コラム
  • 公開日: 2021/12/6

【連載】知っておきたい お金のはなし

看護師はiDeCoか つみたてNISA、どちらがいい? FPが改めて詳しく紹介!

これまでも何度か取り上げてきたiDeCoとつみたてNISA。
「iDeCoかつみたてNISAを勧められるけど、実はまだよくわかっていない」
このような声をよく耳にします。
特にハードワークの看護師さんは「これ以上、仕事以外のことまで細かく調べる時間がない」という人も多いのではないでしょうか。

 

 

そこで今回は、忙しい看護師さん向けにiDeCoとつみたてNISAについて、改めて解説します。
この記事を読めば、もう「よくわからない」と悩むことはありません。
「iDeCoもつみたてNISAも気になるけど、じっくり調べるのが面倒でそのままになっている」
という方は参考にしてください。




 

【比較表あり】忙しい看護師におすすめのiDeCoとつみたてNISAとは?

iDeCoとつみたてNISAは、一定の条件下であれば投資を非課税で行える節税制度です。

つまり投資商品そのものの名称ではなく、お得に投資できる制度の名称です。
各制度の特徴を以下の表にまとめました。


iDeCo
(個人型確定拠出年金)
つみたてNISA
(少額投資非課税制度)
老後資金を備えるための私的年金制度 制度の概要 長期の積み立て分散投資を支援する非課税制度
定期預金、保険、投資信託 制度内で運用できる商品 投資信託、ETF
20歳以上60歳未満
※2022年5月以降は加入年齢が65歳未満に延長される
対象年齢 20歳以上
※2022年4月以降は成年年齢引き下げにより加入年齢は18歳以上になる
原則、60歳まで
(希望すれば70歳まで延長可)
運用期間 20年
下限:月5000円
上限:現在加入している公的年金の種別によって異なる。14万4000円~81万6000円まで
運用金額 下限:証券会社によっては100円から積み立て可能
上限:年間40万円まで
・掛金は全額所得控除されるため、年間の所得税・住民税の負担を軽減できる
・運用で得た利益が非課税(通常は約20%の税金がかかる)
・年金を受取る際も一定の控除あり
税金面の優遇ポイント ・運用で得た利益が非課税
(通常は約20%の税金がかかる)

      1)2)を参考に作表


投資をする場合、iDeCoは投資信託、つみたてNISAなら投資信託かETF(上場投資信託)という商品を制度内で運用することになります。ただしETFは取扱商品数が少ないため、初心者の方には仕組みを理解しやすく選択肢も多い「投資信託」をおすすめします。

 

「そもそも投資信託って何?」投資信託とETF


投資信託とは、プロ(運用会社)に資産運用を任せる金融商品。

プロは投資家から集めた資金を元に株式や債券、不動産などの金融資産を使って運用し、運用で得た利益を投資家に還元します。この、プロに資金の運用をお任せする商品、つまり“投資の幕の内弁当“のような存在が投資信託とETFです。

ユニクロやソフトバンクなど、大企業の株式へ投資するには数十万円~数百万円の資金が必要です。しかし投資信託やETFといった幕の内弁当を利用すれば、個人でも間接的に大企業へ投資できるようになります。

投資信託であれば、日々の運用そのものはプロにお任せできます。
そのため「株式チャートをゆっくり見る時間なんてない」という看護師さんでも無理なく投資を始められるのではないでしょうか。

 

年齢や働き方でおすすめが異なるiDeCoとつみたてNISA

iDeCoとつみたてNISA、看護師さんに向いているのはどっちでしょう?
結論から言うと、各制度に向いているのは以下のような特性を持った看護師さんです。

・iDeCoが向いている:「独身で正職員」「40代~50代」「年収が高く500万円以上」という人
・つみたてNISAが向いている:「就職したて」「20代~30代」「扶養内で働いている」という人

ただし、iDeCoの場合は加入できる人が限定されているため、まずは加入資格を確認しておかなければなりません。iDeCoの加入資格から順に説明していきましょう。

 

まずは確認、iDeCoの加入資格


iDeCoは加入できる人が限定されています。
特に、以下にあてはまる人は加入が難しいでしょう。

・農業者年金の被保険者
・国民年金の保険料納付を免除(一部免除を含む)されている人
※障害基礎年金の受給者等、ただし対象外の人もいる
・勤務先の会社で「企業型確定拠出年金」制度が導入されており、規約によって個人型と企業型の同時加入が認められていない人
※2022年10月以降は制度改正により同時加入できるようになる
※詳しくはこちらの公式ページでご確認ください

特に多いのが、現在「企業型確定拠出年金(企業型DC、401kとも言われる)」に加入している人でしょう。
iDeCo公式サイトによると、企業型確定拠出年金の加入者は約750万人。看護師さんの中でも、勤務先の退職金は企業型確定拠出年金という人は多いのではないでしょうか。

現在企業型に加入している人は、規約で認められない限りiDeCoへの加入はできません。
ただし法改正により、2022年10月以降は企業型とiDeCoの併用ができるようになります。勤務先のものとは別に加入希望の方は、制度が変わるまで待つのも一つの方法です。

 

なぜiDeCoが向いているのか?

  

iDeCoが向いているのは、独身で長く正職員として働いている人や、40代~50代で比較的年収が高い看護師さんです。

なぜならiDeCoのメリットは「節税効果の大きさ」。デメリットは「60歳まで引き出せない」点にあるからです。つまりiDeCoは強制的に老後資金を貯めるには適していますが、資金の自由度は低い制度。だからこそ節税目的で投資したい人や、老後資金の準備を始めたい人に向いています。

勤続年数が長い正職員の看護師さんは高年収の方が多く、毎月給与から引かれている税金もそれなりにあるのではないでしょうか。iDeCoであれば運用に回した掛金の全額を所得控除できるため、毎月給与から引かれている所得税や住民税の負担を減らせます。また40代・50代で子育てが一段落した看護師さんは、老後資金に向けて準備する良いタイミングです。iDeCoであれば節税しながら強制的に老後資金を積み立てられるため、「そろそろ老後資金を本気で貯めたい」人に向いています。

 

なぜつみたてNISAが向いているのか?


つみたてNISAが向いているのは、まだライフプランが定まっていない20代・30代の看護師さんです。

なぜならつみたてNISAは「いつでも資金の引き出しができる」自由度が高い制度だから。iDeCoのように60歳までの引き出し制限がないため、資金に色を付けず自由な資産形成が可能です。つみたてNISAはiDeCoに比べると節税効果は限定的ですが、「節税よりもとにかく資産形成を始めたい」人には使いやすい制度ではないでしょうか。

・結婚や出産の予定が決まっておらず、今後のライフプランが定まっていない人
・配偶者の扶養内で働いているため、節税効果は期待していない人
・「老後資金」や「教育資金」といった大きな目標があるわけではなく、気軽に投資を始めてみたい人
このような看護師さんには、使い勝手のよいつみたてNISAをおすすめします。

 

iDeCoとつみたてNISAの始め方

向いている制度がわかったら、いよいよ各制度の口座を開設して投資を始めましょう。

各制度の口座開設にあたり必要なのは、「どの金融機関で始めるか」を決めることです。
ここでは、金融機関選びのポイントを以下にまとめました。

どの金融機関でも加入時手数料2829円、国民年金基金連合会と信託銀行に支払う手数料が毎月171円かかる。この他に金融機関によっては別途口座管理手数料が発生することがあるため、極力手数料がない金融機関を選ぼう。また、運用商品の豊富さもチェックポイントになる。

<つみたてNISA>

どの金融機関でも手数料は不要。そのため運用商品の豊富さとサイトの使いやすさで選ぼう。普段使っている銀行口座と連携しやすい、画面が見やすく使いやすい、ポイントが貯まる、少ない投資金額から始められるなど、自分にとって使いやすそうなポイントを見て比較しよう。

 

貯金や保険と投資のバランス、迷ったら相談を

iDeCoとつみたてNISAはそれぞれ制度の仕組みやメリット・デメリットが異なるため、利用する人の状況にあわせて適した制度を選ぶことが大切です。

看護師さんは年齢が上がるほど収入が増える傾向にあるため、収入に比例して増える税金を抑えたい人はiDeCoがおすすめです。特に40代・50代は老後資金の準備が気になる年代なので、強制力のあるiDeCoで老後の準備を始めてみるのもよいでしょう。

一方、まだ就職したてで将来のライフプランも定まっていない20代・30代だと、老後資金といわれてもぴんとこないかもしれません。「とりあえず何かしら積み立てを始めたい」という人も多いでしょう。そんな人には、途中で投資をストップできるつみたてNISAで気軽に投資を始めてみることをおすすめします。

iDeCoでもつみたてNISAでも、投資を始めるときに気になるのが貯金やライフプランとのバランスです。毎月の投資額はどうしようか、保険や貯金は別でいくら必要かなど、お金に関する疑問は専門家であるFP(ファイナンシャル・プランナー)へ相談してみてください。

FPは人生に関わるお金全般の専門家です。iDeCoやつみたてNISAを使った資産形成、貯金や保険とのバランスもふまえて相談できるため、この機会にさまざまなお金の不安を相談してみてはいかがでしょうか。


 

 

出 典

1)iDeCoの出典:iDeCo公式サイトより「iDeCoの特徴」(国民年金基金連合会)
https://www.ideco-koushiki.jp/guide/(2021年11月30日閲覧)
2)つみたてNISAの出典:NISA特設ウェブサイトより「つみたてNISAの概要」(金融庁)
https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/about/tsumitate/overview/index.html(2021年11月30日閲覧)

 

 

この記事を書いたのは

服部 椿
金融代理店での勤務経験と自身の投資経験を活かしたマネーコラムを多数執筆中。
子育て中のママFPでもあり、子育て世帯向けの資産形成、ライフプラン記事の執筆が得意。
保有資格:2級ファイナンシャル・プランニング技能士



記事監修:株式会社ファーストプレイス



イラスト:tetekun
Twitter:https://twitter.com/tete_ponyo



バナー素材:イラストAC



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