ケアプロ訪問看護ステーション東京は、5月1日に開設1周年を迎えた。日本一若い訪問看護ステーション所長の岩本は、利用者様のあらゆる望みを叶えるために、日夜頭をひねり、体を張っている。そんな所長・岩本が経験した利用者様の看取りを2回に分けてご紹介する。
自宅で看取りたい!
昨年9月より訪問看護をスタートした83歳の男性Y様は、肺炎や尿路感染などで入退院を繰り返している。入院の度にADLが落ちて、今や寝たきりになってしまった。
奥様と息子さんと3人暮らしだが、息子さんは日中仕事で外出のため、介護は奥様に委ねられている。高齢でしかも脳血管障害による軽い麻痺の残る身だ。
しかし、経済的な問題もあり、介護のすべてをヘルパーに頼ることはできない。当然、訪問看護も週1回では不十分だが、増やすことは厳しい状況。奥様は、「頑張って介護したい」「この家で看取りたい」と考える一方で、「疲れたわ」と介護の疲労が見えていた。
限られた資源の中で工夫する
奥様の願いをうかがい、所長・岩本は「奥様が自宅で看取りたいというご希望を、精一杯支援させていただきます」と答えた。
在宅という医療資源の少ない環境で、しかも経済的にも厳しいなか、「悪化を防ぎQOLを維持するには、Y様の限られた資源と私たちケアプロが持っているカードを、どう工夫して活用すればよいかを考えることが私たちの役目」と所長・岩本は話している。
その実現には、同じ医療従事者の間でも価値観の違いから交渉が難航し、その難しさを痛感したという。
たとえば、地域のかかりつけ医からの往診ができるように、入院先の主治医に紹介状を書いていただくのに往診の必要性を説いたものの、「悪化したら入院すればいい」と一蹴されてしまった。
入院してしまえば、在宅での看取りが叶えられなくなる、と押し問答するが、結局は物別れになってしまったのだ。とはいえ、かかりつけ医からの往診ができるように手続きしてくださったことには、大変感謝している。
病院とかかりつけ医の連携がスムーズにいかないケースは少なくない。それでも、看護師の視点からのアドバイスは、在宅医療の実現に大きな力になることを実感したと、所長・岩本は言う。
「利用者様の不安を理解し、包み隠さず話し合うことが大切」と岩本