「看護師は他の職業に比べてお給料が良いって言われていたのに、初任給が想像以上に少なくてびっくりした」そう感じた新人看護師さんもいらっしゃることでしょう。新人看護師さんの初任給は、夜勤手当や残業手当がつかないことがほとんどなため、ホームページなどに掲載されている金額よりも低くなるのが一般的です。そこで今回は、看護師の「年収事情」についてご紹介しましょう。
実録!看護師の年収は「高い」わけではない理由
そもそも、看護師の年収は決して「高い」わけではありません。そう言わざるを得ない、筆者が遭遇した3つのケースをご紹介しましょう。
ケース1 主任へ昇進したA先輩の場合
A先輩はその仕事ぶりと周囲からの信頼の厚さから、主任へ昇進しました。主任となったことでA先輩には、新たに「病棟管理」および「師長補佐」という業務が加わり、代わりに「夜勤」は少なくなりました。看護師のお給料を大きく左右する夜勤回数が減ったことに加え、肩書きがついたことで残業代も、申請しづらくなってしまい、結果としてA先輩の手取り金額は増えるどころか減少してしまいました。
A先輩は同じ職場の看護師と結婚したばかり。奥様はすでに妊娠中でマイホームも購入していたため、「年収を上げて家庭を養うためには、アルバイトをしなくちゃいけないかも…」とため息をついていました。
ケース2 育休後に時短勤務で復職したBさんの場合
Bさんは看護師として3年間務めた頃に妊娠がわかり、その後、休暇制度を利用して産休・育休を取得しました。お子さんが無事に保育園へ入園できたため、ならし保育を経て職場復帰をしましたが、まだお子さんが小さいために時短勤務&夜勤なしでの復職。
復帰から数ヶ月後、Bさんの元に事務から一通の通知がきました。それは、「育休中の厚生年金および社会保険費用を、今後分割で支払ってもらう」という通知でした。「残業&夜勤もできないのに、さらに手取り金額が少なくなったら、保育料でほとんど手取り金額がなくなっちゃう。なんのために働いているのか、わからないよ…」と途方に暮れていました。
ケース3 家族の都合で日勤常勤へ変更したC先輩の場合
C先輩は高齢となったご両親と3人暮らしです。お母様が転倒して大けがをしてしまい、入院生活となったため、C先輩は家事をしながら、併せてお母様の看病もしていました。そのため、「これ以上夜勤を続けるのは難しい」ということで、日勤常勤へ変更しました。
日勤常勤となってから、それまで収入面で大きな割合を占めていた、夜勤手当が支給されなくなり、C先輩の手取り金額は数万円も少なくなってしまいました。「夜勤にいつ復帰できるかわからない中、収入が大幅に減ってしまうのは厳しい…」と感じています。
新人の今だからこそ知っておきたい、看護師の年収をUPさせる方法
A先輩、Bさん、C先輩のようなケースは、看護師の職場では決して珍しい話ではありません。一見すると高額のように感じる看護師の年収ですが、それはあくまで「夜勤手当」や「残業手当」がつくから高い、というのがほとんどです。そこで新人看護師さんだからこそぜひ知っておいていただきたい、看護師の年収を確実にUPさせるためにチェックしたい項目をご紹介します。
夜勤手当の金額と、地域内での相場を確認しておく
看護師にとって、年収に大きく関係しているのが「夜勤手当」です。そこで大切となるのが、「夜勤手当はどれくらいもらえるか」ということです。このとき、一回あたりの夜勤手当の金額を把握するとともに、「地域内での夜勤手当の相場をチェックしておく」こともオススメします。
実際に筆者が経験したのは、夜勤1回あたりの手当が都心部では1万5千円だったのに、地方で働いた時は8千円でした。同じ2交代での夜勤なのに、1回あたり7千円も差がありました。地域によって差が大きいからこそ、確実に年収UPさせるためには、「夜勤手当が高い地域で働く」ということもポイントとなります。
夜勤に「どれくらい入れるか」
また、夜勤手当の金額と同時に確認しておきたいのが「夜勤にどれくらい入れるか」ということです。病院によっては、常勤として働いている看護師が一時的に「夜勤常勤」となり、夜勤に専属で入れるという職場もあります。そのため、そういった制度を採用している病院で働くことができれば、大幅な収入UPが見込めます。
一方、一人あたりの夜勤回数を制限している職場もあるため、ただ単に「夜勤の有無」ではなく、「夜勤にどれくらい入れるか」という点も確認しておくことをオススメします。
将来的な転職も視野にいれ、技術を身につける
一つの病院で長く勤務する、ということも大切ですが、年収をUPさせるために転職する、というのも一つの手段です。看護師としての知識と技術を身につけられたと思えたら、より給料が高い職場へ転職することで、年収アップを見込むことができます。
また、転職時に自分の売りとなる資格や技術を身につけておけば、さらなる年収UPも期待できます。例えば、透析看護を学んでおけば、年収の高い透析クリニックへ転職することも可能となるのです。
看護師の年収は、夜勤と技術手当で決まる!
看護師=年収が高い、というわけではなく、看護師の年収は夜勤手当、そして看護師プラスαの技術に大きく影響を受ける、ということがおわかりいただけたかと思います。将来に向けて年収を確実にUPさせたいと考えている方は、ぜひ夜勤回数に加えて、現場で役立つ資格や知識・技術取得も視野にいれていただければ幸いです!
この記事を書いたのは
山村 真子
看護師として働きながら、ライターの仕事もしている、アラフォーママナース。看護系以外にも、育児や病気、介護など幅広い分野の執筆を行っています。時短勤務中だが、毎日定時に帰れるはずもなく、保育園の送迎はいつもギリギリなのが最近の悩み。
イラスト・ツヤコ