1. トップ
  2. ナーススクエア
  3. 看護クイズ・読み物
  4. エッセイ
  5. 第7回 『訪問看護とターミナルケア』―入浴介助の願い

【連載】泣いて笑って訪問看護

第7回 『訪問看護とターミナルケア』―入浴介助の願い

  • 公開日: 2014/1/6
  • 更新日: 2020/3/26

 

医療の場が在宅へと比重が高まるものの、まだまだ知られていない訪問看護。ここでは訪問看護の実際について、エピソードを通じてご紹介します。


どうしてもお風呂に入りたい! その時ナースのとった行動とは

一般的に、血圧が70台、酸素も不安定で呼吸状態が悪いとなれば、入浴の許可はおりないのが普通であろう。

しかし、ターミナルの方の入浴介助に関しては、医師により指示が異なってくる場合も多い。
死ぬ前にどうしてもお風呂に入りたい、あるいは入れてあげたいという希望があれば、例えバイタルがあり得ない数値であったとしても、そのままご帰天される可能性も説明した上で、許可が出ることもある。

今回のケースは、92歳のおばあちゃん。もう10年以上風呂に入っておらず、それこそ死ぬ前にどうしてもお風呂に入りたいと訴えたそうだ。

お金がなくて訪問入浴のサービスさえ利用できない上に、とても歩ける状態ではない。仙骨部はひどい褥瘡で痛みも強い。

さて、どうしたものかと考えた末にとった先輩ナースの行動は、ベビープールを利用しての入浴だったという。

ベッドサイドに防水シートをしき、2人の看護師でバケツリレーでお湯を溜め込む。ベビープールは浅いため、仙骨があたってもなるべく痛くないようにと底にはタオルを敷いたとか。

汗だくで、2人の看護師で抱えるようにしてベビープールに浸らせてあげると、お尻が痛い!と叫びながらも、その利用者様は「なんて気持ちいいんだろうねえ…気持ちいいねえ…」と何度も何度も繰り返されていたとのこと。

蓄積された垢は当然一回ではおとせるはずもなく、「○さん、また次の時に洗おうね!」と会話していたのが最後になったそうだ。

「あの時の嬉しそうな顔は忘れられないよ。本当に幸せそうだった。あんなことができるのは訪問ならではだね(笑)」と先輩ナースは目を細め、少し寂しそうに笑った。

※続いては、「残された時間を、その人らしく過ごすために」です。
<!–readmore–>

残された時間を、その人らしく過ごすために

訪問では、当然のことながら余命宣告をされた方々と向き合うことも多い。しかし、死と向き合う恐怖心や、生きたくても生きられない悔しさを全て受け止めることはとても難しい。

よって、せいぜい私たちにできることといえば、先生との間に入り、残された時間をいかに辛くなく、その人らしく過ごすことができるのかということを一緒に考えていくこと位なのかもしれない。

具体的な方法としては、一番は、こまめに主治医とコンタクトをとること。
病院とは違い、訪問は医者が近くにいないため、主に医者とのやりとりはFAXや手紙になる。
受診の度に、利用者様の痛みの度合いや疲労度、食事や水分の摂取状況、排泄や睡眠状況など、精神面の変化も加え、細かく報告していく。

それを繰り返していくと、段々と先生と看護師と利用者様のベクトルが合ってきて、共に闘う戦友のようにさえなってくる。
そしてそれは結果として、利用者様の精神的ケアにもつながっていくのではないだろうか。

いつだったか、何度断っても、訪問に行く度に、お礼の気持ちを渡そうとしてくるおばあちゃんがいらした。
当然毎回断ってきたのだが、もう、残された時間がわずかとなったある日、訪問すると、娘様が、「母から預かりました」と手紙を渡してきたのだ。そこにはヨレヨレの字でこう書いてあった。

「いつもいつも、汚いことばかりさせてすんません。本当にいつも感謝してるのに、目が覚めるといつも看護師さんが帰られた後で、ちゃんとお礼も言えず申し訳ないと思っています。私が死んだら、もう立場とか関係なくなるでしょう。だからその時は私の気持ち、受け取って下さいね…」と。

読んでいるうちに涙が出た。もうその気持ちだけで充分ですと心が一杯になった。
結局それから数日後にそのおばあちゃんはご帰天された。

ターミナルケア。
まだまだだなと感じることも多いが、残された時間を、より、その人らしく過ごせるよう、最後まで寄り添っていけたらと思っている。

この記事を読んでいる人におすすめ

エッセイの新着

「看護師の介護離職は共倒れのリスク!仕事と介護を両立するポイントは?

介護のために離職する「介護離職」が問題視されています。家族の介護の負担は想像以上に大きいものです。しかし実は、負担を軽減するためと思って介護離職をしても、実際には期待していたほどの効果はありません。むしろ、貯金を切り崩していく日々に不安を感じ、消耗していく看護師が多いのが現実です...

2020/5/27

【2020年保険料引上げ!】介護保険制度の基本と今後の見通し

2020年3月分(4月納付期限分)より、全国健康保険協会の介護保険料率の引上げが行われました。40歳以上になると介護保険への加入が義務付けられています。介護保険料は介護の現場を支える財源となります。看護師が介護保険の基本からしっかり理解できると、患者さんへ的確な説明・提案ができる...

2020/5/25

病院の福利厚生ってなに?どこを比べればいいの?

福利厚生は職場選びにおける重要な判断材料の一つです。福利厚生についてしっかりと理解することができれば、額面給与だけではわからなかった職場の良し悪しが見えてきますよ。また、医療機関ならではの福利厚生が準備されている場合もあります。今回は福利厚生について説明しますので、ぜひ参考にして...

2020/5/21

【コロナ・ショック】不況時に看護師がお金を守るためには?

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、世界中の経済が大混乱しています。経済が完全に復活するまでにどのくらい時間がかかるのか、資産にも影響が出て不安を感じている人も多いかもしれません。 しかし、看護師は不況に強い職業です。不況時でも落ち着いて行動すれば資産を守ることができます。今回...

2020/5/18

終活?人生会議?どのように人生の最期の準備をすべきか解説

より良い人生の最期を迎えるためには事前の準備が欠かせません。命の危機が迫った状態になると約7割の方が、これからの医療や介護の方針について意志表示できなくなるといわれています。また、死を迎えるまでの生活を考える上でお金は切っても切り離せない存在です。 超高齢化社会に突...

2020/5/13

訪問看護の新着

第7回 訪問看護準備室を発足

500円で健康診査が受けられる「ワンコイン健診」で注目を浴びるケアプロ。同社が、3.11の被災地支援の経験から必要性を痛感して立ち上げた、訪問看護ステーションの奮闘記です。今回からは、第2章に突入「いよいよ開業!!」5回連載の予定です。 訪問看護準備...

2018/9/28

第6回 訪問看護業界に新しい風を

500円で健康診査が受けられる「ワンコイン健診」で注目を浴びるケアプロ。同社が、3.11の被災地支援の経験から必要性を痛感して立ち上げた、訪問看護ステーションの奮闘記を連載します。第1章は「訪問看護起業前夜」。今回が1章最終回です。 訪問看護業界に新しい風を...

2018/9/14

第5回 その人らしい療養生活を送るには

500円で健康診査が受けられる「ワンコイン健診」で注目を浴びるケアプロ。同社が、3.11の被災地支援の経験から必要性を痛感して立ち上げた、訪問看護ステーションの奮闘記を連載します。第1章は「訪問看護起業前夜」です。 在宅医療や終末期医療はどうあるべきか ...

2018/8/31

第4回 ゼロから訪問看護を立ち上げる

500円で健康診査が受けられる「ワンコイン健診」で注目を浴びるケアプロ。同社が、3.11の被災地支援の経験から必要性を痛感して立ち上げた、訪問看護ステーションの奮闘記を連載します。第1章は「訪問看護起業前夜」です。 ゼロから訪問看護を立ち上げる 私たち...

2018/8/29

第3回 増えないならケアプロがつくろう!

500円で健康診査が受けられる「ワンコイン健診」で注目を浴びるケアプロ。同社が、3.11の被災地支援の経験から必要性を痛感して立ち上げた、訪問看護ステーションの奮闘記を連載します。第1章は「訪問看護起業前夜」です。 必要なのは若手の看護師 私たちは、平...

2018/8/29