周手術期心筋梗塞(PMI)
読み方:しゅうしゅじゅつきしんきんこうそく(ぴーえむあい)
周手術期心筋梗塞(PMI)とは
周手術期(術前・術中・術後の一連の期間の総称)に起こる心筋梗塞のこと。
原因
急性冠症候群
術後には自律神経系亢進(内因性カテコラミンの増加)、循環動態の不安定化(頻脈、高血圧)、冠動脈収縮が起こりやすい状態。
このような術後変化が術後の冠動脈粥腫破綻の危険因子となり、さらに術後は過凝固、線溶系の抑制が加わることから急性冠症候群が発症しやすい。
《心筋酸素需給バランスの悪化》
術後は自律神経系亢進・痛みに伴って頻脈・不整脈を発症しやすく、頻脈は心筋酸素需要を増し、供給を減らす。 逆に周術期には心機能の低下に伴って血圧の維持が困難なことも多く、血圧・冠灌流圧の低下は心筋酸素供給を減少させる。 また、冠動脈の収縮・貧血・低酸素も酸素供給を低下させる要因になり、このように周術期は心筋酸素需給バランスが乱れやすく、特に冠動脈疾患が指摘されている症例ではPMI発症の可能性が高まる。
治療
PMIが疑われる場合
- トロポニンの測定、血液ガス検査
- 低酸素血症・高炭酸ガス血症・アシドーシスの有無を確認し必要があれば補正。
- 貧血がある場合にはヘモグロビン値を8-10g/dLまで補正。
- 12誘導心電図検査を行いST変化を確認。STが低下している症例では心拍数・血圧のコントロールを中心に循環管理。
- 循環動態が悪化している症例では肺動脈カテーテルを挿入し積極的な循環管理。
- 痛みが原因であれば鎮痛薬を投与。
- 不整脈がある場合には抗不整脈薬の投与・電気的除細動。
- PCI、CABGが必要となることもある。
予防
β遮断薬を術前から予防的投与することで術後心筋梗塞を予防。しかし、副作用(徐脈・低血圧)は脳梗塞などを引き起こす可能性も高い。その他、カルシウム拮抗薬、α2アゴニスト、スタチン、アスピリンの有効性も唱えられている。