• 公開日: 2014/1/8
  • 更新日: 2020/3/26

【連載】宇田川 廣美の「ちょっと社会を見渡してみました」

診療報酬改定で政策と患者の間に板ばさみ

2か月前とからガラリと変わったスタッフの対応

「もう来ちゃいけないってことですか?!」

病院の受付から大きな声が聞こえてきました。

Ns 「そうではなくて、シュウシンという形になりますから……」

男性 「シュウシン?」

Ns 「当院での診療は終了したという意味です」

男性 「そんな、まだ痛くて長い時間歩けないのに」

Ns 「ですから、あとはご近所の開業医の先生に診てもらってください」

この病院は560床を有し、地域医療支援病院に指定されています。高度医療を必要とする人の診療が本来の役割ですが、近所に住む人たちはかかりつけ病院のように利用しています。がんを患い手術後の経過観察等を受けている私の母も同様で、整形外科疾患でもこの病院を利用していました。

診療科間の連携がスムーズでトータルに診てもらえる安心感と、どの診療科もドクターが親身に診察してくれていることがこの病院を選ぶ大きな理由でした。

ところが……、この日の医師は今までと様子が異なりました。診察が終わるといつもの笑顔はなく、居心地悪そうに言いました。

「この病気(変形性膝関節症)は加齢によるもので、薬を使いながら痛みと付き合っていくことが大切です。もしくは手術をするかです。手術をするのなら、このまま当院で診療を続けますが、そうでなければ近くの整形外科に通ってください、紹介します」

手術を望まない母は別の近くの病院に行くことに決めましたが、医療政策の知識をもたない86歳の身にしてみれば信頼してきた病院に裏切られたような気持ちになったことでしょうです。一方、その背景にある医療政策と患者の板挟みになっている医師やナースを、痛々しく感じました。

変化の原因は「大病院の紹介率・逆紹介率推進」

2014年度診療報酬改定では「機能分化」をキーワードに、急性期病床や7:1入院基本料をとる病院の絞り込み、外来では紹介率・逆紹介率を高める取り組みが推進されるようになりました。

特定機能病院と500床以上の地域医療支援病院では、紹介率・逆紹介率が50%以上を満たさないと初診料や再診料が引き下げられ、30日分以上の薬を処方した場合、その処方料や処方箋料、薬剤料が60%減額されます。そのため、外来では紹介率・逆紹介率50%以上の条件を満たそうと必死です。

しかし、そのために現場の医師やナースのストレスが増えたり、患者から誤解を受けたりしてトラブルになったりする現実もあるようです。

こういった現場スタッフの負担を軽減し、よりスムーズに改訂の目的を一般の人たちに理解してもらうために、厚労省や日本医師会、日本看護協会といった関係団体が一体となって、医療政策を生活に結びつけながらわかりやすく説明することが大事なのではないか、そんなことを感じた母の付き添いでした。

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