国際化の時代、看護師にも英語は必要でしょうか? 移住者や観光客が増えているから、というのはもちろん、実はそれ以上に、看護師に英語が必要なワケがあるのです。看護師と英語の深ーい関係を、英語教育の現状に触れながら、解き明かしていきます。
看護師過剰時代の到来
深刻な看護師不足が社会問題となっている日本の看護師求人市場には、好条件の求人があふれています。
そのような中で“看護師過剰時代”といわれても現実味を帯びたものに聞こえないかもしれません。
看護学科に人気が集まるのは、相変わらず「看護師は転職に困らない安定した職種、リストラからは無縁」と信じられているからでしょう。しかし、この“看護職は一生安泰”という神話は、この1~2年で崩壊するでしょう。
日本がアメリカの二の舞となるのも時間の問題といえるのは、前回述べた看護学科新設ラッシュに関することだけではありません。厚生労働省は、看護師の大リストラともとられかねない方針を打ち出しているのです。
まず、なぜここ数年で看護師紹介ビジネスが過熱し、好条件の看護師募集が増えたのでしょうか。
そのきっかけは、2006年の診療報酬改定「7対1病床」です。
厚労省は、7人の入院患者に対し看護師1人を配置する急性期病床を推奨、この手厚い配置をもった病院は、国からの高い報酬が約束されました。
高度な医療と集中看護で入院日数を縮め、医療費を抑える狙いでしたが、これが“大誤算”に終わりました。
国が当初見込んでいた急性期7対1病床は4万床。ところが増収をあて込んだ多くの病院が7対1病床に飛びつき、36万床にまで達してしまったのです。
それだけではありません。看護師不足といわれる中、看護師争奪戦が激化し、好条件を出せる首都圏病院に看護師が集中、地方病院や在宅看護に大打撃をもたらしました。
いよいよ始まる「看護師大リストラ」
皮肉なことに、医療費削減政策が医療費の増大に拍車をかけた「7対1病床」の打開策として、国は方向を一転。厚労省は、2014年4月の診療報酬改定で、増えすぎた急性期7対1病床の25%を削減、つまり36万床のうち9万床を切り捨てるとしました。
これは人員の削減にも直結し、約1万7,000人の看護師が解雇または転職を余儀なくされる計算となります。
さらに急性期病床の削減は続き、病院看護師のニーズは今後10年間で14万人減少するとみられます。
現在、2016年度診療報酬改定に向けて、具体的な改定項目の検討が進んでいます。急性期病棟削減のほか、世界一長いといわれる患者在院日数の減少と在宅医療へのシフトが焦点の1つとなっています。
事実、アメリカでは手術後1~2日でドレーンを挿入したまま帰宅し、在宅医療に移行するのは一般的です。
医療現場は常に国の政策に左右され、時代の流れが医療・看護のニーズに直結します。看護師過剰時代には、時代を先読みし、時代のニーズに備えのある看護師が選ばれ、勝ち残れる。そのためのキーワードは「英語力」です。その理由を次回お話します。
次回は、医療現場激変で問われる英語力についてです。