• 公開日: 2019/6/28
  • 更新日: 2020/3/26

【連載】キャリアアップStory 私の「転職」と「いま」

【看護師の転職story】第3回 全病棟の患者さんを受け入れるアロマセラピー外来を開設

リラックス効果やリフレッシュ効果、症状軽減効果が注目され、補完・代替医療の分野だけでなく、福祉やエステティック、スポーツなどの幅広い分野に取り入れられているアロマセラピー。医療施設では、周産期患者さんを対象にアロマケアを実施するところが増えています。今回は、アロマセラピー外来を立ち上げ、周産期以外のさまざまな疾患患者さんへのケアへと広げた助産師を紹介します。


親友の産後ケアをきっかけにアロマを知って

助産師として、またアロマセラピストとして、東京警察病院でアロマセラピー外来を担当している横田実恵子さん。彼女は、現在のようにアロマセラピーが注目される以前から、アロマセラピーに興味をもち、スクールに通って認定資格を取得しました。そのきっかけは、親友である産婦人科医師の産後に、自宅を訪れたときのことでした。

「出産後の彼女はとても疲れているように見えました。私はそれまでも助産師として、さまざまなお母さんたちをケアしてきましたが、その期間はせいぜい出産前後の1週間ぐらいです。退院して赤ちゃんのお世話をしているお母さんたちは、こんなに疲れているのだと初めて知りました。そこで彼女に『今、何をしてほしい?』と聞いたところ、『マッサージをしてほしい』と言ったのです」

そして横田さんに、「妊産婦さんにはマッサージが必要だと思うから、患者さんに取り入れようよ! どこかで勉強してきてくれない?」と頼んだのです。横田さんも、産婦人科医師でもある彼女が言うのだからと、マッサージを学べる学校を探しているときに行き着いたのが、アロマセラピーでした。

スタッフの協力を得ながら学びを重ねて

妊産婦さんや患者さんを対象に行うには「基礎からしっかり学べる学校を」と、調べた結果、英国IFA認定アロマセラピストの資格が取得できる都内の学校に通うことにしました。

「この資格も今では日本で試験を受けられますが、当時は解剖生理学やボディマッサージ、アロマセラピーの理論と実技を日本で勉強してから、さらにイギリスに3週間滞在し、イギリスのアロマセラピストの授業を受け、最後に認定試験があり、合格すると資格が取得できました」

学校の課題として出された30症例のレポートを提出するため、職場のスタッフにお願いして、アロママッサージの練習台になってもらいました。

「夕方、靴が履けないほどにむくんでしまった看護師の足が、マッサージで靴がゆるくなるほど解消されるのです。その効果に私自身驚き、同僚たちもとても喜んでくれました」

効果を目の当たりにした横田さんは、下肢のむくみや腰痛、背中の痛みなどのマイナートラブルで悩む妊婦さんたちにも、ぜひアロマセラピーを行いたいと考えたのです。

看護研究データをもとに外来開設へ

ちょうどそんな時期のことです。入職3年目の看護師たちが中心になって行う院内の看護研究のテーマに、同じ病棟の助産師たちがアロマセラピーを選び、横田さんも協力しました。

その研究で集めた妊婦さんや患者さんからの、「よかった」「楽になった」という評価などのデータを基に、産婦人科病棟内でのアロマセラピー外来の必要性を上司に伝え、その上司が病院側と交渉した結果、2006年に妊産婦さんを対象にしたアロマセラピー外来が実現しました。

「他院のアロマセラピスト資格をもつ看護師から、『どうしたらアロマセラピー外来を開設できるのか』とよく聞かれるのですが、やはり説得できるデータが必要だと思います。アロマはローリスク、ハイリターンで収益性も高いので、認められやすいと思います。それに現場のスタッフの『患者さんのためによいことをしたい』という意向を、主任や師長などの上司が後押ししてくれるという、職場環境に恵まれていたのだと思います」

助産師としてお産の介助にあたる横田さんの写真

助産師としてお産の介助にあたる横田さん。分娩室でも、患者さんの好みによってアロマを焚いたり、マッサージが行われる。母親学級では、オリジナルの精油づくりを体験してもらうなど、アロマに馴染んでもらう工夫も

産婦さんの陣痛を和らげるために行う腰部のアロママッサージの様子

産婦さんの陣痛を和らげるために行う腰部のアロママッサージ

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