「認知症の患者さんを見ていると、自分の親のことが心配になってくる」
「親の銀行口座の管理ってみんなどうしているのかな…」
たとえ今、親がどれだけしっかりしていても、認知機能が低下してしまうとお金の管理が難しくなってしまいます。
看護師は「看護師だから介護もできるでしょ」と、親の介護の中心人物になりがちです。親のお金の管理方法について知っておくと、トラブルを事前に防ぐことができます。そこで今回は、親が認知症になる前にチェックしておきたいお金の管理方法について解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
認知症になると銀行口座が凍結される?
認知症が重症化し、金融機関から「十分な判断能力を有していない」とみなされると銀行口座が凍結される可能性*1があります。
また、そもそも本人の同意なく銀行口座からお金を引き出す行為は、たとえ家族であっても法律違反です。 入院費や介護費を、まずは親のお金から出そうとするも銀行口座から引き下ろせず、立て替えなくてはならないという事態もありえます。
では、親のお金の管理はどのようにすればよいのでしょうか?
親のお金を管理する4つの手続き
親のお金の管理は、判断力がしっかりしている内に、法律的に効力のある手続きをするのがおすすめです。 手続きには4種類*2あり、それぞれ紹介していきます。
①成年後見制度
成年後見人制度は、裁判所が選んだ後見人に被後見人(親)を保護してもらう制度です。
後見人は被後見人の銀行口座の管理、不動産売買・老人ホームへの入居などの契約を行うことができます。 ただし、後見人は財産を管理する強い権利を持つため、裁判所は財産の使い込みを警戒しています。そのため、子どもが後見人になろうとしても弁護士や司法書士を任命する場合があります。この場合、弁護士や司法書士に報酬を支払わなければなりません。(相場は財産によって変動し、通常2~6万円/月程度)
②任意後見契約
任意後見人契約は、後見人がつく点は成年後見制度と同じですが、自由に後見人を選ぶことができる点が異なります。しかし任意後見人は成年後見人よりも権利が弱く、契約の取り消しなどができないため注意が必要です。
また、任意後見契約では後見人になる人を好きに決められるかわりに、その後見人が不正をしないように見張る「後見監督人」を必ずつけなければなりません。後見監督人にも報酬を支払う必要があるので、後見人よりいくらか安いですが月数万円程度かかります。
③財産管理委任契約
財産管理委任契約は、まだ親がしっかりしているうちに子どもに財産の管理や処分を任せてもらう契約を結ぶことです。 監督人は必要ありません。任意後見人と同様に権利が弱く、契約の取り消しなどは不可能です。いつから契約どおりに親の財産の管理を始めるかも子どもが決めることができます。
④家族信託
家族信託は、信頼できる家族に生前から財産の管理を頼む方法です。監督人は必要ありません。財産管理委任契約と似ていますが、財産の名義を子どもに変更できますのでより自由に財産管理ができます。また、家族信託で資産の継承者を決めれば相続対策にもなります。
まとめ
親のお金の管理に関しては家族であっても話しにくいテーマですよね。 しかし、親の認知機能が低下してからでは、意向を確認するのが難しくなってしまいます。また、意向の確認だけでなく法律的に効力のある手続きをするのがポイントです。 ぜひ看護師としての知識を活かし、親の認知機能が低下する前にお金の管理の対策をしていきましょう。
参考文献
*1 LIFULL HOME’S.”LIFULL介護”. 認知症で親の預金口座が凍結されるとどうなる?(参照 2019-12-23)
*2 小早川 浩.親のお金守ります.新版.自由国民社.2019年.288p
この記事を書いたのは
看護師FP:しまづ 看護師として働く中で、お金の知識がないと時に自分や大切な家族の生活を脅かすことを実感し、ファイナンシャルプランナーの資格も取得。みなさんのお財布の健康を守るお手伝いをさせていただきます!
イラスト・まえかわしお