【マンガ】ナース専科が調べてみたでも取り上げた、2025年問題。超高齢社会を迎えるにあたって、地域包括ケアシステムが策定され、医療のあり方、伴い看護師の働き方も変化していこうとしています。医療の現場では、実際にどのような動きがあるのでしょうか?
「地域包括ケアネットワークを確立する」ことを目標に、愛知県名古屋市の社会医療法人として地域の医療に貢献されている社会医療法人宏潤会の宇野雄祐 理事長に、お話を伺ってきました。今、話題の「地域連携」。社会医療法人宏潤会では、どのような取り組みがあるのでしょうか?また、気になる「これからの看護師の働き方・看護師に求められること」についても伺ってみました。
本日お話を伺ったのは…
社会医療法人宏潤会は、名古屋市内で社会医療法人の認定を受けている3法人のうちの1つ。高度急性期病院である「大同病院」では、名古屋市では数少ない小児救急を持ち、24時間の受け入れをしています。宏潤会では、高度急性期病院の他、クリニック、老人保健施設、訪問看護ステーション、居宅支援事業所など幅広いフェーズの患者さんを受け入れられる施設を運営しています。
地域連携として、実際にどのようなことをされているのですか?
地域の中で声をかけて、賛同してくれた診療所と進めている取り組みです。病院の機能分化が進むにつれ、患者さんの診療情報をきちんと地域内で共有できることが、より重要になると思います。
また、名古屋市の南区・緑区・東海市にある24の医療・介護施設が集まる「医療連携協力事業」も設立しました。ここでは、総会の他に「診療」「看護」「医療事務」の3つの分科会に分かれて、定期的に情報共有を行っています。これまでも、各法人の間でつながりはあったのですが、あくまでも各々のつながりに依存したものでした。それを、協力事業として改めて組織し一同に集まることで、より地域全体での連携を取れるようにするという活動です。
具体的な取り組みとしては、例えば「診療」分科会では、特に「緩和ケア」「精神疾患」「救急」のテーマで各病院がどういった機能を持っているのかという情報共有をし、各病院間での転院や、往診の応援をスムーズにできるようにしています。地域全体で、患者さんに対して最適な医療を行えるようにというものです。
「看護」分科会では、病院によって異なる分野の認定看護師がいるため、病院間で合同の研修もしています。最近だと、褥瘡ケアの研修がありました。こうして定期的に他院の看護師と関る機会ができることで、コミュニケーションの敷居が低くなり、連携も取りやすくなります。
患者さんにより最適な医療を提供できるよう、診療側が不便なこと・困っていることは最低限解決すべきと考えています。
看護師の働き方や、看護師に求められることは、今後どのように変わっていくと思われますか?
しかしこれからは、医療機関自体が、高度急性期、急性期、回復期、慢性期とバランスよく機能分化していきます。また、訪問看護などの在宅医療もあり、看護師が職場として選べる場が多様化してきています。
患者さんを、1つの医療機関で診(看)るのではなく、地域内の医療・介護施設で連携して診(看)ていく方向へとシフトしている中、どの場所で働くにせよ重要なことは、「自分がどのフェーズの看護をしているのか/どのフェーズの看護に関わりたいのか」を、全体の流れを理解した上で明確に持っていることだと思います。特にマネジメント層をキャリアとして目指す方々は、目の前のことだけではない1つ上の視座を持っていることが、ますます必要になってくると思います。
編集後記
宇野 理事長にインタビューをさせていただき、地域最大規模の病院として、強いリーダーシップを発揮して地域連携に取り組んでいらっしゃるのだなと感じました。「病院や地域における医療の課題を解決することが、そのまま患者様への貢献になる」という宇野理事長の考えは、地域連携を通して名古屋市全体に浸透していくのではないかと思います。
“今後の看護師”というところにについては、「より高い視座を持つことの重要性」という貴重なご意見を頂きました。医療は、理事長だけで出来るわけではありません。医師だけで行うものでもありません。当たり前ですが、医療・看護に関わる看護師もまた重要な役割を担っており、時に理事長とも同じ目線で物事を考え、より良い地域医療を提供するにはどうしたら良いのか?を意見出来る人材であってほしいという願いが込められているのではないかと思いました。
この記事が、看護師のみなさんがご自身のキャリアについて考えるキッカケとなれば幸いです。
最後に、このインタビューに快く協力頂きました宇野 理事長をはじめ、大同病院のスタッフの皆様に感謝申し上げます。ありがとうございました。