医療・看護の業界では、以前の知り合いに再会したり、同業者間での情報交換が役に立ったりすることがあります。そのため、周りに悪印象を与えないよう円満に退職するのが無難だといえます。
また、退職する時に必要な手続きは様々です。この記事では、退職の流れとそれをスムーズに進めるためのポイントについて解説します。
退職を希望する日の2ケ月前までに意思表示
いつまでに退職の意思表示をすべきかについては、勤務している施設の就業規則に示されていることが多いので確認しましょう。一般的には、退職を希望する日の2ケ月前までには意思表示するのがマナーだとされています。
退職の意思は、まず直属の上司に伝えます。直属の上司を飛び越えてさらに上の職位の人に報告したり、先に同僚に打ち明けたりするのはマナー違反です。また退職の理由は、たとえ事実であっても現在の職場への不満を述べることはせず、個人的な事情ということにしましょう。
このとき、引き止められる可能性もあります。退職の意思が固いのであれば、ひたすら申し訳ないという態度を貫きましょう。
退職日について相談・調整
退職日は一方的に決めるのではなく、上司と話し合ってお互いが納得できる日にしましょう。その際には、繁忙期を避ける・仕事の引継ぎが十分に行えるスケジュールにするなどの配慮が必要です。
また、有給休暇の消化をどうするかについても意見をすり合わせておきます。そして、退職することをいつどのようにスタッフに伝えるかについては、上司の意向に従いましょう。
退職届の提出
退職日が決定したら、退職届を提出します。既定の書式がある場合が多いので、上司や事務部門に問い合わせましょう。退職届には、“一身上の都合”以上に詳しい理由を記載する必要はありません。退職届が受理されると、撤回することができない場合がほとんどです。
仕事の引継ぎ
自分が退職した後にも業務が滞ることがないように、必要な引継ぎを行います。口頭でも書面でも構いませんが、とにかく“残った人たちが困らない”ようにしておくことが円満な退職のポイントです。当然ですが、退職日までは自分の業務責任をしっかりと果たしましょう。
必要な手続きや書類について確認
退職にあたっては、様々な手続きが必要です。事務部門で説明やチェックリストをくれることが多いので、尋ねてみましょう。説明が十分でない場合には、のちほど紹介する「貸与されていた備品を返却し必要な書類を受け取る」が間違いなく行われるように自己管理しなくてはなりません。
挨拶回り
在職中にお世話になった人達に、感謝の気持ちを伝えましょう。患者さんにしっかりと挨拶をすることも大切です。退職の理由や転職先について、説明する必要はありません。
医療・看護の業界では、いつか誰かと再会することが少なくありません。別れ際を好印象にしておくことが、この先の働きやすさにつながる可能性があるのです。
貸与されていた備品を返却し必要な書類を受け取る
退職日には、貸与されていたものを返却し、その後の手続きに必要な書類を受け取ります。やりとりする主な物品・書類は以下のようになります。
1.施設に返却するもの
・社員証やIDカードなどの身分証明書
・健康保険被保険者証(扶養家族分も)
・ユニフォーム・ナースシューズ
・ロッカーの鍵
・通勤定期券
・施設の経費で購入した書籍や備品
・業務にかかわる書類・データ
2.施設から受け取るもの(後日郵送のものもあり)
・雇用保険被保険者証(施設に預けている場合)
・年金手帳(施設に預けている場合)
・源泉徴収票
・健康保険資格喪失証明書
・離職票(転職が決まっている場合には不要)
・退職証明書(転職が決まっている場合には不要)
すぐに再就職しない場合には公的な手続きを行う
退職日の翌日が転職先の入職日であれば、必要な公的手続きは新しい施設が行ってくれます。ですが1日でもブランクがある場合には、年金と健康保険の切り替え手続きを自分で行わなければなりません。
1.年金の切り替え手続き
「国民年金に加入する」か「家族の社会保険の扶養に入る」のどちらかを選択します。
国民年金に加入する場合には、退職日から14日以内に居住する地域の役所へ出向いて手続きを行います。家族の社会保険の扶養に入る場合には、退職後できるだけ早く家族の勤務先に必要書類を提出します。
2.健康保険の切り替え手続き
「これまでの健康保険を任意継続する」、「国民健康保険に加入する」、「家族の社会保険の扶養に入る」のどれかを選択します。
これまでの健康保険を任意継続する場合には、退職日から20日以内に退職した施設で手続きを行います。国民健康保険に加入する場合には、退職日から14日以内に居住する地域の役所へ出向いて手続きを行います。家族の社会保険の扶養に入る場合には、退職後できるだけ早く家族の勤務先に必要書類を提出します。
その他の手続き
失業保険(雇用保険の基本手当)を受給する場合には、離職票が手元に届き次第、居住する地域を管轄するハローワークに出向いて手続きを行います。また、12月31日の時点で年末調整を行ってくれる施設に雇用されていない場合には、自分で確定申告を行う必要があります。
退職の流れをスムーズにするためには、手続きを計画的に!
退職する際には様々な手続きが必要で、その中には期限を守らなければならないものもあります。また「立つ鳥跡を濁さず」のためには、細やかな引継ぎなど少々手間のかかる作業をしなくてはならない場合もあります。円満に退職するためには、事前に退職の流れを把握しておき、計画的に動くことが大切だといえるでしょう。