子どもの誕生は幸せなこと。でも、成長するにしたがって教育費に対する不安が大きくなってくるという人は多いようです。複数人数の子どもを育てる場合、家計における教育費の割合が50%を超えるケースがあるというデータもみられ、教育費の負担は家計に重くのしかかってしまいます。
vol.4でも積立投資を利用した教育費の貯め方について少し触れましたが、今回は教育費について基本的なところからお話ししていきます。金額はどれくらいかかるのか、どのように準備し、その負担を軽減していくのか、ポイントを解説していきたいと思います。
■教育費の基本を知っておこう
教育費は、子どもがいる家庭では必要経費です。親としては子どものためにとつい無理をしがちですが、そのせいで家計が立ち行かなくなってしまっては困ります。ですから、まずは教育費としていくら準備すればいいのか、またその準備はどのようにすればいいのかを確認して、そのうえで、希望に合わせて予算を考えていきましょう。
1.教育費の平均金額
教育費は、子どもがどのような進路を選ぶかによって大きく変わります。表1で示した学校ごとに必要な金額を参考に、教育費の総額をイメージしてみましょう。公立の小・中学校、公立高校と進み国公立大学を卒業すると合計で732万円、すべて私立に進学すると2131万円、小・中学校は公立、高校から私立を選択した場合は1090万円と金額は変わってきます。
また、この教育費はあくまでも平均額なので目安にしてください。また、塾や習い事に行かなければ、学校教育費のみで収まります。逆に習い事の種類によっては、もっと費用が掛かってしまう場合もあります。
表1 学校教育費の平均額
文部科学省:平成30年度子供の学習費調査(2020年3月25日閲覧)https://www.mext.go.jp/content/20191212-mxtchousa01-00000312303.pdf、
文部科学省:国立大学基礎データ.2019年度学生納付金調査結果(2020年3月25日閲覧)https://www.mext.go.jp/component/amenu/education/detail/icsFiles/afieldfile/2019/10/10/128448110_1.pdf、
文部科学省:私立大学等の平成30年度入学者に係る学生納付金等調査結果について(2020年3月25日閲覧)https://www.mext.go.jp/amenu/koutou/shinkou/07021403/141203100001.htmを元に作成(千円以下を四捨五入)
2.教育費を貯めるための目標と時期
教育費を準備する際には、まずいつまでにどのくらいの金額を準備すればいいのか、具体的に目標を立てることがポイントです。教育費は、予定した金額すべてが1度にかかるわけではありません。学校生活が続くなかでも、私立の学校を選択するとき、一人暮らしが始まるときなど、負担が大きくなるタイミングを目安にして計画を立てていくとよいでしょう。
例えば、高校と大学は私立をと考えた場合、「子どもが中学3年生(15歳)になるまでに750万円(私立高校分291万円+私立大学分459万円)を貯蓄したい」という目標ができますね。このように、いつまでにいくら必要なのか具体的に考えることが、目標を明確にしてくれます。
3.負担を軽減するための公的な支援制度
日本の教育費負担の重さは、国際的にみても大きいといわれており、それが子どもをもつことを難しくしていると考えられています。そのため、少子化対策の一環として、教育費の負担を軽減するさまざまな施策がなされています。2019年10月から幼児教育の無償化が始まったことが記憶に新しいと思いますが、2020年4月からは私立高校と大学等の授業料無償化の制度も予定されています。図1に子どもの就学に沿って教育費に対する主な公的支援制度を示しました。それぞれの制度は、所得の条件や申し込みの締め切りなどが異なるため、余裕をもって確認しましょう。また、都道府県ごとの支援制度のもあるので、ぜひ調べてみてください。
図1 教育費に関する公的支援
内閣府:児童手当制度のご案内(2020年3月25日閲覧)https://www8.cao.go.jp/shoushi/jidouteate/annai.html、
国税庁:No.1180扶養控除(2020年3月25日閲覧)http://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1180.htm、
文部科学省:幼児教育の無償化に関する住民・事業者向け説明資料(2020年3月25日閲覧)https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/youchien/1412285.htmを元に作成
■家計に対する負担軽減のコツ
教育費は長期にわたって固定されるので、家計が変動するような場合特に負担になります。そのため、なるべくその負担を減らせるような工夫が必要です。どのような方法があるのかご紹介します。
1.○○手当は使わないで「貯める」
子育て支援制度の1つである児童手当では、中学校卒業までの間で1人当たり約200万円(所得や子どもの人数によって変動あり)を受給することができます。この児童手当を使わずに貯めておくことで、実質負担額を減らすことができます。また、会社から家族手当がある場合は、それも貯めていくことで負担はかなり軽減できるでしょう。
例えば、家族手当が毎月5000円の場合、中学校卒業までの15年間で90万円になり、児童手当と合わせると290万円の負担軽減になります。前述のように15歳までに750万円を貯めることを予定として考えた場合、実質負担額を460万円にまで減らすことができるという計算になります。
2.習い事や塾の費用を抑える
教育費は子どもへの投資だと考え、子どもの可能性や選択肢を広げるために、多くの習い事や塾を利用する家庭が増えてきました。また、周りの家庭に合わせて無理をして通わせるケースもあり、教育費破産のような状況になっている家庭もあります。
習い事や塾は、子どものやる気や目的など考慮して、家計に合わせて選択するようにしましょう。特に塾に関しては、あくまでも学校を補助するものと捉えることが大切です。まず学校の授業をきちんと受け、わからないことがあったら先生に質問するなどしても学習効果が上がらないようであれば、その教科のみ塾の利用を検討しましょう。また、対面型ではなく、通信型の塾を選ぶことでも費用は大きく抑えることができます。あらゆる方法を検討してみましょう。
3.奨学金やローンを利用する
教育費を貯蓄することが難しい場合、奨学金などを利用するという方法もあります。奨学金の返済に関するトラブルも話題となり、奨学金は考えたくないという声も聞かれますが、近年は返済不要の給付型奨学金も増えてきています。また、学校独自で減免制度を設けている場合もあるので調べてみましょう。
■教育費はこうやって貯める
それでは、教育費はどのようにして貯めればいいのか具体的に考えてみましょう。
1.用途別に貯蓄手段を変える
教育費を貯めるとき、いまの超低金利時代では預貯金だけでは増やす効果が弱く、家計の負担は大きくなりがちです。同じ教育費でもその用途によって性質は変わります。修学旅行や学校生活で必要になる細々とした費用の準備には預貯金を活用し、高校や大学の学費など長い準備期間が必要になるものに関しては保険や投資などを上手に組み合わせていくとよいでしょう。
貯蓄の手段ごとの特徴と違いを図2に表しましたので、選択の参考にしてください。
図2 貯蓄手段による違い
2.毎月の貯蓄手段の決め方
毎月の積立額は、単純に計算すると以下の計算式となります。
教育費は準備開始が早ければ早いほど家計の負担額を減らすことができます。
例えば、子どもが0歳から15歳の間に500万円を準備すれば、1カ月あたりの積立額は2万8000円になりますが、6歳から準備を始めたとすると月に4万6000円が必要になります。このように、遅くなるほど月々の家計に対する負担率は大きくなるため、できるだけ早く準備を始めるようにします。自動振替などを利用して先取り貯金をするのもよいでしょう。
また、vol.3~4で解説した積立投資の活用も検討してみてください。長期間の運用により値下がりリスクを下げ、複利の効果でより大きく増やすことが期待できます。毎月3万円を15年間積み立てた場合、3万円×12カ月×15年で貯金は540万円になりますが、平均利回りが3%の場合は約649万円になり、平均利回りが5%の場合は約736万円(運用益に20.315%課税後)となります。ですから、目標金額と目標利回りから逆算すれば、毎月必要な積立額を割り出すこともできます。それによって、積み立てる金額を減らせる場合もあります。
参考資料
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●文部科学省:白書・統計・出版物 統計情報 子供の学習調査 結果の概要 結果の概要-平成30年度子供の学習費調査 2 調査結果の概要(2020年3月25日閲覧)https://www.mext.go.jp/content/20191212-mxtchousa01-00000312303.pdf
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●文部科学省:教育 小学校、中学校、高等学校 高校生等への修学支援 高校生等への修学支援 「私立高等学校授業料の実質無料化」について(2020年4月から) 2020年4月からの「私立高等学校授業料の実質無償化」リーフレット(2020年3月25日閲覧)https://www.mext.go.jp/content/20200117-mxtshuugaku01-14182011.pdf
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