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外科病棟看護師|西井茉実さん

  • 公開日: 2021/7/1

 


外科病棟看護師|西井 茉実さん

 

看護師のさまざまな働き方を紹介するコーナー。第9回はなんとなく進学した看護大学の実習で出会った患者さんの急変、希望していなかった外科への配属、同期の退職など、さまざまなピンチのなかで外科の面白さに気付いた西井さん。そんな西井さんが、ここに至るまでの経緯や苦労、やりがいなどを聞いてみます!

今回のゲスト:西井 茉実さん
東京大学医科学研究所付属病院 外科病棟勤務
新卒で入職。内科希望だったが外科に配属。しかし勉強していくなかで、外科看護の面白さに気付き現在はプリセプターも務める3年目看護師。

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聞き手:シーサー
看護師/ダンサー
精神科で10数年の臨床経験を積みつつ、プロダンサーでもあり、猟銃免許も取得する異色の看護師。普段は、教室経営・イベント業・大学非常勤講師など。多くの読者に看護師の幅広い働き方を伝えるべく、今回インタビュアーを務める。
Twitter: https://twitter.com/seasar_sa1ada
Instagram: https://www.instagram.com/seasar_sin.cos.tan/

 

配属科をお教えください。外科病棟とはどんな病棟ですか?

 混合外科です。メインは消化器外科で、泌尿器科や脳腫瘍外科も看ています。当院では消化器外科と泌尿器科の手術が多いです。悪性リンパ腫がある人の精密検査を目的とした手術も行っています。検査を終えて診断がついたのち、他の病棟(血液腫瘍内科など)に転棟する流れです。内科病棟との違いは、手術があるので手術前後の看護がメインになってくることです。

 

どんな患者さんを対象としていますか

 消化器外科がメインなので、大腸がんを主としていますが、その他腫瘍性大腸炎やクローン病など難病疾患の治療、虫垂炎などです。手術や、手術前後の補助療法としてがんの化学療法も行っています。基本的に70代以上の患者さんが多いのですが、10~30代の患者さんもいます。

 高齢者が多いので、最近は慢性期や回復期リハビリの役割も担うようになりました。また、独居や独り身、経済的に厳しい人などへ療養についての退院支援も行っています。緩和ケアの患者さんが入院してくることもあります。

 

外科病棟における看護とは何だと思いますか?

 外科のため手術を受ける患者さんが多く、不安な思いを抱えている人が多いです。そのため、できるだけ不安を軽減して手術を受けられるよう、手術前後の流れについてイメージをもってもらうことを心がけています。

 例えば、手術室への入室時間、麻酔がかかっている時間、その間は意識がないこと、病棟に戻った際は心電図モニター装着や血圧管理、疼痛管理、酸素投与を受けていることなどです。他にも点滴やドレーンなど管がたくさん入っていること。これらを具体的に説明してイメージをもってもらいます。

 術後はその管が1つずつ取れていきますが、術後合併症が起こってしまうと治療期間の延伸につながってしまいます。そうならないために、患者さん自身でも頑張ってもらう必要があること。そこで私たち看護師がお手伝いすることも説明し、ご本人に理解してもらえるよう努めています。それには、手術後の患者さんの経過を念頭に置きながら患者さんと関わることが大切です。

 しかし、術前に十分な説明をしていたとしても、実際に術後になると「痛い、どうしよう、歩けない、思うように治療が進まない」と、気持ちが落ち込む患者さんがほとんどです。初めて手術を経験した人はとくに、「こんなに痛くて歩けるのか」「こんなに管がついていて、このあと私どうなってしまうの?」などと考えてしまいがちです。

 私たちはそのような訴えに対して、例えば「痛み止めはこれくらい使えます。今は積極的に使うのも手ですよ」「今の痛みが10なら明日は8、7、5と減っていきます」というように、一般的な治療経過を伝えています。

 また、同じ手術を同じ日にしても人によって回復のスピードが違うため、それによって落ち込む人もいます。「あの人はもう歩いているのに…」「あの人の管はもうあんなに少ないのに僕はなんで3本も入っているのか…」など。歩けるようになったあとも、まっすぐ歩いている人がいる一方で自分はうずくまりながら歩いているような状態だとすると、術後の経過を周りと比較して落ち込んでしまうのです。

 こういった場合、早期離床を促すこと、そしてその根拠をはっきり説明することで患者さんは安心できると思っています。また、私たちが元気でいることも大事です。元気に接しているほうが患者さんも気持ちが明るくなるのではと思っています。辛い気持ちに寄り添うこともあれば、ときには「大丈夫ですよ」と背中を押すことも必要です。術後の痛みは辛いのですが、患者さんを励ましながら、動いてもらわなければいけない場面もあります。


「私たちが元気でいることが大事」という西井さん。端末で記録を入力中


大変失礼ながらオペの経過と処置のやり方さえ知っていればなんとかなると思っていました…


精神面のサポートは絶対に必要ですね。手術後1日目はとくに必要です。
外科は在院期間が短く、1週間で退院される患者さんも多くいます。開腹した患者さんは術後の生活に注意する必要があり、入院前の食生活の聴取や、デスクワークなのか身体を動かす仕事なのかといった情報収集は、退院指導までのタイトな時間で行わなければなりません。


 

西井さんがお考えになる医科研病院の外科の特徴をお教えてください

 難病指定医がいるため難病を抱える患者さんにとって安心できる環境であり、潰瘍性大腸炎などの手術にも対応しています。2020年は泌尿器科がオープンし、ダヴィンチ(ロボット支援手術)が導入されました。まだ取り入れている医療機関は少ないと思うので、そこは最先端だと考えています。ダヴィンチを使った手術は侵襲が少なく、傷も小さく済みます。また、痛みも少ないなどメリットが多いです。

 そして脳腫瘍外科では、当院でしか行っていないウイルス療法を受けに他県からも患者さんが来院します。ウイルス療法とは、がん細胞だけで増えるように改変したウイルスをがん細胞に感染させ、ウイルスそのものがガン細胞を殺しながら腫瘍内で増幅していくという治療法で、脳腫瘍の患者さんに行っています。

 こういった最先端の治療は教科書などには載っていないため、自分で調べたり分からないことは医師に聞いたり、勉強会に参加したりして学んでいます。あくまで治験段階にある治療法のため、手術後や治験後に何か起こる可能性もあることを患者さんは納得したうえで治療に臨んでいます。

 

西井さんの働き方[ある1日]

日勤の場合

7:00 起床。準備して徒歩で病院へ
7:50 病棟到着
8:00 ペアのNsと受け持ち患者の指示を確認
8:30 担当の患者さん達に挨拶、観察・確認、点滴準備、検温、全身状態確認、医師が来たら術後の患者さんのガーゼ交換
10:00 点滴交換。終わり次第、ペアのNsと保清(1人で行うこともある)
11:30 リーダーに報告。交代で45分ずつ休憩。血糖測定、食前薬・昼薬、配下膳など
13:30 カンファレンス(曜日ごとに内容が決まっている。看護計画の修正、退院支援カンファ、Drカンファ、など)
14:00 点滴更新、抗生剤投与、保清、バイタル測定、インアウト測定
15:00 リーダーに報告
16:00 記録、ナースコール対応、処置など
16:30 夜勤に引き継ぎ
17:00 退勤
17:30 家に到着。すぐシャワー
18:00 夕食を作る
19:00 夕食
21:00 勉強、動画鑑賞など
24:00 就寝

夜勤(週1~2 月5回ぐらい)の場合

9:00 起床。家事など
10:00 朝食
12:00 昼寝
14:00 起床
15:00 出発
15:40 病院到着
16:00 始業。夜勤は2人。Wチェック、お互いに指示確認。オペ前日の人は禁食、オペ出しの時間などの確認
16:20 日勤リーダー申し送り。患者さんへ挨拶。異常確認、点滴準備。夕食配下膳、血糖測定、食前薬・夕薬19:00 バイタル測定
19:30 交代で30分休憩
20:00 歯磨き、トイレ誘導、リーダー報告
20:30 当直の看護師、医師に報告
21:00 眠前薬
21:30 消灯
22:00 点滴交換、インアウトをしめる
23:00 ラウンド、点滴対応など
24:00 1時間ずつ休憩、ラウンド、患者さんのトイレなどの対応
6:00 起床。検温、採血、点滴
7:00 リーダーに報告
7:30 朝食、血糖測定
8:00 ナースコール対応、配薬、記録、申し送り
9:00 退勤

 

外科病棟の看護師にはどんな人が向いている、また向いていないと思いますか

 向いている人は、アセスメントが好きな人です。この患者さんはなぜ息があがっているのか?手術中に出血が多かったせいか?というように、解剖学的かつ疾患的にも学びたい人には向いていると思います。テキパキ仕事をする人も向いています。

 外科では一度にさまざまなことが起こるので、起こったことに対しすぐに優先順位をつけて対応する必要があります。例えば術後の患者さんの心電図モニターがアラーム作動している、離床センサーが鳴った、ナースコールが鳴った、点滴投与に行かなければならない、医師の処置に入ることになったなど、実施することが複数あるときはその場で優先順位をつけ、どういう順番で回るのか、誰に頼む必要があるかなど、すぐに判断して行動できるとよいです。また、術後の早期離床に対応するため、動くことが好きな人もよいと思います。

 向いてない人は、患者さんの変化が怖い人でしょうか。患者さんの回復過程を看ていけるのが外科の醍醐味と思うのですが、その日々の変化についていくのが大変そうと感じてしまう人は向いてないと思います。変化といっても回復だけではなく、例えば出血したり縫合不全が原因で食事開始後に腹膜炎を発症し、再手術になったりすることもあります。

 そもそも外科は急変のリスクが高く、侵襲的な処置も多くあります。そのため、突発的なトラブルに対応する機会は避けられません。もし急変したらどうしよう、急変が嫌だ、怖いと思う人には大変かもしれません。


今までの取材のなかで向いていない人の共通点は「人と関わるのが好きではない人」と言われる方が多かったのですが、外科ではどうですか?


人と関わりたくない人でも大丈夫だと思います。術後は寝ている患者さんが多く、全身状態を観察することが多いので。
 手術直後の患者さんは、夜はゆっくり休んでもらうことが大切なので、声をかけすぎても良くないことがあります。もちろん患者さんの訴えを聞くことも大事です。全身状態を診て、バイタルサインに異常がなければ、無理に関わる必要はないとも思います。しっかり全身状態から読み取ることができれば、人との関わりが苦手な人でもなんとかなるのではと思います。

 

同僚の看護師には、どんな経歴の人が多いですか

 経歴はさまざまですが、外科やICUなど、他の病院で経験を積んできたスタッフが多いです。当院は血液腫瘍内科や臍帯血移植が有名で、それらを扱う病棟から異動して来るスタッフもいます。

 子育て中のスタッフも多いです。看護部がワークライフバランスを重視しており、育児休暇や産休制度、福利厚生が充実していて定時にあがれることも多くあります。新卒の割合はそんなに多くはないかもしれません。スタッフの年代は幅広く、20~50代まで万遍なくいます。

 このほか、治験を行っていることもあり、そこに興味を抱いて来られる人もいます。

 

外科病棟の看護師には、どのようなスキルアップの道がありますか

 看護師キャリアパスというものがあり、看護管理者・スペシャリスト・ジェネラリストがスキルアップの道としてあげられます。認定看護師や専門看護師などを目指す場合は支援制度があります。人事交流制度もあり、外科を突き詰めたいのなら救急や手術室、心臓血管外科などに異動を希望することもできます。当院は二次救急のため、三次救急を学びたい人はこのような制度を使って本院(東京大学医学部付属病院)に行くこともできます。最終的にそこで学んだことを当院に還元する、というスキルアップもあります。

 当院はチャレンジし続けている病院なので、他の科にチャレンジしてみたい人にはよいと思います。スキルアップとして大学院に進む人も多いです。学びたければ学び続けられる環境だと思います。

 他の国立病院に行くこともできます。国立大学病院同士で転勤できるので、家族の仕事で転勤が多い人や今は東京にいるけど数年後は地元に帰りたい場合は、そのままのキャリアをもって異動することができます。

 

外科病棟の看護師には、どのようなキャリアアップの道がありますか

 まず、当院は主任がいないので、副師長、師長、看護副部長、看護部長といったキャリアアップができます。認定看護師になって専門領域に卓越した実践者として、病棟内の患者さんがよりよい看護を受けられるように病棟を助ける役割を担っているスタッフもいます。当院には皮膚・排泄ケア、感染管理、がんに関する認定看護師が在籍しているため、これらの関連症状で困ったときはコンサルタントを受けています。

 外科病棟で取得できる専門・認定看護師は救急看護や集中ケアなどです。当院は二次救急なので、他の病院で経験を積んでから取得を目指す人もいます。がん患者さんも多いので、それに関連した専門・認定看護師資格を取得している人も多いです。


次のページでは、西井さんの人となりに迫ります!




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