「膵臓がん」の看護事例を見てみよう

こんにちは！ わたしの名前は「こなす」、ほすぴぃで看護師さんに寄りそうプリセプターのような妖精のような存在。 これからよろしくね！ まず、基本的なことを確認しよう。 看護過程で大切な「SOAP」。何か分かる？ 【S】主観的情報。患者さんの話など。 【O】客観的情報。観察・検査など。 【A】アセスメント。分析・評価。 【P】看護計画。 それではこの患者さんの入院前の様子を見ていこう！

膵臓がんの患者さん「猪衛門さん(68歳)」

	まさか膵臓がんになるとはね。 今まではほとんど病気もせずに来れたんだが。それが奇跡だったんだなぁ。
	抗がん剤を前の病院でやったけど、あまり効果がなかったみたいでね。
	転院前の大学病院からの診療情報提供書。 ■半年前 食欲不振あり。 食事を摂ると食後腹痛が生じる。 体重も平常時より5kg減少。
	■4ヶ月前 心配した妻の勧めで近医の消化器科クリニック受診。 腹部エコー上で主膵管の拡張の疑いを指摘される。
	■3ヶ月前 精密検査(CT・MRPC・ERCP)を受ける。 採血・採尿実施。 腫瘍マーカー(CA19-9、Span-1、Dupan-2、CEA)、膵酵素(アミラーゼ、リパーゼ、エラスターゼ1、トリプシン)などを調べる。 膵頭部膵管の狭窄・尾側膵管の拡張・胆管の狭窄がみとめられた。
	膵臓がん(膵頭部中央がん)ステージⅣb期、肝臓・骨・大動脈周囲のリンパ節転移ありと診断。 眼球黄染・腹部膨満軽度あり。

膵臓がんは初期の段階ではほとんど症状がない。
「なんか体調がおかしい…」と思い、検査してがんと診断されたときにはすでに手遅れ、ということが多いんだ。
生存率が最も低いがんと言われているよ。

	猪衛門さんはステージⅣのb期。ほかの臓器に転移していて、膵臓がんの中では一番悪く、末期の状態。 この段階では手術はおこなえない。 抗がん剤による化学療法が標準治療となるよ。これはがんをなくすためのものではなくて延命のためにおこなわれる。
	■3ヶ月前 大学病院にて抗がん剤治療開始。 ・nab-PTX(ナブパクリタキセル)療法 ・FOLFIRINOX療法(フルオロウラシル(5-FU)＋レボホリナート＋イリノテカン＋オキサリプラチン)
	■1ヶ月前 抗がん剤治療では効果は得られず、症状悪化。 副作用も強い。 紹介状で、セカンドオピニオンとして当院消化器科を受診。 診断は膵臓がん(膵頭部中央がん)ステージⅣb期。
	抗がん剤治療をやめて最終的に自宅に戻ることを患者・家族が選択。 当院での入院を希望されて転院。 自宅に戻る前の疼痛コントロール目的での入院。
	抗がん剤治療に対しては賛否両論あるよね。 副作用は避けられないので、ただQOLを低下させる治療という意見も。 でも患者さんにとっては、そのような選択肢でも「生きるためにできる治療がまだある」と希望を持つことにもつながるよ。
	治療をすることが希望を持つことにつながる患者さんもいる中で、猪衛門さんは「もう治療をしない」という選択をした。 その背景にはどういう思いがあるんだろう…？
	この事例は、膵臓がんの病態理解と緩和ケアなど末期の対応に注目して進めていくよ。 猪衛門さんの思いを考えてそれを尊重できる関わりをしていこう。
	膵臓について、どれくらい知ってる？

🍸 解いてみよう！
ホルモンを分泌するのはどれ？

①前立腺

②子宮

③膵臓

④肝臓

解説するね。 [1](×)前立腺は精子に栄養分を供給する前立腺液を分泌する。男性ホルモンの影響を受けるけど前立腺自体はホルモンを分泌しない。 [2](×)子宮は、卵巣からのエストロゲン・プロゲステロンなどのホルモンの影響を受けるけど、子宮自体はホルモンを分泌しない。 [3](○)膵臓は膵液を分泌する外分泌器官であると同時に、血糖調節に関わるインスリン・グルカゴンなどを分泌する内分泌器官でもある。 [4](×)肝臓はホルモンの代謝をおこなうけど、肝臓自身はホルモンを分泌しない。

膵臓には2つの役割があるよ！

■外分泌機能
食物の消化を助ける膵液の産生。
産生した膵液は膵管によって運ばれて、1本の管(主膵管)に集まる。
主膵管は膵臓と総胆管をつなぐ。

■内分泌機能
血糖値の調節などをするホルモン(インスリンなど)の産生。

膵臓がんは膵臓のどこに発生するんだろう？

膵臓がんは主に膵管から発生するよ。
膵液が通る主膵管が詰まると、作られた膵液が排泄できなくなって、内部の圧力が高まるんだ。膵管自体が拡張して、膵臓が炎症がしてしまう(随伴性膵炎)。

随伴性膵炎は以下の症状を引き起こす。これらの症状は比較的早期にみられるみたい。

■心窩部痛
■左上腹部痛
■左背部痛など疼痛
■血中膵酵素(アミラーゼやエラスターゼ)の上昇

🍸 解いてみよう！
膵臓がんの症状でないものはどれ？

①黄疸

②糖尿病

③腹痛

④くも状血管腫

解説するね。 [1][2][3](×)膵臓がんの症状。 [4](○)肝硬変の症状。

病気が進行すると持続的な腹痛や背部痛が出現してくる。
主膵管の閉塞で膵外分泌能が低下して食物の消化吸収が障害される。下痢、腹痛、体重減少などが生じるよ。
内分泌機能も障害されると口渇、多飲、多尿などの糖尿病の症状が出る。

膵臓がんが胆管を圧迫し胆汁の流れが妨げられると黄疸が出現するよ。
黄疸の初期症状では尿の色が濃くなったり、眼球結膜が黄色味を帯びる。黄疸が進行すると全身の皮膚が黄色みがかり、かゆみなども出るんだ。
十二指腸を狭窄させると、食物のうっ滞、食欲不振、悪心、嘔吐、消化管出血などの症状が現れる。

緩和ケアがおこなわれるのは緩和ケア病棟だけじゃない。どこの病棟にいる患者さんにも適応しうるよ。
疼痛緩和に関しては世界保健機関(WHO)から「3段階の除痛ラダー」という指針が出ている。それを基にして鎮痛剤が投与されるのが一般的。
詳しく知りたい人は勉強ノートを見てみてね。

🍸 解いてみよう！
世界保健機関(WHO)のヘルスプロモーションの考え方で適切なのはどれ？

①専門職による健康教育が主軸になる

②人々が自らの健康をコントロールする

	解説するね。 [1](×)ヘルスプロモーションの主体は人々にあり、医師や看護師は人々が自分の力で健康や幸せを手に入れるための支援的な役割を担う。 [2](○)ヘルスプロモーションは「人々が自らの健康とその決定要因をコントロールし、改善することができるようにするプロセス」と定義されている。
	猪衛門さんの疼痛はどれくらいなのか、今内服している鎮痛剤で除痛できているのかをこれから確認していこう。

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