リサーチ・インタビュー
  • 公開日: 2021/10/19

訪問看護ステーション立ち上げ中/ダンサー|シーサー さん

看護学校卒業後は、飲食店でアルバイトの掛け持ち。面接もなくスタートした精神科看護師人生。ダンサーでありナース専科のインタビュアー兼ライターでもあるシーサーさんが、新しい仕事を始めるようです。

 

看護師のさまざまな働き方を紹介するコーナー。最終回はこのコーナーのインタビュアー兼ライターを担当してくれていたシーサーさんの登場です。肩書が「看護師兼ダンサー」だけあって、ユニークな経歴と独特な視点の持ち主。そんなシーサーさんが今、取り組み始めた仕事を中心に、これからの活動についてもお聞きします。

今回のゲスト:シーサー
看護師/ダンサー
1年間このコーナーで、多くの読者に看護師の幅広い働き方を伝えるべくインタビュアーを務めてきた。本業は看護師兼ダンサー。
精神科で10数年の臨床経験を経た後、プロダンサーへ。狩猟免許も持つ。ダンス教室経営・精神科訪問看護・大学非常勤講師をこなしつつ、現在は新たに、株式会社ソシエテに所属し、精神科訪問看護ステーションの立ち上げにかかわっている。
Twitter: https://twitter.com/seasar_sa1ada
Instagram: https://www.instagram.com/seasar_sin.cos.tan/
株式会社ソシエテ:https://societe.in/

聞き手:ナース専科編集部

 

新しい仕事にかかわり始めたそうですね

 そうなんです。ビジネスパーソンを対象とした精神科訪問看護ステーションの立ち上げにかかわっています。

ユニークですね。具体的にはどんな訪問看護ステーションなのですか?


 今の時代、心や精神を病んで入院するサラリーマンはとても多いのですが、治療を終えて退院すると、その後のフォローは、たまの外来通院程度で手薄になってしまいます。しかし本人のストレス耐性は変わっていないため、職場に復帰したあとにまたストレスによって発症し、再入院となってしまうケースが多いのです。

 本当は、退院後にも継続的な心理教育などのアフターケアが必要なのに、その担い手がいないのが現状です。そこで、これら病後の働くサラリーマンや休職中のサラリーマンを対象にした精神科訪問看護を行うステーションを設立の手伝いに携わることになりました。

 これまでケアの手が届かなかった対象にリーチできる、救えるはずの人をちゃんと救うことができる、とても意義のあるステーションになると思います。

働く人を対象にした精神科訪問看護、とっても興味深いですね。いつから携わっているのですか?


 2020年6月からです。株式会社ソシエテというコンサル会社に勤める知人から話を持ち掛けられ、参画することにしました。

 きっかけはTwittweです。以前、Twitterを通して「働き方に関するイベント」への講演を依頼され演者として登壇しました。その後の食事会でソシエテの知人から、この新しい精神科訪問看護ステーションの構想を聞かされ、これはぜひ形にすべきだと思いました。

 僕自身の精神科訪問看護師時代の経験を役立てられるなら、ぜひ手伝いたいと考えました。

具体的にはどんな仕事を担当しているのですか?


 オープニングスタッフの採用と教育などの人事関係、管理部門の内部設計などを担当しています。今年(2021年)4月にはオープン予定で、すでに2人の看護師の採用も決定しました。自分を含めいずれも精神科病棟での勤務経験をもつスタッフです。オープン後には、僕も現場に出て精神科訪問看護を手伝う予定です。


働くサラリーマンを対象にすると、どんな時間に訪問することになるのですか?


朝の出勤前や夜の帰宅後、土日などが中心になると思います。今は在宅ワークも増えていますから、日中に訪問できるケースも多いのではないかなと思います。


在宅ワークが増えているなか、精神科にかかるサラリーマンの数は増えているのでしょうか?


周囲とのコミュニケーションが減って、心を病む方は増えていると聞いています。特にエンジニアなどの職種では、仕事量が増えるなかで孤独に陥ってしまい、精神的に潰れてしまう社員が増えたという社長さんの声なども耳にしています。

 

どんな精神科訪問看護ステーションを作りたいですか?

 働きやすい職場にしたいな、と思っています。僕自身も訪問看護を行いますし、毎日働く職場ですから、気持ちよく働けるほうがいいですよね。

 ただ、実は長く働くかどうかはまだ未定なのです。ステーションの経営が軌道に乗ったら、もうこの仕事をする人間が自分である必要はなく、他の人に任せていいんじゃないかなとも考えています。とても良いビジネスでこの世に必要なものだと感じたから、僕の力が活かせるならばぜひ立ち上げに協力したい、けれど自分以外の人でも運営できるようになれば、離れてもいいんじゃないかなとも思うんです。


将来的にはどんな働き方を目指しているのですか?

 僕のもう1つの肩書はダンサーです。主に子どもたちを中心にダンスを教えています。将来、ダンス1本に絞るかどうかはわかりませんが、プロとしてダンスの仕事もきちんと広げていきたい。ただ年齢的にみて、今は1人でこなしているダンスレッスンも、そのうち1人ではこなせなくなるでしょう。

 人を雇ってレッスンを広げていくことになったとき、経営や管理などのマネジメントの手腕が必要になるだろうと考えていました。今回、ステーションの立ち上げにかかわった理由の1つには、マネジメントを経験できる良い機会になるのでは、と考えたところもあります。


果たしてキックボードで訪問看護に行くことができるか検証中の写真

 

シーサーさんの働き方[ある1日]

6:30 起床
7:30 朝食づくり、子どもたちに朝食を食べさせ、小学生の送り出し、その他の家事、洗濯
8:30 妻の出勤と同時に、保育園へ子どもを連れて行く
9:00 仕事タイム。精神科訪問看護ステーション立ち上げにかかわる業務(オンライン会議、採用面接、事業説明会の実施など)、このコーナーの記事の執筆、オンライン実習の準備、ダンスの振り付けを考える、レッスン曲の編集など
12:00 昼食、少し昼寝
13:00 午前中の仕事の続き
15:00 買い物、夕食の準備
16:00 保育園の子どものお迎え
16:20 ダンスレッスンのために家を出る。スタジオは家から5分のため自転車で
16:30 月~木曜はダンスレッスン。本日のレッスンは、低学年と高学年の2クラス×60分
18:40 帰宅、子どもたちに夕食を食べさせ、お風呂に入れさせる、その他の家事など
20:30 明日の仕事の準備のあとは、ドラマや動画を見るなど自由な時間
22:30~23:30 就寝

大学で精神科看護の非常勤講師もしています。実習のある日は、9:00~16:00でオンライン実習を行います。
新型コロナが流行する以前は、5:30に起き、6:30には家を出て、8:00~16:00までが実習指導、帰宅は18:00という生活でしたから、妻との家事や育児の分担が大変でした。今とは時間の使い方がずいぶん違いますね。

 

訪問看護ステーションの立ち上げではどんなスキルが磨かれますか?

 先にもお話したように、この立ち上げに携わることを決めた目的の1つは、マネジメントスキルの修得でした。ただ実際に仕事を始めてみると、思わぬスキルも身についてきていることを感じています。

 それは、仕事の進め方のスキルです。主に一緒に仕事をしているのは、ソシエテの社長と社員の方々ですが、彼らの仕事の仕方がとても洗練されていると感じています。

 きちんと誰が見てもわかるように思考を言語化し、目的を明確にし、目標に向かって必要なタスク(作業)を割り出し、期日に通りにこなしていく、その業務管理の手法は僕が今まで学んでこなかったものなので、とても勉強になっています。ダンスであっても看護であっても、今後の自分の仕事の進め方に生かせるのではないかと思います。

 また、人事面を担当することで、人を見る観察力が少しついたかなと感じました。スタッフの採用にあたっては、必ず複数人で面接を行いますから、自分が感じた印象と他の人の印象をすり合わせるなかで、今まで気づかなかった見方や観察のポイントなど、学ぶところが多いです。

 

訪問看護ステーションの立ち上げはキャリアップに活かせそうですか?

 キャリアアップというのとは、少し違うかもしれませんが、ゼロから何かをつくる仕事をしようとしたとき活かせるのではないかと思います。

 人を集めて役割を分担し、仕事を割り振りし、期日までに遂行するようなとき、いわば人材管理が必要になったとき、今の経験が活かせるのではないかと感じています。


次のページでは、シーサーさんの人となりに迫ります!

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