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【連載】ナース・エッセイ

ナース3年目 経験を積んでいても返す言葉がでなかった。つらすぎる「ありがとう」 

  • 公開日: 2014/12/6
  • 更新日: 2018/12/13

 

テーマ:忘れられない患者さん

つらすぎる「ありがとうございました」

PICUで受け持ったのは、ママさんナースのお子さん

思い出に残るのは、つらい記憶の方が鮮烈ですね。
小児心臓血管外科のPICUで働いていたときの話です。

手術は無事成功し、術後の経過もまずまず。Aちゃんは、一般病棟にうつりました。お母さんは看護師さん。故郷の青森で助からないと言われたAちゃんの先天性心疾患。ひとすじの希望を抱いて、探しに探してうちの病院にはるばるやってこられたので、術後の喜びはひとしおだったことでしょう。

けれど、そのまま順調にはいきませんでした。 一般病棟で、ささいなことで急変したAちゃん。 退院も見えていた頃でしたが、最重症の子が入る、CCUにうつりました。しかしAちゃんの意識が戻ることはなく、いわゆる植物状態で、ずいぶんたってから、呼吸器がついたままPICUにおりてきました。

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PICUにきてから

変わり果てたAちゃんの様子に愕然としながらも、看護師は日々懸命にケアにあたりました。

けれど、Aちゃんのお母さんは、急変のときのことがとてもショックで、急変のあった病棟の隣に位置するこのPICUに来ることができなくなってしまいました。Aちゃんに会いたい。会いたいんだけれども、ある場所からお母さんはどうしても歩くことができなかったのです。仕方なく、遠くの廊下にある窓から、PICUのほうを泣きながら眺める日々が続きました。

私たちは、そんなお母さんに何かできないかと、Aちゃんの可愛い様子を記した日記を書いて、お母さんに見せることにしました。幸いにもお母さんは喜んでくださって、Aちゃんのためにボディクリームを買ってきて託してくれたりしていました。

変わらないAちゃんの状態や、回診でAちゃんの前だけすぐに通りすぎていく医師達に無力感と理不尽な気持ちを感じながらも、日々が過ぎていきました。

そしてとある日、Aちゃんの容態は更に悪化し、強制的に心臓を動かしていたボスミンや、無理やりおしっこを出させようとしていたピトレシンなどの、持続点滴を切ると言う提案が、医師から父母にされました。

Aちゃんの脈拍が徐々に低下していた夜、急変後はじめてお母さんは、お父さんと一緒にPICUにきて、半個室のAちゃんの部屋でずっとずっと、泣きながら、「ありがとう」「生まれてきてくれてありがとう」とAちゃんに話しかけていました。

Aちゃんが亡くなった日

看護師がAちゃんに作った簡素なおもちゃや、あのボディクリームも、ちいさな子供用の棺につめて、みんなお見送りに行きました。お母さんは泣きながら、「ありがとうございました」と、スタッフに頭を下げられました。

こんな形で、ありがとうと言うはずではなかった筈なのに。
こんな形で、青森に帰るはずなんかじゃなかったのに。
お母さんは、私たちを闇雲になじったっていいのに、どうしてこんないい人達の子供さんが、亡くならなければならないのだろう。
こんな「ありがとう」、言わせたくなかった。
でも、その「ありがとう」を否定するのはもっと駄目な気がして。

当時3年目の私。
返す言葉もなにも、なかったです。

振り返ってみても

あのときのことは、未だに忘れられません。

死は、比べるものでもないけれど、ご両親にとって子供を喪うということの悲壮さは、筆舌につくしがたいほどの絶望や辛さを伴うと感じ続けてきました。子供ができたら、と想像をめぐらせて頑張った過去、子供ができたときの喜び、子供と過ごしてきた過去、 現在、そして、子供と過ごして成長を見届けるはずだった未来、全てを、たいへんな痛みを持って喪うことの絶望。

そういったものを考えて、知りながら、全力でケアにあたるしかないと、思っています。

●執筆●かや さん

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