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【連載】特集!産業看護職の仕事

なりたい! 産業看護職ってどんな仕事?

  • 公開日: 2021/6/16

 

企業で働く労働者の健康管理を担う産業看護職。夜勤がなく、土日祝日がお休みであり、デスクワークが多いという特徴があり、子育て中の看護師にとって人気が高いといわれる職種です。この連載では、産業看護職について詳しくご紹介していきます!

 

解説

石田菜摘さん
株式会社エス・エム・エス ヘルスケア事業部・健康推進室 産業保健師

保健師/看護師。年間300人以上の産業保健スタッフと関わり、さまざまな企業の従業員への健康管理をサポート。メンタル不調面談から産業看護職の採用・育成まで幅広く担当している。


 

産業看護職って何?

 産業看護職とは、企業が産業保健(産業医学を基礎に、働く人々の生きがいと労働の生産性の向上に寄与するための活動)を遂行できるよう、従業員の健康を心身両面から支援する看護職のことです。健康な人はより健康で、何らかの疾患や不調を抱える人はうまく付き合いながら、滞りなく働き続けられるようにしていきます。

 

どんな仕事なの?

 産業看護職は、企業の人事・労務部門に所属することが多く、健康推進室や健康管理室(保健室)など独立した部署がある場合はそこに所属します。

 仕事内容としては、健診を受けない人に対する介入、健診結果の取りまとめや集計データの管理、検査の数値が悪かった人のフォロー、産業医とのやりとりなど、主に健康診断(以下、健診)の前後に行うものが多くなります。健診が企業内の診療所で行われる場合には、さらにその補助が加わります。ほかには、メンタルヘルス対策、休職・復職者への対応、健康経営のサポートなども重要な仕事です。

 これらの仕事のなかで多くの時間を占めるのは「面談」です。健診結果の悪かった人に対する保健指導、何らかの不調を訴える人の経過観察と傾聴、復職者に対するフォローアップなど、さまざまな人との面談は、産業看護職の仕事の柱となっています。事務処理も少なくありませんが、企業によっては人事・労務部門で行われる場合もあります。

 

勤務体系は?

 正社員としてほかの従業員と同じ勤務条件のもとで働くケース、契約社員として週に数日働くケース、派遣社員として月に数回働くケースなどがあり、企業によって異なります。主に従業員数によって変わってきます。

 

臨床看護とはどこが違う?

 一般的に臨床看護職は何らかの疾患やケガなどを有する患者さんが対象です。一方、産業看護職は基本的に健康な人(従業員)を相手にします。患者さんの場合は疾患やケガの治療が目的ですから、自分の心身に関心をもっています。しかし、健康課題を感じていない人(従業員)は自身の心身よりも仕事や生活に関心を寄せています。このように支援の対象となる人が異なることになります。

 そのため、産業看護職の仕事は、心身に関心のない人にも健康に意識を向けてもらえるようアプローチすることから始まります。そういう意味では、従業員の方と常日頃関わり、心身の不調が生じないよう支援し、万一心身の不調が生じたとしてもご本人がその不調や健康課題と上手く付き合いながら働き続けられるようサポートする仕事といえるでしょう。近年ではメンタルヘルスケアを必要とする人が非常に増えており、体だけでなく心にも目を向けなければなりません。このような総体的なかかわりが、やりがいにつながる産業看護職が多いようです。

 

必要な知識・スキルはあるの?

 企業には、労働安全衛生法によって、従業員に対する定期的な各種健診の実施、健診結果に応じた健康保持に必要な措置の実施などが義務づけられています。同様に、これは労働契約法によっても労働者の安全への配慮を定める条文のなかに定められています。産業医の配置や安全衛生委員会の設置が企業の義務とされているのも、これら法律によるものです。このように、産業看護職が携わる仕事には法律がかかわってくることが多く、人事・労務担当者との連携においても、その知識は必要といえるでしょう。

 また、企業の一員として働くのですから、ある程度のビジネススキルが求められます。パソコンの操作や資料の作成などのほか、何よりも大切になるのがビジネスマナーです。正しい敬語、適切な電話応対、効率的なメール送信などを行えることが、人事・労務担当者や従業員との信頼関係の構築に結びつきます。

 

臨床での看護経験は役立てられるの?

 臨床での経験は十分に役立てられます。検査データを的確に読み取る力は、健診結果の理解と従業員の健康管理には欠かせません。また、何よりもその経験で培った対人関係スキルは重要です。看護職は、さまざまな年代やタイプの患者さん、多くの医療職や介護・福祉職などとかかわることで、コミュニケーションや傾聴のスキルを身につけています。このスキルは、人事・労務担当者との連携や従業員との面談の場面で生かすことできます。

 勤務経験として特に有利な診療科はありませんが、緩和ケアや特別病棟では患者さんとじっくりかかわることが多いので、本人が意識しないうちに対人関係スキルが高められているということはあるようです。

 

就業に有利な資格はある?

 産業カウンセラーやメンタルヘルスマネジメント検定など、傾聴スキルが高められる資格はひとつのアピールポイントになるかもしれません。企業にその配置が義務づけられている衛生管理者(1種・2種)の資格も同様です。

 これらの資格は、産業看護職の業務に直接結びつくとは限りませんが、取得するために学んだことは必ず役に立つはずです。

 

求人状況・倍率は?

 求人数は限られているのが現状です。ですから、必然的に倍率も高く、場合によっては40倍というケースもあります。そのため、「保健師の資格を有すること」「産業看護職としての経験○年以上」といった採用条件を掲げ、応募数を絞っている企業も少なくありません。








イラスト: イラストAC



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