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【連載】看護部長インタビュー

最終回 「思い」を伝えるためには、熱く語り、態度で示すことが大事【東邦大学医療センター 大森病院 副院長・看護部長】

  • 公開日: 2019/3/29
  • 更新日: 2020/3/26

 

東邦大学医療センター 大森病院の看護部長・佐藤ちず子さんは、チームの一員として力が発揮できる、人に求められる人材を育てること。そして、プロ意識の高い看護師たちが誇りをもって働き続けられる職場づくりを目指しているといいます。今回は「やるなら楽しく!」がモットーの佐藤さんに話を聞きました。

新しい取り組みに抵抗がない職場

──東邦大学医療センターには、ほかに大橋病院と佐倉病院の2病院がありますが、こちらの病院が最も規模が大きいのですね。

大森病院が東邦大学医療センターでの第一病院に当たります。若いスタッフが多いのですが、若いから未熟なのではなく、エネルギーにあふれていますね。

新しい取り組みに抵抗なく前向きに対応してくれて、「実践してみてダメなら考えましょうよ」という人が多く、やりたいと思うことを実現しやすい組織だと思います。特に2006年にFISH哲学を導入してからは、さらにやりがいをもってイキイキと働ける職場になっています。

──FISH哲学を採用する施設が増えていますが、貴院はかなり早い時期の導入ですね。何かきっかけがあったのでしょうか。

看護師には生命にかかわる責任ある仕事の重圧から、バーンアウトなどの消耗感や勤務継続意欲の低下といった精神面での健康状態が以前から心配されていました。

その改善が課題と考えていたので、03年から東邦大学の心理学教室の協力で「看護師の勤務意欲に関する調査」を毎年実施。モチベーションアップの契機になるかと思われた、04年のER棟オープンでも改善傾向になかったので、職場の活性化に効果があるとされるFISH哲学に着目し、06年に導入のためのプロジェクト・チームを発足させスタートしました。

全病棟で「スタッフ自慢大会」を開催

――職場の活性化に効果的といわれるFISH哲学に着目されて、具体的にはどんな取り組みをされましたか?

手始めに全病棟から代表として師長、師長補佐、主任らを集めて、各病棟が自慢できるところを披露する「スタッフ自慢大会」を開催しました。

ところが、異常の早期発見を職務とする職業柄か、問題点はすぐ目につく一方で、いざよいところを見つけるとなると四苦八苦です。誉めるにはその人に注目しなければ何も見えてこないんですね。

でも、自慢できる点を見つける過程は楽しくて心地よく、人を喜ばせたり感謝する気持ちの大切さを、自慢大会を通して体感できました。これを各自病棟へもち帰り、それぞれ自由に導入してもらったのです。

――どのような自慢が集まりましたか?

病棟の特性に合わせた工夫の中には、感心する取り組みがいくつもありました。例えば、ある病棟の師長は年度末に一人一人に頑張った点、よい点を記した表彰状を贈っていました。別の病棟では、病棟へ緊急入院の連絡が入ったとき、正直忙しいから躊躇したいところを、あえて皆で声を合わせて「いいとも~!!」と応える。このかけ声には思わず笑ってしまいましたが、スタッフの士気を上げることにつながるすばらしい工夫ですよね(笑)。

年に一度FISH大会を開催し、各病棟での実践を紹介していますが、責任ある仕事に前向きに取り組める自律性の高まりを実感できるようになりました。FISH哲学を導入して5年目、看護部の充実した職場が当院の風土になりつつある今、院内の他部署に広げていくことが次の目標ですね。

特に最前線で頑張っているドクターたちは看護師同様疲弊していますから、FISHをきっかけにもっとイキイキしてほしいです。看護部は病院スタッフに占める人数が多いので、病院全体に広めるための大きなうねり、原動力になりうると考えています。。

看護感が変わった3つの節目

──看護スタッフの大きな成長のきっかけはFISH哲学導入でしたが、佐藤さんご自身に転機となった出来事はありましたか。

これまでの看護歴の中で、私には大きな節目が3つありました。1つは、精神科への異動です。

それまで内科系の病棟に勤務していたので、検査データやバイタルサインをアセスメントしてスピーディーに処置することが「できる看護師」だと考えていました。でも、精神科では一転して患者さんが感じたり考えたりすることを待つのが中心。最初の頃はどうにもできないことがもどかしく、沈黙に耐えられませんでした。しかも繊細な感性をもつ患者さんには、表面的なかかわりだと見透かされてしまうんですね。

そのときの師長さんには、看護師として自信がないことなど諸々の不安を相談し、温かくサポートしていただきました。病棟の環境自体も「受け入れる空間」を成している感じでした。そこで、十人十色の患者さんとしっかりと向き合い、奥に何があるのか考えることが重要なのだと気づかされたのです。

――看護に向かうスタンスが覆らされるような異動でしたね。

今まで思い描いていた「看護観」ががらりと変わりましたね。その後の小児科勤務では、自分の2人の子どもと同じくらいの年齢の患者さんとその家族らが、病を抱えて懸命に頑張っている姿を通して「人生観」を見つめ直さずにはいられませんでした。私やわが子は自由に動く手足も話す力もあるのに、毎日不満を抱えてばかり。自分が情けなく、もっと頑張らなくてはと強く思ったものです。

今でも時折小児科病棟をたずね、子供たちからたくさんのエネルギーをもらっています。

(次のページは、佐藤さんが感じているリハビリ看護の奥深さについてです)

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