看護師の新しい働き方?まちで働く看護師”コミュニティナース”
“コミュニティナース”という言葉を聞いたことがありますか?いま、看護師の新しい働き方として大きな注目を集めています。
今回のvol.2では“コミュニティナースになるには?“ について聞いてみました。
コミュニティナースとは?
海外で広まった、社会的アプローチとしての看護のかたち。日本ではコミュニティナースカンパニー代表の矢田明子さんが0からメソッドを作り、育成プロジェクトを通じてこれまでに約140名がコミュニティナースとして巣立ち、各地域で新しい看護・健康の活動を行っている。
コミュニティナースプロジェクトの様子。修了生が講師を務めることも。
コミュニティナースって資格なの??
ナース専科です!
vol.2では“コミュニティナースになるには?“ について
お聞きしたいと思います!
よろしくです!!
では、さっそく(笑)
よく聞かれることかもしれませんが、コミュニティナースになるには試験など受けるのでしょうか?
はい、さっそく(笑)
コミュニティナースは資格制度ではないんです。「看護の専門性を活かしながら、制度にとらわれることなく、まちに出て自由で多様なケアを実践する人材」であれば、コミュニティナースなんです。特定の資格を持った人がやっているわけではありません。
コミュニティナースになるのはどんな人??
コミュニティナースプロジェクトでのフールドワークの様子。
コミュニティナースってどんな方がいらっしゃるのですか?
コミュニティナースプロジェクト(後述)を受講してくれる方の大多数は看護師資格を持っているんですが…でも実は、”ナース”といっても看護師に限定している訳ではないんです。
最近だと、ドクターや薬剤師、管理栄養士などのいわゆる医療関係者や、一般の会社員の方、自治体に勤める公務員など看護師以外でもコミュニティナースを志す方が増えてきています。
えー!会社員や公務員も?!
いろんな方がいらっしゃるんですね。
コミュニティナースになるために必要なスキルは?
コミュニティナースになるにはどんなスキルが必要なんですか?
そうですね…基本的には看護知識や人との向き合い方が備わっていればコミュニティナースとして活躍できると思います。
でも、コミュニティナースは地域に自ら飛び込んで、住民の方たちのニーズや健康状態を理解する必要があります。だから、看護の世界の知識だけではどうにもならないことが多くあるのも実情ですね。
なるほど…
病院に勤務していると、まずこちらから行かなくても患者さんが来ますものね。その点はすごく違いそうですね。
一概には言えませんが、病院の場合、患者さんも病気を治したいから、病状を訴えたいから自ら話してくれるということも多いのではないかと思います。
一方コミュニティナースの場合、住民の暮らしの中に飛び込んでいくので、当然、初めは住民の方が心を開いてくれなかったり、なかなか話してくれないケースも多いんですよね。場合によっては、何しに来たんだ?みたいなこともあります(笑)
心折れそう…
そんな時はどうやって地域や暮らしの中に入っていくんですか?
折れないで!(笑)
まずは、住民の方との関係構築からですね。あとは”アクティブリスニング”というスキルを使います。
コミュニティナースプロジェクトでのフールドワークの様子。
住民の方に積極的に話しかける。
アクティブリスニング?
住民の方に対して”おせっかい”を焼くのに必要な好奇心です(笑)
でた!おせっかい!!(笑)
そう、おせっかい(笑)
アクティブリスニングは、コミュニケーションの中で積極的に話を振ったり、質問を投げかけたりして、相手の潜在的な思いやニーズを引き出す技術なんです。そういったコミュニケーションを何人もの人と繰り返すことで、地域全体の状態が見えてくるんです。
地域全体の状態…というと?
具体的には、誰がどんなどんな暮らしをしているのか、どんなことを楽しんでいるのか、何を望んでいるのか、みたいな情報です。暮らしを知るとことで、住民の方たちそれぞれのニーズや地域の抱える健康上の課題に対して効果的なアプローチを見つけることができるんです。
ほう…これは、これまでの看護師の動き方と違いがありますね。
確かに、ある意味そうかもしれません(笑)
なので、コミュニティナースプロジェクト(後述)では、最初は看護師として働いてきた中で身についた常識を”手放す・一旦置く”ことから始めてもらいます。
いきなり手放すのって難しくないですか?
もちろん実際に全く無くしてしまうわけではなくて、
一時的に忘れてもらいます(笑)
一時的?ちょっと安心しました(笑)
これまで働いてきた病院などの現場とは違うことが多いですし、指示されて動いたり、やるべきことが決まっているのではなく、自ら役割を求めてどんどん活動をしていかなきゃいけない、必要とされる向き合い方やスキルが違うんですよね。
なるほど。なんかワクワクしますね!
でしょ?(笑) 実際にプロジェクトの受講生たちも「本当に自分のやりたかった看護のかたちが見つかった!」とか「今まで気がつかなかった自分の強みに気がつけた!」って心から楽しんで活動してますよ!そんな笑顔を見るとうれしくなります!(笑)
コミュニティナースプロジェクトとは?
コミュニティナースプロジェクトの様子。
参加者は自分のやりたい看護の自問自答を繰り返す。
ところでさっきからずっと気になっていたんですけど…
ここまで何度か出てきた「コミュニティナースプロジェクト(後述)」って、何ですか?
ですよね(笑)
”コミュニティナースプロジェクト”は、コミュニティナースカンパニーで年に数回開催している、いわゆるコミュニティナース養成講座です。
どんなことをするのでしょう?
3ヶ月間に渡って、コミュニティナースとして必要な姿勢や観点とは何か、自分の本当にやりたいことは何かなど、看護の世界・知識だけではなく、色々な角度から物事を考えて実践できるように、トレーニングしてもらいます。座学はもちろん、フィールドワークといって実際の地域に入り込んで地域の背景を知り、実践者のお話を聞き、まちでのアクションをチームで体験します。
実際に地域にも出るんですね!
フィールドワークの様子。最初は戸惑いも。
出ますよ!
ガンガン地域に飛び込んでもらいます!(笑)
また、これまでの修了生などとオンラインを通じて対話を繰り返していくので、不安点や将来について相談することもできるんです。
それは安心できますね!たくさん相談しちゃいそう(笑)
修了生とのオンラインMTGの様子。どんなことでも相談できる。
どうぞどうぞ(笑)
なので、特定のスキルをこの期間に身につけるというよりも、全国的に広がっている取り組みを知ってもらい、コミュニティナースとしての在り方や表現の仕方を考えてもらう、そしてその人ならではの形で表現してみる、そんな社会実験のスタートがこのプロジェクトです。
この講座を修了した後は、実際の地域に入り込んで、住民の方とのコミュニケーションを繰り返しながら、その地域にあったコミュニティナースになって実践をしてもらいます。
いよいよコミュニティナースとしての出発なんですね!
はい!!ここからは、100人いれば100通りのコミュニティナースがいるとお伝えしたように、それぞれちがった活動を展開していきます。
おっと!
そろそろお時間なので、次回は”コミュニティナースの活躍ぶり”や、”コミュニティナースがいることで見える日本の未来”などについて教えてください!
もちろんです!!
お話を伺ったのは…
矢田明子(やた・あきこ)
島根県出雲市出身。Community Nurse Company株式会社代表取締役、雲南市立病院企画係 保健師。2014年島根大学医学部看護学科を卒業。人材育成を中心に事業を運営する『NPO法人おっちラボ』設立。雲南市主催の「幸雲南塾」で地域に飛び出す医療人材によるコミュニティ作りを提案。2017年Community Nurse Company株式会社を設立。2019年2月『コミュニティナース』を木楽舎より出版。「WIRED Audi INNOVATION AWARD 2018」「DBJ 女性起業ソーシャルデザイン賞」ほか受賞多数。