。企業様に在籍する衛生管理者や労務担当者などの方々とともに衛生委員会に出席し、労働災害の有無や時間外労働時間の状況など衛生にかかわる調査審議事項等を確認し、必要であれば説明や話し合いを行うこともあります。

 その後に衛生講話を行います。衛生講話とは、従業員の健康や衛生管理のため短い時間で行う教育研修のこと。テーマについては、それぞれの企業様の希望に応じて、事前に年間スケジュールを決めておくこともあれば、毎月の日程調整の際にご提案する場合もあります。内容は企業様と相談しながら決めていきますが、産業看護職として、業種や労働環境、従業員の年齢層、健康診断やストレスチェックといった企業内の行事などを考慮して、行う季節・時期に合った提案ができるよう心がけています。

 リモートによる衛生委員会のほか、企業様とはテキストでのコミュニケーションを図っています。委員会の開催日程の調整や衛生講話のテーマ決め、面談希望者に関する連絡などについて、日常的にやりとりをしています。


 

衛生講話で使う研修資料を作成中


 

産業看護職として働いてみてどのように感じていますか?

 企業様とかかわるようになって、人と人とのコミュニケーションが人間関係を築いていくことを実感しています。そしてその過程に面白味を見出すようになってきました。一方で、産業看護職の仕事ではコミュニケーションが重要だということを強く認識するようにもなりました。

 また、面談を実施するときには、これまでの臨床経験で培った傾聴や共感のスキルが役立っていると感じています。病棟で患者さんとかかわる際に常に意識して行ってきたことが、産業保健の現場でも生かすことができることが喜びになっています。

 

不便に感じたり苦労したりしたことはありますか?

 一言でコミュニケーションといっても、臨床現場と産業保健とでは違う側面があります。前者では医療的コミュニケーションが優先されますが、後者では社会人としてのコミュニケーションが前提になります。私自身、かつては会話のなかで「御社」「弊社」などの言葉は使ったことがなかったので、仕事を行うフィールドの違いに最初は緊張しましたね。でも、現在の働き方には時間的な余裕があります。ビジネスマナーやパソコンなども含め、慣れなかったことも、学びながら徐々に取得できていると思います。

 また、企業様による違いに難しさを感じている部分もあります。複数の企業様を担当しているので、それぞれの業種や組織体制、労働環境などによって産業保健に対する取り組み方は異なります。とても積極的なところもあれば、時間的に余裕がない様子がうかがえるところもあります。産業看護師として、これらをいかにしてくみ取り、どこまで踏み込んでいくか、バランスをうまく計れるよう努力しているところです。


時間に余裕があるところも「リモート産業保健」の魅力。写真は空き時間に通っている料理教室で習った料理


 

わからないとき、迷ったときはどうやって解決していますか?

 SMSの産業看護職にはプリセプターが付きますので、以前はプリセプターに聞いていました。現在は、その上の立場にあるリーダーナースに相談しています。

 私の場合、何かわからないことがあったら、まず疑問点を明確にすることから始めます。厚生労働省のサイトをチェックしたり、必要な資料を調べたりして、どういう点を質問したいのか、自分で解決できる部分はないのかを確かめ、なるべく端的に質問できるようにしています。

 また、企業様に何らかの文書・書類を提出しなければいけない場合も、それを仕上げた時点で、自己判断せずにリーダーナースにチェックしてもらうようにしています。法律や契約にかかわる内容も多いので、誤りがないよう万全を期すようにしています。

 

今後はどのように働きたいと思っていますか?

 日本に帰国してからも、産業看護職の仕事を続けていきたいと思っています。SMSの産業看護職にはダブルワークをしている人も多いので、できればそのかたちで看護職としてやっていきたいですね。産業看護職に就きながら、臨床現場に復職したり、あるいは今後に役立つ資格を取得したりなど、現在はいろいろな働き方をイメージしています。

 看護職の道を選んだのは「手に職をつけたほうがいい」という親の勧めからでした。いわゆる“熱い思いをもって”のような感じではありません(笑)。でも実際に看護に携わるようになってからは、患者さんにとって看護職は大きな存在であることを体感し、看護をもっともっと勉強したいと思うようになりました。

 特に、告知されたときや終末期など、精神的に不安定な状態にあるがんの患者さんに対するかかわりに関心をもっており、精神的なサポートができるようになりたいと考えています。そのために、今はカウンセリングなどメンタルケア関連について勉強し、資格を取得することが目標です。

 

産業看護職に関心をもっている人にメッセージをお願いします

 産業保健に携わるのがまったく初めてでも、SMSの産業看護職のようなスタイルであれば、勉強しながら成長できると思います。私自身がそうでしたから。リモート(テレビ電話)やパソコン操作に馴染めないという場合も、繰り返し体験するうちに慣れてきます。看護職の仕事に就いたときもそうではありませんでしたか。

 私の今の働き方であれば、幸い臨床現場よりは時間があるので、余裕をもって自己研鑽することができます。じっくりとキャリアを積んでいけると思います。ぜひチャレンジしてみてください。


自己研鑽のために用いていたという書籍や学習ツール








イラスト: イラストAC



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