コラム
  • 公開日: 2019/3/20

【連載】ナースの転職知恵袋

【看護師のリアル転職体験談 57】総合病院の救急看護師から一般病院の整形外科看護師へ

1.医療事故を起こしてからでは遅い

転職は過去にも何度か経験があります。給料アップを考えながら、職場を変わってきました。今回の転職をする前には総合病院の救急外来で勤務をしていました。総合病院というところは、勤務病棟によって忙しさが全く違います。同じ病院に勤めて、給料が同じなのに…と不公平さを感じていました。

救急外来は、忙しいときには優先順位を考えるのが難しく、とても緊張感のある職場です。若いころは集中力も高いですし、チャレンジ精神も旺盛でしたから、その緊張感が逆に気持ちよいと感じることもありました。しかし、歳を重ねると、集中力はどうしても低下してきます。記憶力も悪くなっているのを感じます。小さなミスが大事故につながる仕事ですから、精神的にとても疲れるようになってきました。また、自分はもっとできたはずなのに…と、ピーク時の自分の力を出せない自分にふがいなさを感じるようにもなりました。

そんなときに、医療事故のニュースを目にしました。他人事には感じられませんでした。看護師でありながら故意に患者さんを傷つけるようなとんでもない人は裁かれて当然ですが、多忙な勤務にあたる看護師の些細なミスはどうでしょう?何も配慮はされないのか…疑問に思うようになりました。

人間ですから間違いを犯すことはあります。本来なら、その点を考慮して、どのようにして事故を防ぐかを考えることは組織に課せられた義務だと思います。事故を個人の責任にだけ押し付けるのは、あまりにも看護師の荷が重すぎると感じるようになりました。医療事故について考え出すと、とても怖くなってきたのです。

給料はさほど変わらずに、よりリラックスして仕事ができるのであれば、転職するのがベストだという結論に達しました。現在、一般病院の内科と整形外科が混同の病棟で勤務にあたっています。自分の能力に適したところでもあり満足です。

2.前の医院を退職してから、新しい医院に転職するまでの流れ

STEP1:異動を願い出る

医療事故が怖いとはさすがに言えないので、適当な理由を考えて異動の希望を申し出ました。あいにく、異動時期にそれがかなうことはありませんでした。

自分は男ということもあり、比較的に力の必要とされる救急外来で重宝されているのはわかります。夜間に酔っ払いと対応する機会も決して少なくありません。女性看護師だけでは大変なのもよくわかります。しかし、自分自身のことを考える時期にあると判断して、転職を決意しました。

STEP2:転職先を探す

勤務が忙しいこともあり、転職エージェントを利用しました。私自身に代わって求人情報を集めてくれるのでとても便利です。できるだけ給与額は下げたくないので、そのことを伝えました。それから、忘れてはいけないポイントとして、救急外来には絶対に勤務したくないということをお願いしました。

STEP3:絞り込んで見学

いくつかの病院を紹介するとの連絡を受けました。最終的に精神科の専門病院と現在働いている病院とで迷ったのですが、より通勤時間が短い方で選びました。両方ともに見学をしたのですが、中のことまでは詳しくはわかりません。最後は自分の勘に頼るしかありませんでした。

STEP4:面接

自分の勘で選んだ1つの病院と面接を行いました。そのまま採用していただけることになりました。

STEP5:退職の意思を伝える

働いていた職場に退職する旨を伝えました。すでに転職先も決まっていたので、そのことを正直に話すと、病院側としては了承せざるを得ないものです。異動願いがかなわなかったことについては話をしていません。上司も忘れているようでした。もし、異動を認めるから…という話に発展しても困ると思ったからです。もうすでに気持ちは新しい病院に向いていました。

3.転職してみて感じたこと

自分のさまざまな能力が落ちていると感じて、改めて自分と仕事を見つめなおすことができました。これまでは、給料をあげたり、キャリアアップしたりすることを目的に転職をしてきました。家族を養い、自分自身のために、そうすることが一番だと信じて疑わなかったのです。

今回の転職で、給料は少し下がりましたが、心から楽しく仕事ができるようになりました。ときにはステップバックしてみて、自分自身についてじっくりと考え、省みることも大切だと感じました。前に進み続けることだけが人生に必要なことではないのかもしれません。

職場を移って、本来の看護師の仕事を思い出したような気持ちでもいます。「初心忘るべからず」といいますが、初心に戻ったようなすがすがしい気持ちです。看護師を目指したころの気持ちを思い出しました。気持ちに余裕をもって仕事をすることが、患者さんにも、自分の家族にも還元でき、そして自分自身にも得るものが大きいことに気がつきました。

4.転職してみて「良かったこと・悪かったこと」まとめ

◎良かったこと(1):余裕をもって仕事ができるようになった

看護師は常に緊張感をもって仕事にあたらなくてはなりません。患者さんに対して行うケアは常に医療事故と隣り合わせです。けれど、転職先では人工呼吸器につながれている患者さんはほとんどいませんし、ルートがいくつも入っている人もいません。
単純に、大きなミスをしてしまう危険性がぐんと減り、余裕ができました。業務にあたるときに、時間的な余裕もあるので、適度にリラックスして仕事ができていることも大きいと思います。

◎良かったこと(2):患者さんときちんと向き合えるようになった

仕事に余裕があるということで、患者さんとしっかり向き合えるようになりました。本来、看護師を目指したときに自分がしたかったことです。新人のときは仕事を覚えることに必死ですし、それから夢中で走り続けることで、自分を見失っていたのかもしれません。自分自身と仕事の楽しさを取り戻すことができました。

△悪かったこと(1):給料が少なくなった

給料が少なくなったことは、家族を養う身としては申し訳ない気持ちになってしまいます。幸い、妻は私の気持ちを理解してくれ、上手にやりくりをしてくれています。感謝の気持ちでいっぱいです。

△悪かったこと(2):キャリアアップに不安

規模の小さい病院に転職をしたので、次に転職をするときやキャリアアップを考えたときに、不利になるのではないかと不安です。今は、仕事内容に満足していますが、異動になったり、上司が変わったりしたときのことを考えると、安心はできません。

5.自分の能力に合った職場で働くことが大事

看護師の仕事は一生できる仕事ですが、体力や精神力、集中力が必要な仕事でもあります。年齢があがって、それらが少しずつ落ちてきていることを感じたことが、今回の転職のきっかけです。緊張感の高い職場でそのまま仕事を続けて医療事故を起こすことが怖くなってきたのです。

緊張感がより少なめの職場に転職をしてみると、患者さんと向き合う時間が増えました。本来の自分を取り戻した気にもなりました。しかし、病院の規模は小さくなり、給料は下がってしまいました。自分を満足させつつ、家族を養うだけの給料を得るというのは簡単ではないとしみじみ感じました。

今はそれなりに満足していますが、この状況がいつまでも続くという保証はありません。急に状況が変わっても対応できるように、また、より良い環境の職場があればいつでも転職ができるように、常に求人情報には目を向けるようにしています。

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