• 公開日: 2014/1/8
  • 更新日: 2020/3/26

【連載】アメリカの医療・看護レポート

第14回 アメリカの病院『仰天!最新の薬品管理』のはなし

海外の医療に興味があっても、実際に海外を訪れ、医療現場に触れることは容易ではありません。そこで、カリフォルニア州サンディエゴ市最大のERを持つSan Diego Kaiser Permanente病院(ベッド数392床、ERベッド数100床、年間のER患者数約98,000人、手術件数25,000件という大規模病院)での自身の経験と調査をもとに、アメリカにおける最新の病院事情をまとめました。


薬剤エラーを防ぐための最新機器が登場

今回は、ハイテク内服管理のおはなしです。

厚生労働省の医療事故報告書 によると、日本国内における2012年度の医療事故報告数は2,882件、そのうち薬剤に関連した事故は214件(7.4%)、療養上の世話、治療・処置に次いで多いと報告されています。

アメリカでも、薬剤については医療事故の主な理由の一つに挙げられています。

今回は、薬剤エラーの激減をもたらした画期的なハイテクマシーンを紹介します。
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ハイテク薬品管理マシーン「Pyxis」

こちらが、ハードウェアとソフトウェアを組み合わせ、あらゆる薬品の管理を可能にした完全コンピューター化されたハイテク薬品管理マシーン「Pyxis」です。一見するとコンピューターのついた冷蔵庫のように見えますが、驚きを超え感動する機能を備えています。

 

ハイテク薬品管理マシーン「Pyxis」実物写真

では、Pyxisを使ってどのように薬品管理をしているのか説明します。

  1. tまず、セキュリティー強化のため、アクセスには暗証番号と指紋認証で本人確認が必要です。
  2. タッチボタンで投薬予定の患者を選択します。
  3. 時間を入力します。
  4. 入力した時間に予定されている内服薬が自動的に画面に表示されます。それ以外にも、たとえば以下のような患者の投薬に必要な情報が、薬ごとに画面表示されます。
  5. 投薬する薬をタッチパネルで選択し、取り出します。

実践様子実践様子②

その際も、1つ1つ薬の引き出しが自動で開きます。 インプットされた薬以外には、一切触れることができません。

これだけでもかなり薬品エラーを防げそうですが、ハイテク機器を駆使した薬品管理はまだ続きます。

Pyxisは電子カルテと連携しており、だれがいつどこで何を何時にどのように飲ませたかも全て管理されています。全ての薬品にはバーコードがついており、投薬時にPCを使って薬のスキャニングと患者認証が必要です。

予定されていない薬、薬の量または数があっていない、時間が早すぎるまたは遅すぎるなど処方箋の情報と一致しない場合、たちまち電子カルテ上に警告が立ち上がります。ちなみにPCは各病室に設置されており、いつでもどこでも電子カルテにアクセス可能な環境が整っています。

Pyxisのメリットは、誤薬のリスクを徹底的に削減できるだけではありません。そのほかにも、

  1. 患者の治療を迅速に開始できる
  2. 業務の効率性アップ
  3. コスト削減

従来の薬剤師を介して行う薬品管理に比べて、新患の治療開始は30分、看護師が薬品準備にかかる時間は22分短縮でき、さらに、コストも従来の1/2に抑えることが可能という研究結果が報告されています。 

もちろん、薬剤エラーも各病院で大幅な減少がみられています。

ただ、たった1つの薬を取り出すにも、いちいちPyxisへのアクセスが必要なため、一見面倒なようにも感じてしまいます。しかし、皆口をそろえて「もう昔の内服カートには戻れない」と言います。慣れてしまうとこれほど合理的で便利なものはないそうです。

日本にも早く手動の内服カートに替わるハイテク薬品管理マシーンが上陸するといいですね。

次回は、「ハイテク点滴ポンプ」のはなしです。

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