• 公開日: 2020/3/30
  • 更新日: 2020/5/1

復帰VS転職、どっちがいい?育児と仕事を両立させるには

働き方改革が進められ、家庭と仕事の両立支援も注目されていますが、まだまだ男性の家児・育児への参加率も低く*1、両立に悩む女性も多くいらっしゃいます。第一子出産を機に離職する女性の割合は約半数という調査もあります。筆者の周りの看護師も仕事がハードなため、今の職場で仕事を続けるか、退職をして落ち着いてから別の医療機関で復職するか悩む人も多くいました。どのような働き方を選択していけばいいのか、お金だけではなく、様々な視点から見ていきましょう。

 

復帰VS転職、どっちがいい?

復帰と転職のメリットデメリットをまとめてみました。

復職:育休を取って元の職場に復帰する場合

メリット

  • 育児休業給付金がもらえる
  • 社会保険料が免除される
  • (ここまで働いてきているので)働き方の幅がある
  • (ここまで働いてきているので)勤務希望が出しやすい
  • 有給が多い(リセットされない)
  • 次の妊娠・出産時に様々な保証がある
  • デメリット

  • 元の部署には戻れない可能性がある
  • 即戦力と考えられ勤務がハードになる可能性がある(夜勤・リーダー・新人指導など)
  • 転職:出産を機に一度退職し、転職する場合

    メリット

  • 退職金がもらえる
  • (一度退職するので)子どもとの時間をゆっくり取れる
  • 失業給付金がもらえる(3年間まで延長可能)
  • 次の職場を一から選択できる

    デメリット

  • 子育てと就活を平行しなければならない
  • 保育園に入りにくい場合がある
  • 入職後に覚えることが多い
  • 有給が少なくなる
  • 両立支援制度が利用できない
  • 離職中の経済的負担が大きい
  • 復帰の方がメリットが大きい?

    筆者は「育休取得後の復帰」と、「出産退職後に転職し別の医療機関での復職」の両方を経験していますが、結論から言ってしまうと、同じ職場に復職したほうが受けられる手当も多く、人間関係や覚えなければならない仕事量も違うため働きやすかったと感じました。

    育休取得後の復帰では、働けない期間中の給付金や、社会保険料免除制度があり、経済的な負担を軽減してくれます。また、正職員のままでも時間短縮勤務や残業免除、深夜業務の免除などの制度を利用できるので、長期スパンで見た時、退職金やキャリア継続などのメリットもあります。

    そして筆者がもっとも痛感したのは、子どもの病気で仕事を休むことの大変さです。感染症シーズンは子どもの体調不良で思った通りに働けないこともあります。特に兄弟育児では、タイミングがずれて発症するという事がよくあるため、休む期間が長くなるケースもあります。そんな中、転職により人間関係も構築できていないと、非常に気を使ってしまいます。しかも転職すると最初にもらえる有給は少ないため、休むたびにお給料が減り、正社員でもお給料が10万円という月もありました。

    転職のデメリット…育児中の就職活動は難航するケースも

    地域によっては保育施設の空きがなく、退職してしまうと就職活動が難航する場合もあるので注意が必要です。子どもの預け先が決まっていないと、内定をもらいにくい場合があります。一方で保育施設の方も、ひとり親家庭や共働きで就業時間が長い家庭が優先されるなど、求職活動中は入りにくくなってしまうケース*2もあります。

     

    もらえるお金にも違いがある

    出産育児一時金

    【復職〇】【退職/扶養内〇】【退職/扶養外〇】
    出産費用の負担軽減のため、子ども1人あたり42万円(参加医療保障制度に加入していない医療機関での出産の場合は40.4万円)を健康保険から支給される*3

    出産手当金

    【復職〇】【退職/扶養内×】【退職/扶養外〇】
    産前6週~産後8週の産休期間中、健康保険組合からお給料の2/3相当額の手当金を受給できる*4

    育児休業給付金

    【復職〇】【退職/扶養内×】【退職/扶養外×】
    育児のため休職した後も、以前の職場で働く場合、雇用保険から給付金を受けることが出来る。産休後~6か月はお給料の2/3相当額、その後は1/2相当額*5

    退職金

    【復職×】【退職/扶養内〇】【退職/扶養外〇】
    退職後、働いた年数に応じて既定の金額の退職金が支給される

    失業等給付

    【復職×】【退職/扶養内〇】【退職/扶養外〇】
    求職活動中、雇用保険から基本手当などの給付金を受給できる。勤続年数などによって支給額や受給期間は変わる*6

    社会保険料免除

    【復職〇】【退職/扶養内〇】【退職/扶養外△】
    産休・育休中の健康保険料と厚生年金保険料の負担が免除される。退職後、国民年金保険料に関しては出産前後の4か月間のみ保険料の負担が免除となる*7

    退職の場合でも実は健康保険の任意継続や、産休期間中の退職などの条件をクリアすることで、出産手当金を受給することが可能*8となります。ただし、任意継続にしたことによる保険料の負担額の方が出産手当金よりも大きくなってしまう場合があるので、夫の扶養に入った場合や休職期間の予定などからシュミレーションしてみるといいでしょう。

    図2では出産前の月収が30万円だった場合の育休後復帰と、出産退職後に復職したケースでもらえるお金をシュミレーションしてみました。どちらも産後1年での復帰を仮定しています。出産のタイミングによって、1年間の収入が変わるため、夫の扶養に入れるかどうかも変わってきます。年収130万円に満たなければ扶養に入ることができ、社会保険料の負担もなくなります。*9しかし出産手当金は受給できなくなるため、もらえる総額はより少なくなってしまいます。

    図2:復帰・転職した際に関係するお金*10

    モデルケース:看護師(20代後半)
  • 勤続5年
  • 月収30万(手取り24万)
  • 退職金100満
  • 出産後1年で復職予定
  • 育休後復職→350万円
    出産育児一時金 42万円
    出産手当金   約66万円
    育児休業給付金 約185万円
    社会保険料免除 約57万円

    出産退職後・夫の扶養内→196万円
    出産育児一時金 42万円
    退職金     約100万円
    基本手当    約54万円

    出産退職後・夫の扶養外→206万円
    出産育児一時金 42万円
    出産手当金   約66万円
    退職金     約100万円
    基本手当    約54万円
    払:社会保険料 ̠▲約56万円

     

    まとめ

    育児と仕事の両立を考えると、お金だけではなく、人間関係や就職活動においても、出産前の職場に復帰する方がメリットは多くあります。まずは退職せずに、同じ病院で両立できる方法がないか、そういった視点で考えてみるとよいでしょう。また、退職を選ぶ場合は保育園事情なども早めに調べておくといいでしょう。

     

    参考文献

    *1 内閣府“夫の協力 6歳未満の子供を持つ夫の家事・育児関連時間(1日当たり・国際比較)”(参照2020-1-31)
    *2 東京都北区“保育園の入園準備 保育の利用基準表”(参照2020-1-31)
    *3 全国健康保険協会“子どもが生まれた時”(参照2020-1-31)
    *4 全国健康保険協会“出産で会社を休んだ時”(参照2020-1-31)
    *5 ハローワークインターネットサービス“雇用継続給付 育児休業給付”(参照2020-1-31)
    *6 ハローワークインターネットサービス“基本手当について”(参照2020-1-31)
    *7 日本年金機構“国民年金保険料の産前産後機関の免除制度”(参照2020-1-31)
    *8 全国健康保険協会“資格喪失後の出産手当金”(参照2020-1-31)
    *8 全国健康保険協会“資格喪失後の保険給付”(参照2020-1-31)
    *9 全国健康保険協会“被扶養者とは”(参照2020-1-31)
    *10 全国健康保険協会“平成31年4月分(5月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表”(参照2020-1-31)
    *10 日本年金機構“国民年金保険料”(参照2020-1-31)

    この記事を書いたのは

    看護師FP:高梨子あやの 看護師・2級FP技能士/日本FP協会認定AFP。HaMaLifeを立ち上げ、看護師やママのQOLアップのために、「無駄なお金を生きたお金にかえていくお金の整理」や「看護師+αの働き方」など発信中。

    イラスト・まえかわしお

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