• 公開日: 2019/12/25
  • 更新日: 2020/1/15

看護師の特定行為って何?認定看護師でも研修が受けられるって本当?

看護師としてより成長する手段として、認定看護師や専門看護師とともに、注目したいのが、「特定行為」です。特定行為について、言葉は知っているけれど、実は良く知らない・・・そんな方も多いのではないでしょうか?そこで今回は、ぜひ知っておきたい「特定行為」について、ご紹介します。

 

看護師の特定行為って何?

看護師の特定行為とは、そもそもどういったものなのでしょうか?なぜ、このような制度が始まったのでしょうか?まずはその部分について、解説していきましょう。

特定行為とされている38の行為

 

特定行為について、厚生労働省は以下のように定義しています。「診療の補助であり、看護師が手順書により行う場合には、実践的な理解力、思考力及び判断力並びに高度かつ専門的な知識及び技能が特に必要とされる次の38行為です。」特定行為とされている、行為の一部をご紹介します。

  1. 人工呼吸器からの離脱
  2. 胃ろうカテーテル若しくは腸ろうカテーテル又は胃ろうボタンの交換
  3. 褥瘡又は慢性創傷の治療における血流のない壊死組織の除去
  4. 脱水症状に対する輸液による補正
  5. 抗けいれん剤の臨時の投与

38行為について、厚生労働省のHPにて詳しく紹介されていますので、そちらもぜひご参照ください。
特定行為とは|特定行為に係る看護師の研修制度|厚生労働省

少子超高齢化に伴う様々なニーズに対応するため

2014年の保健師助産師看護師法の改正により「特定行為に係る看護師の研修制度」が創設されました。

日本看護協会では、この「特定行為に係る看護師の研修制度」について以下のような2つの「考え方」を公表しています。

  1. 本制度を活用し、看護師の専門性をさらに発揮し、少子超高齢社会における国民のニーズに積極的に応えていく。
  2. 本制度創設の趣旨を鑑み、在宅医療等の推進に向け、それぞれの活動場所で求められる看護師の役割をさらに発揮できるよう、本制度の活用を推進する

今回、特定行為とされている38行為を確認すると、これまでは医師でないと行うことができないため、看護師としてもどかしい思いをすることが多い行為が挙げられていることがわかります。

例えば、在宅や施設で働いている方の場合、利用者さんが脱水症状である疑いが強いとき、手元に輸液があるにも関わらず医師がそばにいないために点滴を行うことができず、病院へ搬送せざるをえなかった、というのもよくあるケースです。特定行為である「脱水症状に対する輸液による補正」を看護師が行うことができれば、病院へ行くという負担を利用者さんへ与えることはありません。

このように、看護師が特定行為を行うことで、患者さんや利用者さんなど、さまざまな場所、地域で療養している方がよりスムーズに医療を受けることができるようになるため、とても心強い存在になれるのです。

 

専門看護師、認定看護師との違いは何?どうやったら研修を受けられるの?

特定行為の内容を見てみると、看護師としてより高い専門性が求められていることがわかります。看護師としての専門性として思い当たるのが、すでに多くの看護師が取得している専門看護師・認定看護師ですが、特定行為の研修とはこれらの制度とどういった点が違うのでしょうか?また、どうしたら特定行為の研修を受けることができるのでしょうか?

専門・認定看護師とは「資格ではない」という大きな違いがある

特定行為について、「特定看護師」として専門看護師、認定看護師とともに資格を持っている方のように考えている方もいらっしゃるのですが、あくまで特定行為は「特定行為を行うための研修を終了している方が行える行為」であり、日本看護協会が認定している資格の一つではない、という大きな違いがあります。

一方で、特定行為を行える看護師を増やすために、認定看護師については資格取得に際し、2020年度より一部の教育機関において特定行為の研修を受けることが可能となります。2026年度以降は、すべての教育機関で特定行為の研修を受けられるよう準備が進められているほか、2021年度からは認定看護師の更新時に特定行為研修を受けられるようになります。この制度によって、今後は認定看護師の資格取得と同時に特定行為の研修を修了している方が増えると推定されています。

特定行為の研修は、指定研修機関で6ヶ月から2年の研修が必要

2019年現在、特定行為を行うためには指定研修機関や研修を行う区分別科目にもよりますが、おおむね6ヶ月から2年の研修を受ける必要があります。また、研修にかかる費用も30万円から250万円と幅広くなっており、個人で特定行為の研修に参加することはかなり難しいと言わざるを得ません。

そこで、働きながら取得できるよう、講義の一部はパソコン等インターネットを利用したe-ラーニングが実施されているほか、教育訓練給付などの支援制度を受けられる場合もあります。資格取得をお考えの場合はこういった制度を利用できるかどうか、調べておきましょう。

 

看護師としての成長、そして患者さん・利用者さんのニーズに応えられる「特定行為」

特定行為の一覧を見てみると、確かに「もどかし思いをすることが多い行為」である一方、「患者さんの命に直結する行為」も含まれているため、「怖い」と感じてしまう方もいらっしゃるかと思います。しかし、近くに常に医師がいない在宅医療の現場などでは、利用者さんの利便を上げる行為も多いようです。患者さん・利用者さんのより幅広いニーズに応えられる手段として、「特定行為の研修」参加を検討してみてください。

 

参考文献

特定行為に係る看護師の研修制度|厚生労働省
『厚生労働省 平成27年度 看護職員確保対策特別事業「特定行為に係る手順書例集作成事業」』(公益社団法人 全日本病院協会、平成28年2月)
『これからの医療を支える「看護師の特定行為研修」のご案内』(厚生労働省、平成30年2月)
特定行為とは|特定行為に係る看護師の研修制度|厚生労働省
日本看護協会の考え・活動方針|特定行為研修|日本看護協会
資格認定制度|日本看護協会

この記事を書いたのは

山村 真子 看護師として働きながら、ライターの仕事もしている、アラフォーママナース。看護系以外にも、育児や病気、介護など幅広い分野の執筆を行っています。時短勤務中だが、毎日定時に帰れるはずもなく、保育園の送迎はいつもギリギリなのが最近の悩み。

イラスト・k.nakano

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