『ナースの働き方白書』とは、ナース専科を運営する(株)エス・エム・エスキャリア提供の転職支援サービス「ナース人材バンク」より、お役立ち情報をお届けするコンテンツです。
看護師は、患者さん・そのご家族・医師・同僚の看護師など、日々たくさんの人と接する職業。 今回は、特に悩みがちな患者さんとのコミュニケーションについて、考えていきたいと思います。
1. 看護師がコミュニケーションで悩む場面
看護師のSNSなどを見てみても、患者さんとのコミュニケーションに悩んでいる投稿をよく見かけます。特に多くの看護師がコミュニケーションに悩む場面について、3パターンを上げてみました。
あなたは患者さんとこんな経験、ありませんか?
患者さんと雑談しかできず本音を聞き出せない
患者さんに看護を提供する上で、まず大切となるのは「情報」。そしてその情報収集のために大切となるのが、患者さんとの会話です。
しかし、情報収集を兼ねての会話なのに、いつも世間話や雑談で終わってしまい、患者さんの本音をなかなか聞き出せないと悩む看護師が、多くいます。
少しでも看護師に対して本音を打ち明けてほしいと思うのですが、実際に話してみると会話が続かない、あるいは話自体はできるけれど、肝心なことを聞けずに雑談だけで終わってしまうと、「どうすればもっと患者さんの本音を聞き出すことができるんだろう」と悩んでしまうのです。
話を聞いてあげることもできないほど、忙しい
「患者さんの側にいたい」というのは、看護師としてかなえたい希望の一つ。 しかし、実際には看護師としての様々な仕事に追われてしまい、なかなか患者さんの元へ行けません。
行けたとしても、バイタル測定や患者さんの観察項目を確認するのがやっとで、患者さんがいろいろ話したそうにしていても、話を十分に聞く時間を確保できない、という悩みが出てきます。
また、たとえ時間が空いたとしても、ナースコールが鳴る、先輩に呼ばれてしまうなどで話を聞く時間が遮られてしまう、ということもよくみられます。行きたくてもなかなか行けない。やっとのことで患者さんの元へ行けたとしても、時間が非常に限られてしまうので、患者さんも話したそうにしているのに、その場を去らなくてはいけない。
コミュニケーションをもっと積極的にとりたいのに、患者さんの話を聞けないほど忙しい、というのは多くの看護師さんに共通する悩みなのではないでしょうか。
患者さんが作る心の壁を超えることができない
患者さんの中には、自分のことを積極的に話したがらない人がいます。こちらが切り込んで話をしてみても、他の話にすり替えられてしまい、なかなか本題に入ることができない。本題を話しても、患者さんがそらしてしまうなど、患者さんから心の壁を作られてしまい、それを突破することができません。
看護師側から積極的にアプローチしても、患者さん側に壁を作られてしまうと、看護師としては患者さんから拒否されてしまっているように感じてしまいます。 そして徐々に看護師自身も「あの患者さんは私が苦手なんだ」と看護師側からも壁を作ってしまうことで、ますますコミュニケーションがとりづらくなってしまいます。
2. 看護師がコミュニケーションをとる上での3つのポイント
看護師として患者さんとコミュニケーションが取れないというのは、仕事をする上でも大きな悩みの一つです。患者さんとのコミュニケ―ションが不足していると、情報がうまく届かないなど、仕事にも影響を及ぼしてしまう可能性があります。
では、どうすれば患者さんとコミュニケーションをもっとうまく採ることができるのでしょうか? 看護師の経験から、3つのポイントを考えてみました。
コミュニケ―ションにおいて、まず大切なのは、「ゆっくりと話す時間」です。 「今日はこの患者さんとじっくりコミュニケーションを取りたい」と思った場合、同じチームの人に「この時間、私はこの患者さんとゆっくり話したいので、コール対応などをお願いしてもいいですか」など、患者さんと集中してコミュニケーションをとるための時間を作ります。
この時、ポイントとして時間を作る際には、「〇分から〇分まで」と具体的な時間を同じチームの人などに事前に伝え、実際に入る際にも「これから〇〇さんのところに行くので、よろしくお願いします」と声をかけることです。 そうすることで、周囲の看護師さんも「この時間、〇〇さんはコミュニケーションをとっているからコールに出られない」と認識しやすく、協力しやすくなります。 時間に追われてしまうと、どうしてもお互い言いたいことも言えなくなってしまうもの。 コミュニケーションをとる上では、まずこの「時間を作る」ことを意識してみましょう。
コミュニケーションにおいては、話す力以上に大切となるのが、「聞く力」です。患者さんが無口な方、あるいはあまり話すのが上手でない患者さんの場合、つい看護師側がいろいろと話してしまいがちです。
しかし、そこから一歩引いて、「聞く」ことを念頭に置き、患者さん側に話してもらうように意識します。そして、患者さんが一度話始めたら、話が終わるまで聞き側に徹することを心がけます。そうすることで、少しずつ患者さんも患者さんの言葉で話してくれるようになるでしょう。 例えば食事について話したいと思った場合、「私は週末にまとめて買って調理しちゃうんですけど、〇〇さんは食事をどうやって用意しているんですか?」など、自分の具体例をまず挙げてから、患者さんに質問すると、より自分の聞きたい具体的な内容を患者さんが話しやすくなります。
患者さんは、病気やケガと戦う日々を過ごしています。そして、病気やケガをきっかけとして「自分は今後どうなってしまうのだろう」という不安を常に持っています。 看護師として、患者さんの不安や恐怖を理解し、その立場に「共感」すること。これが患者さんとコミュニケーションをとる上で非常に大切となります。例えば血糖値が高く、退院後は自分で血糖コントロールをしなくてはいけない場合。看護師としての知識から、ついつい「退院後も食事や運動を頑張りましょうね!」とやってほしい行動についてこちらから一方的に伝えてしまいがちです。
しかし、そうすると患者さんは「今だって十分頑張っているのに」と反発し、心の壁を作ってしまう可能性があります。まずは患者さんに対し「血糖のコントロールは大変だし、難しいですよね」と、患者さんの「大変」「難しい」という部分に共感を示します。 そうすることで、患者さんから「この看護師さんは自分の大変さをわかってくれている」という共感を得ることができます。このように、相手が自分の気持ちを理解してくれているとわかると、看護師に対して信頼感が生まれ、よりよいコミュニケーションがとりやすくなります。
3. それでもコミュニケーションが取れないと感じたら…
いろいろと工夫し、頑張ってもなかなかコミュニケーションが取れないと感じた場合は、どのように対応すればよいのでしょうか?
カンファレンスを開き、同僚の意見を聞く
コミュニケ―ションは、一人であれこれ考えるよりも、よりたくさんの人の意見を聞くことで解決する場合もあります。 患者さんと自分で考えたコミュニケーション方法を試してみたにも関わらず、関係がうまくいかないと感じた時には、カンファレンスを開いて、患者さんとのコミュニケーションについて、同僚の意見を聞いてみましょう。カンファレンスによって、同僚から、自分で考えていた以外の様々なコミュニケーション方法が提案され、思わぬ形で解決できるかもしれません。
また、すぐに怒りだしてしまうなど、コミュニケーションをとるのが難しい患者さんに対しては、カンファレンスを行い患者さんに関わる看護師全体で対応を統一することで、さらなるトラブルを防止することもできます。
一人で抱え込まない
コミュニケーションにおいて大切なのは、「一人で抱え込まない」ということです。特定の患者さんとコミュニケーションが取れないと感じた時、一人で「私のココが悪かったのかな」などと考えこんでしまい、どんどん自分に自信がなくなる恐れがあります。
自分ではコミュニケーションをとる際に悪いと思っていた部分も、他の人から見ると大したことなかった、というケースもありますし、自分が考えていた原因とは全く別のことが、患者さんにとっては問題だった、ということもあり得ます。 コミュニケ―ションに悩んだら、一人で抱え込まず、同僚など、周囲の信頼できる人に相談することが、とても大切です。
思い切って環境を変える
患者さんとコミュニケーションが取れず、それを同僚など信頼する人へ相談してもなかなか解決しない。それどころか、相談相手となるべき同僚ともコミュニケーションがうまく取れず、どうしていいかわからない。
中には何をどうやってもうまくいかないことだってあります。関係が改善できない時には思い切って環境を変えるのもいいかもしれません。環境を変えることで、「あの時私はなんて小さなことに悩んでいたんだろう」と思える日が来るかもしれません。いいコミュニケーションはいい職場から生まれやすいと感じます。